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第一章 四度目の勇者の実力
罠と催眠
しおりを挟む「つまり、ボルケイノドラゴンがこの辺りを飛んでいたのは、魔人族のせいだということか?」
グランが俺が説明したことの確認のためか、そう訊いてきた。
それに対し、俺は頷いて答える。
「それで、洞窟から出ない代わりに、そいつらを追い払うか倒すかしてくれって頼まれたってこと?」
奈菜も確認のためかそう訊いてきたので、グランの時と同じように頷いて答える。
「って言ってもさ、どうやって魔人族を迎え撃つの? どこから来るかもわからないのに」
フーリエが尤もなことを言った。
だが残念、それはもう案を考えてあるんだな、これが。
この洞窟に来るには、ドワーフの国を出てすぐの森を通らないと来れない。
そして、魔王の居るところへ行くには、エルフの国と獣人の国を通ってこなければならないのだが、エルフの国からドワーフの国まではずっと森で、道は一本道。
さらに、この洞窟までの道も一本道だ。
よって、木から木へ跳び移るという離れ業ができる奴と、木と木の間の雑草が生い茂る中を通るという猛者でなければ、この洞窟までの一本道に罠を仕掛けておけば引っ掛かってくれるという訳だ。
一本道を通らず俺が懸念する方法で来るとした場合の対策は、森が途切れた所の地面に、踏んだ瞬間に発動する罠を仕掛けることにしておこう。
というのを四人に伝えると、四人とも頷いて納得した様子だったので、早速取り掛かることにした。
罠は、一本道の方は深さ二メートルの落とし穴、森が途切れた所の地面には足が触れると足が固定されるという罠を仕掛けた。
足が固定される罠の方は、【固定】と言って、どこかに触れながら唱えると誰かがそこに触れただけで固定されてしまうようになる魔法を使っている。
効果は永久的に続くが、くっついた所に向けて【解除】を唱えれば外すことができる。
この魔法は、主に建築時に使われるのだが、今回は罠に使う。
建築済みの家に間違って使った日には……お察しだな。
そして、どちらにも罠を仕掛け終わった俺達は、陽が暮れてきていたため夕飯を食べる。
その後、見張りを順番にやり、見張りの人意外は寝ることにした。
見張りの順番は、俺→グラン→フーリエ→リル→奈菜の順にするかと言うと、奈菜が意義を申し立てた。
「なんで私が一番最後なの?」
「本来なら、初めてだからこそってことで最初にするけど、夜更かしは美容の大敵って言うだろ? 奈菜、肌気にしてたし」
「よくそんなこと覚えてたね」
「そりゃいつも気にしてたから嫌でも覚えてるって。まぁ、だから、異世界に来てまだ間もないんだし、俺達に任せとけばいい。な?」
「う、うん、わかった……ありがとう……」
「え? なんて?」
「なんでもない! 祐人の馬鹿っ!」
そう言ってそっぽを向く奈菜。
なんで今、罵られたんだ?
わかったの後が聞き取れなかったから訊いただけなのに、怒鳴られた上にそっぽを向かれてしまった。
全く理解できないんだけど……。
ふと他の3人を見ると、今のは無いと言いたげにため息をついていた。
ますます理解できなくなったんだけど……。
結局、よくわからないまま見張りをすることになった。
皆が寝静まった頃、物凄く暇になった俺が罠のある方向を座って頭を空っぽにしてしばらく見詰めていると、なぜかリルが起き上がってきて隣に座ってきた。
「どうした? 寝れないのか?」
「ちょっとね……」
俺の質問にハッキリしない答えをするリルに、訊いてみたかったあの事をポツッと言う感じで訊いてみた。
「リルって、奈菜のこと好きなの?」
「えっ!? なっ!? ち、違うよ!」
「必死なところが怪しいなぁ。顔も赤いし」
「だから違うって!」
「じゃあなんで奈菜のエスコートしたりしてたんだ?」
「そ、それは、男として女性をエスコートするのは当然だから……」
少し目を逸らしながらそう言うリル。
逆に怪しい。
「素直に言えよ。内緒にするから」
「す、好きだよ……! でも、告白はしない」
意外と素直。
しかし、告白しないとは?
「は? なんで? リルなら奈菜は付き合ってくれると思うけど……」
「たぶん、ナナさんが好きなのユウト兄ちゃんだよ」
ここで思いがけないことをいってくるリル。
「は? 俺?」
すっとんきょうな声を発しながらそう訊くと、静かに頷くリル。
そんな馬鹿な。
好きだとしたら、なんでツンデレ発言をするんだ。
そうリルに言うと、リルがため息をつき首を横に振った。
「好きだからこそ、ナナさんの性格上そういう言動になるんだと思うよ」
なぜ俺より一緒に居る時間が短いのに、奈菜の性格を理解しているのか。
そんなに観察するほど好きなら告白してしまえばいいのに。
「だとしても、奈菜が俺のことを好きとか無いだろ。幼馴染みで仲が良いのをそういう風に捉えてるだけだ。勘違いだよ、勘違い」
「そうかなぁ」
「絶対そうだ」
若冠納得してなさそうだけど、絶対勘違いだ。
勘違いに決まってる。
あれ? なんか俺、焦ってる?
やっぱ心のどこかで奈菜のことを想ってたりするのか?
いや、気のせいだろう。
うん、気のせいだ、気のせい。
……気のせいだよな?
自分の気持ちを疑っていると、一本道の方から罠に誰かが掛かったのか、うわぁぁぁ!? という叫び声が聴こえた。
「ユウト兄ちゃん」
「あぁ、ちょっと見てくる。リルはグラン達を起こしてくれ」
「うん、わかった。気をつけて」
リルの言葉に頷いてから、一本道の罠の所へ向かった。
◆◇◆◇◆
罠の所へ向かった俺が掘った穴の中を【光球】を使って見てみると、見たことのある魔人族が掛かっていた。
「あれ? 魔王の右腕の、えっと確か……プリンアラモード?」
「クリスタラノードだ! わざとか勇者ユウト!」
「そうそう、クリスタラノード。まさか魔王の右腕自らこんなところまで来るとは」
「まさかこんなところに勇者が居たとは」
むむ、上手く返された。
なので、驚かせてやろうとこう言った。
「魔王の右腕のお前がここまで来たってことは、それほどボルケイノドラゴンが欲しいってことか?」
「貴様、なぜそれを!?」
すぐ情報を漏らす辺り、どこか抜けてるよな。
いや、まずこの罠に掛かった時点で相当抜けてるな。
「さあ? なんで知ってるんだろうな」
「クソッ、嵌めたな! こうなったら貴様を操ってやる! 【催眠】!」
クリスタラノードがそう叫びながら俺に向かって手をかざしてそう唱えると、俺の周りを怪しげな煙が漂う。
しかし、クリスタラノードのレベルがどのくらいかは知らないが、レベル最大の俺には通用しない。
ただ、操られてみるのも悪くはない。
四度目ともなると、そういうことがあってもいいかなって思うわけだ。
そんなことを考えていると、後ろからグラン達がやって来た気配を感じた。
「ユウト!?」
「あれは、【催眠】!?」
「祐人が操られるってこと!?」
「ユウト兄ちゃんに限ってそんなことはないよ」
リルの言葉を聞いた俺は、操られてみることにした。
まずスクッと立ち、聖剣を抜きながらグラン達の方へ向く。
すると、クリスタラノードが、俺が魔法に掛かったと思ったのかこう言った。
「よし、勇者ユウトよ、まずはそこに居る奴等を倒せ!」
よくグラン達のことがわかったなと思いつつ、命令に従って聖剣を構えながらグラン達に向かって歩く。
緊張感が周りを支配する。
グラン達もそのせいか緊張した面持ちだ。
ヤバい、結構シリアスな場面なのに俺だけ笑いそう。
徐々に近づく俺に少し後退りながら様子を窺ってくるグラン達。
なにこれ、地味に傷つくんだけど?
意趣返しとは言わないが、傷ついたお返しに【麻痺の矢】を全員にお見舞いした。
そして、いつの間にか穴から這い上がってきていたクリスタラノードが、再び高笑いをしながらこう言った。
「いいぞ、勇者ユウトよ、止めを刺せ!」
命令に従ってグラン達に向けて手をかざし、【麻痺の矢】を唱えてすかさずクリスタラノードに向け直した。
それにより、麻痺の矢はクリスタラノードに飛んでいき見事命中した。
操れていると思い込んでいたクリスタラノードは地面に倒れ動けないながらに驚いた。
「な、なぜだ!? なぜこちらに攻撃を!?」
「そんなの、最初から効いてなかったからに決まってるだろ。俺のレベル幾つだと思ってんだ」
「ならばなぜ、操られているふりを……」
「おもしろそうだったし、四度目だからこんなことがあってもいいかなと思ったからだ」
「完全に遊ばれていたということか……」
悔しそうな顔をするクリスタラノードは放っておき、俺はグラン達の方へ向く。
「さて君達、なんで俺が【麻痺の矢】を撃ったかわかる?」
「あたい達がユウトが操られていると思ったから?」
フーリエがそう言うが、俺は首を横に振る。
「正解は、俺が近づく度に後ろに下がられたから、でした。物凄く傷つきました。なので、君達には特別にモニュラのパチス炒め激マズバージョンをプレゼント! やったね、これで安眠できるよ!」
親指を立ててニコッと笑って見せた。
「ヤバいぞ、ユウトのこのテンションは相当怒っている証拠だ……!」
グランが他の3人に聞こえるように言った。
よくわかってるじゃないか。
俺は今怒っている。
すると、奈菜が何か言いたそうだったので聞いてみる。
え? 私達に言わずにやったんだから当然だって?
知らんな。
とにかくムカついたから罰を与える。それだけのこと。
理不尽極まりないが、それも知ったこっちゃない。
罰を与えると決めたら与える。
それが俺のスタイルだ。
日本じゃできないけど。
というわけで、明日の朝食はモニュラのパチス炒め激マズバージョンに決定し、クリスタラノードはジャナックに預けることになった。
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