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最期の英雄
じゃあね
しおりを挟む半人半獣……というべき状態になっているユーデリアは、ほとんど理性を失っているように見える。だから、その姿は中途半端だし、動きは単調だ。
体がすべて消滅するまで、一刻の猶予もない。それが、ユーデリアの理性を吹っ飛ばしたのだろう。しかし、それがいいか悪いか……どちらとも言えないが、この場においては間違いなく悪い。
私を止めたいなら、もっと理性的に行動するべきだ。理性を失って、確かに凶暴性は増しただろうが、その分行動が単調になり、読みやすい。私にとっては、今の状態の方がよっぽどやりやすい。
「グルルルァ!」
転んだ状態から、再び私に突撃してくる。しかし、やはり動きは直線的……避けるのは容易い。その間に、ユーデリアの体に触れるのも。
首からの消滅に加え、箇所が追加される。それは体を蝕んでいき、まるで虫食いのように体が消えていく。
「もう……もう、やめて……」
あこの、消え入りそうな声が届く。私に人殺しをしてほしくないというあこは、今の私を見てなにを思っているだろう。
ごめんね、でも……この現象は、私も止め方を知らないんだ。知ってても、止めるつもりはないけど。
もう、ユーデリアは立っていられない。それは、体と足とを繋ぐ部分……四足歩行の場合なんて言うんだろう……まあともかくそこが、ついに消滅した。だから、体を支えるための部位がなくなったのだ。
ユーデリアの目は、私を見て逃さない。それは憎い者を見る目だ……こんな目に合わせた私を、そう思うのは仕方ない。でも、最初に私を見限ったのは、そっちだ。
「……もう、終わりにしないとね」
これまで、ずっと一緒に旅をしてきた。こっちの世界に戻ってきてから、ふとしたことがきっかけで奴隷として売られそうになる前のユーデリアを助け、彼の復讐を汲み取り行動を共にした。
マルゴニア王国で、故郷の、仲間の、家族の仇を討った彼は、その後私に付き合って旅をしてきた。勝手に着いてきただけ、といえばそれまでの関係だけど……実は、少しだけ救われていた。
きっとずっと一人だったら、もっと早くに壊れていただろう。誰かが側にいてくれることが、救いになっていたんだ。そんなの、本人には言わないし、それどころか私もそんな風に考えてなんていなかった。
だからそんな風に考えられたことが不思議だったし、それが違うとも言えないものだった。ユーデリアがいて、私は少しばかりは救われていた。
「……」
だからこそ、最期くらいは……苦しませずに、逝かせてやろう。もう充分、ユーデリアは苦しんだだろう。
故郷を滅ぼされ、家族や仲間を失って、自身もひどい目にあわされて……私よりも子供で、絶望の世界に放り込まれたんだ。
もう充分、苦しんださ。だから……
「もう、お別れだ」
「ガルルルァ!」
冷気の角を額から伸ばし、突進してくるユーデリア。まるで、最後の力を振り絞ってと言わんばかりの。それを見て、私は避けることなく……真っ向から、受けて立った。
手を伸ばし、氷の角が手のひらに突き刺さる。しかし、その瞬間から氷の角は消滅していき……さらに手を伸ばすと、ユーデリアの頭を掴む。
「ぁ……」
「じゃあね……私も、近いうちにそっちに逝くから」
「あ、アン……」
最後に、ユーデリアの口から私の名前が呟かれる。その、次の瞬間……ユーデリアの顔は、体は、すべては……まるでそこに初めからなにもなかったかのように、消滅した。
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