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しおりを挟むほどよい酔い加減で家に帰ると、リビングのテーブルの上に私宛の郵便物が置いてある。
ああ。と思う。
封筒を見ただけで中身が分かる。住民税の納付書だ。
来月は前の職場の同僚の結婚式もあるっていうのに。頭が痛い。
前の会社を辞めてから、二か月とちょっと。
私にとっては、二度目の転職だ。
5年前、正社員で働いていた会社を辞めて、なんとなく派遣社員として働き始め、その派遣先の業績の悪化で時給の引き下げか退職かの選択を迫られたのを期に退職し、今に至る。
そこそこ真面目に働いてたのに、やっぱ、派遣は派遣だ。
退職します、と伝えて簡単に受理された時には、やっぱりそこそこ傷ついた。
あくまで、そこそこ、だけど。
この先、どうしよう。
正社員を目指すべきか、それとも派遣で一刻も早く働くべきか。
ぼんやりと考えながら、だらだら生きている間にも、なけなしの貯金は少しずつ減って行く。
もうすぐ雇用保険の失業給付金が貰えるはずだけど、金額は多くない。
とりあえず、単発バイトで少しは稼がないと。
ソファにゴロリと転がって、スマホを撫でる。
facebookをのぞくと、山野さんからの友達申請が来ていて、承認する。
山野さんのタイムラインをのぞくと、料理の写真が並んでいる。
家族との幸せな日常と、それを慈しむ言葉と、温かな食卓の写真。
見てはいけないものを見てしまった気になって自分のページに戻る
それでも、きれいに並べられた手の込んだ料理の写真が頭から離れない。
彼女は今、幸せなんだろう。
トロい子だった。
大学卒業後、もし一般事務とかで就職していたとしたら、おそらくイマイチな女子社員だっただろう。
だから、会社員としての自分に、早めに見切りをつけたのかもしれない。
あの子は自分を活かせる場所を見つけ、その場所をより居心地良くしようと、インテリアを考え、美味しい料理を作る。それは今のところ上手くいってるようだ。
良かった良かった。幸せそうで何よりだ。
たいして親しくない梨佳や私にまで見せつけたいほどの幸せを掴めてよかったね。
だけど、そんなの、世間に振り撒かないで、家の中で消化して欲しい。
だいたい、本当に幸せで満ち足りてたら、外へのアピールっている?
この人は、自分の書いた文章や写真を見て、誰かが不快に思うかもしれないって、一度でも想像したことがあるんだろうか。
気持ちの良い酔いが体から逃げて行きそうで、それを留めようと、私はクッションに顔をうずめた。
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