四度目の勇者召喚 ~何度召喚したら気が済むんだ!~

遠竹

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第二章 四度目の勇者の10年後

真実

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 その後、マルクスがギルドへ行って依頼を受けることにしたので、俺もギルドへ行ってギルド長としての仕事をすることにした。
 遼太達がブーブーと文句を言っていたが、ギルド員(主に副ギルド長)に帰ってきたことを伝えておかないといけないということを説明すると、おとなしく待っていると言ってくれた。
 そんなこんなでギルドに向かい正面入り口から中へ入ると、中に居た冒険者達や受付嬢達がこちらに視線を向けた。
 そして、入ってきたのが俺だとわかると、全員が一斉に頭を下げてこう叫んだ。

『お疲れ様です!!』

 それに対して俺は「あぁ、うん、お疲れお疲れ」と軽く流した。
 なぜならこれ、魔王倒して帰ってきたとき毎回やってるから。
 ふとマルクスを見ると、「なんだこれは!?」みたいな顔をして固まっていた。

「毎度のことだから、驚くだけ無駄だぞ?」
「貴方は社長ですか!? いや、ギルド長だから社長みたいなもんですけど、なんでこうなったんですか!?」
「話すと長くなるんだけど、一言で言うなら俺が偉いからだな」
「なるほど、わかりません」
「わからないのかよ!?」

 思わずツッコミを入れてしまった。
 でも今のは仕方ないだろう。
 なるほどと言うからわかってくれたのかと思ったのにわからないと続けられたんだから。
 
「まぁ、とにかく、マルクスはあそこの掲示板から受けたいクエスト選んでこいよ。Cランクだから受けられるクエストの幅は広いはずだから」
「そうします」

 返事をしたマルクスが掲示板に向かったのを見て自分の部屋(ギルド長室)へ向かおうとすると、副ギルド長がやってきた。

「ギルド長、お帰りなさいませ。早速やっていただきたいことが……」
「げっ……もう!? この後は家で我が子達と過ごすつもりだったのに……!」
「それは申し訳ありません。ですが、ギルド長でないと相手にできない新入りルーキーが居るもので……」
「またか……。なんか、嫌な予感がするな……。まぁいい。試験場に行けばいいのか?」
「はい。お願いします」

 副ギルド長の返事を聞いた俺は、試験場に向かった。


 ◆◇◆◇◆


 試験場に入ると、金髪碧眼の美少女が佇(たたず)んでいた。
 えっ? 女の子?
 そう思っていると、金髪碧眼の美少女がにっこり微笑みながら口を開いた。

「やっとお会いできました。石崎祐人さん。私は、貴方をこの世界に召喚するよう仕向けた者です」
「…………あぁ、女神様か」

 数秒くらい思考が追い付かなかった。
 美少女の女神だから内心では美少女神びしょうじょしんと呼ぼう。

「はい、女神です。やっとこの世界に留まってくれたので会いに来ました」
「今まではこの世界に興味なかったからな。菜奈達が居なかったら10年前も帰ってた。というか、なんで女神様は何度も召喚してまで俺を留めさせたかったんだ?」
「そ、それは、ですね……」

 急に歯切れが悪くなる美少女神。
 人差し指で頬をポリポリと掻きながら視線をあらぬ方向へ逸らしている。
 こころなしか頬が薄く染まっている気が……。
 まさか俺のことが好きとかそんなこと言い出したりしないよな?
 俺がそんなことを考えドキドキしていると、美少女神が何かを決心したかのように口を開いた。

「祐人さんが私の初恋の人だからです!」
「神様って恋すんの!? しかも初恋の相手俺!? いつの話し……?」
「そこ聞いちゃいます? ええ~? どうしましょう~? 恥ずかしいです~」

 そう言いながら両手を頬に添えて体をクネクネさせる美少女神。
 10年前のリーアと同類だ。
 しかし、まさか俺が美少女神の初恋だとは……。
 菜奈達が知ったらなんて言うだろうか。
 菜奈は確実に怒るだろうな……。
 うわぁ、急に帰りたくなくなってきた……。

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