異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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最期の英雄

最後の死

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 腕が、消滅していく。これはケンヤの腕が消滅したときのそれと、同じだ。始まったのは、ケンヤの死の体験……私が、ケンヤにやったこと。それが自分の身に、跳ね返ってくる。

 ついさっき、ガニムの受けた消滅の力を体験したばかりなのだ……その消滅の力は、想像を絶するほどにキツい。それを、また体験させられる……それだけで、身の毛もよだつ。

 だけど、この死の体験から逃れることはできない。腕が消滅していき、けれどそれを見ていることしかできず……


『ぅ、わ……!』


 先ほども味わった感覚、それが再び胸の中に芽生える。嫌だと思っても、それから逃れることはできず、腕から体へ、そして全身へと消滅は及んでいく。

 体が、自分の体がなくなっていく光景。それでいて、不思議と痛みはない……痛みがないから、余計に恐怖に煽られる。人間ってのは、痛みがあるから危機を感じることができるし、痛みがストッパーとなってそれ以上の傷を広げないようにする。

 だけど、痛みがなければ自分で気づかないうちに、傷はどんどん悪化して……思っていた以上に、傷が広がってしまう可能性だってある。

 痛みがなく、けれど確かに自分の体が消滅していっている……それは、どうしようもなく恐怖が大きくなり、自分がなくなっていくその感覚に、再び頭の中が真っ白になっていき……


『ぁ……』


 意識が……途切れた。


----------


『ん……』


 目を覚ますと、そこは白い空間だった。視線を動かしてみても、そこにあるのは……白。なんだろう、ここ……目を覚ましたらそこは、見知らぬ天井がって文はわりとよく見るけど、ここにら天井と呼べるものがない。

 周囲を見回して、そこに人影を見つける。その人物は私を見て笑みを浮かべている……それは、純粋なような、それとも含みを持たせたような、そんな笑顔だった。不気味とまではいかないけど、なんだか妙な感じで……


『おはよう、アンズ』

『……エリシア?』


 自然と、口をついて出ていた。彼女の名前は、エリシア……そうだ、ここは私の頭の中。そして、ついさっきまで私が殺した人たちの死の体験を受けていて……消滅の力に呑まれて、気を失っていた。


『うっ……』


 頭が痛い、気がする。実際に頭が痛いかどうか、それよりも、その感覚があるの方が表現が正しい。あれ、頭の中の空間にいる私の頭の中って、いったいどういう……

ダメだ、混乱してきた。二度目の……消滅の力に呑まれて、こんがらがってる。自分が自分でないような……二度目、だよね?

 自分がなくなっていく……けれど、今私の体はここにこうして存在している。それが安心するべきなのか、それともひどく動揺するべきなのか……わからない。でも……


『おめでとう、って言っていいのかわからないけど。とりあえずおめでとう。後、一回だよ』


 ……あと一回、同じ思いをしなければならない。

 ガニム、ケンヤ……最後は、ユーデリアだ。これで終わる、この死の連鎖から解放される……それは喜ばしいことなのに、終わりの時が近づく度、頭に浮かぶ疑問があった。

 この死の連鎖を終えたら、私はどうなってしまうのか。

 死んだ人間がどうなるのかといった疑問であれば、その先の答えは実際に体験した者にしかわからない。けれど、これは単なる死とは違う……ユーデリアたちのように、消滅させられたのでもない。

 あと一回、それはある意味救いだ。永遠と死の体験をさせられる、その最悪の結末に比べたら。でもすべての死を体験し、それが終わった後……私は、いったい……


『ほら、始まったよ』

『!?』


 エリシアの言葉に反応し、自然と首元に手を伸ばす。ユーデリアの時は、首を掴んで消滅させたからだ。触れない。首から、消滅の力が全身に侵食していく。


『最後の死……せいぜい、くるしみなよ』
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