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最期の英雄
呑み込み呑まれる力
しおりを挟むユーデリアの手により氷付けにされていたガニムは、ユーデリアの手により復活した。その戦闘力が厄介なのはもちろんだが、一番厄介なのはその巨体だ。見上げるほどにでかい。もちろん、でかいイコール強いというわけではないが……
ガニムは、強い。さらに、ケンヤも外傷は血だらけなのにまだ平気そうに見える。この二人を相手にするのは、骨が折れるが……やるしかない。
「しかし、なんですかこの天気……それに、あの『英雄』の姿は」
「ま、いろいろあったんだよ」
ガニムは、氷付けになっていた間のことは知らないのか……水の精霊が現れ、ここで死に、天候が狂いだし、私の体が呪術に蝕まれて……
それをいちいち説明してやる義理はないし、ケンヤも説明は後回しにするつもりのようだ。まずは、この状況をどう崩していくか……この呪術の力なら、自分でも気づいていないことがやれそうだ。
たとえば先ほど、水の精霊に対しても予想以上の力を発揮したし……予想以上の力、か。私はこの力の使い方を知らないはずなのに、まるでそうしろと誰かに言われているようだった。ユーデリアの手足を切り落としたときのように。
「……」
なんとなく、黒く染まった手をガニムへと向ける。手のひらを開き、以前ならば魔力を集中して弾を放っていたであろう仕草。しかし、今の私には魔力を使えないので、それと同じことはできない。だからこの仕草は、別のことだ。
黒く染まった手のひら……その先にいるガニム。警戒はしているが、なにが起こるかわかっていないようだ……が、変化はすぐに表れる。
「っ!?」
ガニムの体が、動く。それは本人の意識とは、別の力によるものだ。巨体はゆっくりと、動き……私のいるところへと、向かってくる。本人は踏ん張っているが、それでも動きは止まらない。
動きを止められない現象の正体は、私のこの黒く染まった手がガニムを吸い寄せているからだ。実体を吸い寄せる力……とでもいうのだろうか。あの巨体が、踏ん張っても逃れられないほどの力。
吸引の力は、ガニムを捉え、逃がさない。掃除機がゴミを吸っていくように、対象のものを吸い寄せる。なにが起こっているかわからないガニムは、その場に踏ん張るので精一杯。だから……
「はぁ!」
「っ!?」
がら空きのボディに、拳を打ち込む。メキメキ……と拳がめり込んでいき、巨体であろうと充分なダメージを与えていることがわかる。
先ほどのケンヤのように吹き飛びはしないが……代わりに、ガニムの腕を黒く染まった手で掴み、逃げられないようにしてからもう一発。さらにもう一発。
「う、ぐっ……」
殴っていたガニムの体が吹っ飛んでいく……腕を掴んでいるのにどうしてだろう。見ると、掴んでいたガニムの腕は消えていた。ユーデリアの手足がなくなったのと、同じように。
だから私は……吹っ飛んでいくガニムに向けて突っ込み、黒く染まった手でガニムの腹部をぶん殴る。
「ぐぁ、あっ!?」
殴られた部位、ガニムの腹部が……消滅していた。それだけではない。消滅した部位から、他の部位までもが消えていく。
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