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女神探しの旅
これからもよろしく
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「それにしても……これ、どうしましょうか?」
今アキラとアズリアの二人の目の前には、勇者一行のメンバー達が倒れていた。それもアキラと生まれかわった女神。それとたった今事情を知ったばかりのアズリア以外には誰も知らない世界の真実を知ってしまった状態で。
「ああ、それなら適当に夢でも見せておこうか。強力な魔物に襲われて命からがら倒して、被害があったから戻ってきたって事にしておけば、ここにいる理由としてはおかしくないだろ?」
「そうね……まぁ、大丈夫、かな?」
アキラの言葉について考え始めたアズリアは、少しの間口元に手を当てて考えたあと若干迷いながらもアキラの言葉を肯定して頷いた。
「大丈夫だ。多少の違和感は消しておくから」
「なんでもありね。最初から私たちに魔法をかけて洗脳しておけば、自分の事を話したり戦ったりだなんて面倒なことにならなくて済んだんじゃないの?」
確かに、アズリアの言うとおりアキラが最初から自身に対して違和感をもたない様に洗脳をしておけば、今回の様に面倒ごとが起こることはなかった。
だがアキラはそんなアズリアの言葉に苦笑いをしつつ答える。
「まあそうなんだけどな。必要があれば使うけど、普段はできる限り使わないようにしてるんだよ。そういう誰かの心を読んだり操ったりってのは。人の心なんて、見ててもいいもんじゃないしな」
「そうね……。人は、身勝手だもの」
実感のこもったアキラの言葉に、同じ様に実感のこもった言葉で返すアズリア。
アキラは生まれ変わる前と生まれ変わってからの両方で、人間の心の暗い部分を見てきた。そしてアズリアはたった今アキラによって仲間だと思ってきていた人たちの真実を見せつけられた。
それ故に、両者ともに人の身勝手さを嫌と言うほど理解していた。
「……それが分かってるのに、勇者を続けるのか? 今ならまだ帰ることができるぞ?」
「ありがとう。でも、私はそんな『人』が好きなのよ。悪いところは嫌いだけど、それ以上にいいところもあるって知ってるから」
確かに『人』には悪と呼べる部分がある。だが同時に善と呼ぶことのできる場所もあるのだと言い、人を助けたいと願うその姿は、まさに『勇者』にふさわしいものだった。
「……そんないいもんじゃないと思うけどね、俺は。まあその辺の考え方は個人次第だから、とやかく言ったところで意味なんてないだろうけど」
いまだに人を信じ、助けたいとは思えないアキラとしては、自身の弱さを見せつけられている様で歯噛みする。
だがそんな姿をアズリアに見せまいと、心を隠して普段通りの振る舞いを続ける。それはアキラからアズリアに対する気遣いというよりも、ただ単にアキラの意地だった。
「……ねえ。あなたはこれからどうするの? よかったら私と一緒に来てくれない?」
「さっきまでとは逆だな」
「ふふっ。そうね。……で、どうかしら?」
先程はアズリアに対して勇者をやめて一緒に来ないかと誘ったアキラだが、今回はアズリアがアキラに誘いをかけている。
その立場の逆転がおかしくて、アズリアは笑いをこぼしながらもう一度尋ねた。
「悪いけど、俺はやることがあるんでね」
だが、アキラは首を振りながらアズリアの誘いを断った。
本来勇者に誘われて勇者パーティとして行動をするのは誰にとっても栄誉なことであり、アキラとしてもなんの目的もなければそれもまた面白いかもしれないと思うほどにアズリアのことを気に入っていたが、いかんせんアキラには女神の生まれ変わりを探すと言う目的があった。
「そう。……あーあ、ふられちゃった。一応人生で初めての告白だったんだけどなぁ~」
「待った。今のをカウントするのか?」
アズリアが冗談めかして言ったその言葉に対して、アキラは嫌そうに顔をしかめながら口を出す。
「するわよ? するに決まってるじゃない。一緒にいてほしいだなんて、告白以外のなにになるの?」
「いや、今のはちょっと違うだろ」
「えー? そうかなぁ~?」
「そうだよ。全然違う。それに俺は好きな人がいるんだ」
「そうなの? あっ、それがもしかして探してる人? ねえねえ、どんな人なの?」
さっきまでのアズリアとは……もっと言うのならアキラが出会ってから今に至るまでの彼女とは全くと言っていいほどに違う様子を見せるアズリア。
そんな彼女の様子にアキラは戸惑いを隠せないでいる。
「お前、さっきまでとは全然違うな」
「だって私も年頃の女の子よ? こういう話に興味があってもおかしくないでしょ? で、どんな人なの?」
今まで本音を言えず、心を押し殺していた反動だろうか。アズリアは心の底から信じ、心を許すことのできるものに出会い、心の動きを抑えることができきずにいた。それでも強引に迫ったりしないのはギリギリのところで最後の押さえが効いているからだろう。
「あー、そうだなぁ……女神の様な人だよ」
「そう。ごちそうさま」
女神の様な、というか実際に女神なのだが、アズリアはそれを惚気だと思った様で手をひらひらとさせながらアキラに背中を向けた。
そして二人の間には沈黙が訪れしばらくはそのままでいた二人だったが、アキラがため息を吐いて行動し始めた瞬間、アズリアが口を開いた。
「…… 会いに行っても、いいのよね?」
「……まあ、予定が合えばだが、その時は話し相手くらいにはなってやるよ」
「そう。なら、その時はよろしくね」
そうしてアキラは自身に背を向けるアズリアに対して自身も背を向け、そして歩き出した。
これが根性の別れというわけではない。このままで行けばアズリアたち勇者一行は今日もこの村に泊まることになるだろう。だがそれでも別れは別れだ。次にアキラとアズリアが出会ったとしても、今の様に気安く話すことはないだろう。
だがそれでも、離れていく二人の口元には笑みが浮かんでいた。
「面倒をかけたな、アズリア」
「うあぁぁ~。まだ少しだるい気がするぅ」
アキラがさって行った後、アズリアは寝ていた勇者一行の仲間たちの様子を見ていたのだが、アキラによって手配された宿の者が寝ている一行たちを宿へと運んだ。
そうして半日ほど経た後全員が一斉に目を覚まし始め、アズリアはアキラと話した偽の話を説明し、ちょうど今、その説明を終えたところだった。
「……私もだ。痛みはないが、全身の疲労が残っているな」
「すみません。できる限り治したのですけれど……」
「いやいや、あれを倒して生き残れたのだ。怪我もソフィアの治癒術で治っておるし、疲労程度で済んでいるのであれば幸いであろうよ」
疲労感を感じていると言ったが、それはアキラとの戦闘によって感じたものである。そしてそれに加えて、戦闘があって命からがら逃げ出したのに疲労感がないんじゃおかしいだろ、とアキラが疲労を感じる様に魔法をかけたのだった。なんとも芸の細かい男である。
「ま、そうだね。……それにしても、この調子じゃすぐに出るのは無理かなぁ」
「もう一日この村に泊まるべきであろうな」
「……それが妥当なことろか」
「それにしても、よくドラゴンなんて倒せましたね。それも魔境という場所で強化された特殊個体を」
「だね。いやー、さすがに死ぬかと思ったよ」
ドラゴンは年齢にもよるが単体でも国を滅ぼすことのできる存在であり、いわば意思を持つ災害であった。
その強さは、国を落とすことができるほど強いだけあって、半端な者では障害にすらならない。それほどの存在である故に、いかに勇者であったとしても絶対に倒せるというわけでもないのだ。
それほどの存在を、未だ魔王への道半ばである自分たちが倒せたことで、疲れてはいるものの全員が喜びを感じていた。……まあ、それもアキラが植え付けた偽の記憶なのだが。
アキラのかけた暗示に見事かかっているのを確認して、アズリアは上手くいっている様だとほっとすると同時に、すごいなと感心していた。
だがこうして事情を知り、魔法にかかったものをそばで見ていると、アキラがどうして魔法を使わなかったのか、その理由を理解できた。
確かにアズリアはアキラから魔法を使わないことの理由を聞いていたが、それは言葉の上での理解でしかなかった。こうしてはっきりと自身の目で見ることで、ようやく本当の意味で理解できたのだ。
(世界中の誰もが自分の思い通りに動く世界。そんなのは……)
断られてしまったのだからもうあまりアキラのことは考えまいとしていたアズリアだが、ついそんなことを考えてしまう。
「一応確認ですが、みなさん怪我はありませんか?」
「今のところおかしな感じはしない、かな」
「私もだ」
「ワシは元々後衛だったのでな。それほど怪我もなかったから問題はない」
だがそうして思い出してしまえば、一度は区切りをつけたと思っていたはずなのに、アキラへの思いがどんどん溢れ出す。アズリアの頭の中は年頃の少女の様にまさにピンク一色、お花畑、恋する乙女状態だった。
勇者一行の仲間たちはお互いの様子を確認しあっているが、アズリアはそんなことは聞いていなかった。
「アズリアさん?」
「……」
ソフィアの呼びかけに答えないアズリアの様子に勇者一行たちは顔を見合わせて眉を寄せている。
「アズリア?」
「どうしたアズリア。何か問題でもあったか?」
「っ! え、えっと、ごめんなさい。なにかしら?」
仲間たちに声をかけられてようやく意識を目の前へと戻したアズリアは、いったん頭を振ってアキラのことを頭の隅に追いやると、話し合いへと参加した。
「どこか怪我があったりしませんか?」
「大丈夫よ。ただ、やっぱりすごく疲れてるわね」
「そうですか。……いえ、そうですよね」
「皆疲れているようであるし、やはり今日は休養に当てるしかないだろうな」
「そうだね。……じゃ、これで話は終わりよね? あー、ベッドベッド。頭の中をかき回したみたいに気持ち悪いし、さっさと寝よーっと」
頭の中をかき回したという言葉で、アキラがかけた魔法に気がついたのかとど切りとしたアズリアだが、そうでもなかった様でふうと息を吐いた。
そして、アズリアはベッドに倒れ込んだセリスや他の仲間を見回してから目を瞑り、深呼吸をしたのちに目を開いて仲間たちに向けて口を開いた。
「ねえみんな。──これからもよろしく」
今アキラとアズリアの二人の目の前には、勇者一行のメンバー達が倒れていた。それもアキラと生まれかわった女神。それとたった今事情を知ったばかりのアズリア以外には誰も知らない世界の真実を知ってしまった状態で。
「ああ、それなら適当に夢でも見せておこうか。強力な魔物に襲われて命からがら倒して、被害があったから戻ってきたって事にしておけば、ここにいる理由としてはおかしくないだろ?」
「そうね……まぁ、大丈夫、かな?」
アキラの言葉について考え始めたアズリアは、少しの間口元に手を当てて考えたあと若干迷いながらもアキラの言葉を肯定して頷いた。
「大丈夫だ。多少の違和感は消しておくから」
「なんでもありね。最初から私たちに魔法をかけて洗脳しておけば、自分の事を話したり戦ったりだなんて面倒なことにならなくて済んだんじゃないの?」
確かに、アズリアの言うとおりアキラが最初から自身に対して違和感をもたない様に洗脳をしておけば、今回の様に面倒ごとが起こることはなかった。
だがアキラはそんなアズリアの言葉に苦笑いをしつつ答える。
「まあそうなんだけどな。必要があれば使うけど、普段はできる限り使わないようにしてるんだよ。そういう誰かの心を読んだり操ったりってのは。人の心なんて、見ててもいいもんじゃないしな」
「そうね……。人は、身勝手だもの」
実感のこもったアキラの言葉に、同じ様に実感のこもった言葉で返すアズリア。
アキラは生まれ変わる前と生まれ変わってからの両方で、人間の心の暗い部分を見てきた。そしてアズリアはたった今アキラによって仲間だと思ってきていた人たちの真実を見せつけられた。
それ故に、両者ともに人の身勝手さを嫌と言うほど理解していた。
「……それが分かってるのに、勇者を続けるのか? 今ならまだ帰ることができるぞ?」
「ありがとう。でも、私はそんな『人』が好きなのよ。悪いところは嫌いだけど、それ以上にいいところもあるって知ってるから」
確かに『人』には悪と呼べる部分がある。だが同時に善と呼ぶことのできる場所もあるのだと言い、人を助けたいと願うその姿は、まさに『勇者』にふさわしいものだった。
「……そんないいもんじゃないと思うけどね、俺は。まあその辺の考え方は個人次第だから、とやかく言ったところで意味なんてないだろうけど」
いまだに人を信じ、助けたいとは思えないアキラとしては、自身の弱さを見せつけられている様で歯噛みする。
だがそんな姿をアズリアに見せまいと、心を隠して普段通りの振る舞いを続ける。それはアキラからアズリアに対する気遣いというよりも、ただ単にアキラの意地だった。
「……ねえ。あなたはこれからどうするの? よかったら私と一緒に来てくれない?」
「さっきまでとは逆だな」
「ふふっ。そうね。……で、どうかしら?」
先程はアズリアに対して勇者をやめて一緒に来ないかと誘ったアキラだが、今回はアズリアがアキラに誘いをかけている。
その立場の逆転がおかしくて、アズリアは笑いをこぼしながらもう一度尋ねた。
「悪いけど、俺はやることがあるんでね」
だが、アキラは首を振りながらアズリアの誘いを断った。
本来勇者に誘われて勇者パーティとして行動をするのは誰にとっても栄誉なことであり、アキラとしてもなんの目的もなければそれもまた面白いかもしれないと思うほどにアズリアのことを気に入っていたが、いかんせんアキラには女神の生まれ変わりを探すと言う目的があった。
「そう。……あーあ、ふられちゃった。一応人生で初めての告白だったんだけどなぁ~」
「待った。今のをカウントするのか?」
アズリアが冗談めかして言ったその言葉に対して、アキラは嫌そうに顔をしかめながら口を出す。
「するわよ? するに決まってるじゃない。一緒にいてほしいだなんて、告白以外のなにになるの?」
「いや、今のはちょっと違うだろ」
「えー? そうかなぁ~?」
「そうだよ。全然違う。それに俺は好きな人がいるんだ」
「そうなの? あっ、それがもしかして探してる人? ねえねえ、どんな人なの?」
さっきまでのアズリアとは……もっと言うのならアキラが出会ってから今に至るまでの彼女とは全くと言っていいほどに違う様子を見せるアズリア。
そんな彼女の様子にアキラは戸惑いを隠せないでいる。
「お前、さっきまでとは全然違うな」
「だって私も年頃の女の子よ? こういう話に興味があってもおかしくないでしょ? で、どんな人なの?」
今まで本音を言えず、心を押し殺していた反動だろうか。アズリアは心の底から信じ、心を許すことのできるものに出会い、心の動きを抑えることができきずにいた。それでも強引に迫ったりしないのはギリギリのところで最後の押さえが効いているからだろう。
「あー、そうだなぁ……女神の様な人だよ」
「そう。ごちそうさま」
女神の様な、というか実際に女神なのだが、アズリアはそれを惚気だと思った様で手をひらひらとさせながらアキラに背中を向けた。
そして二人の間には沈黙が訪れしばらくはそのままでいた二人だったが、アキラがため息を吐いて行動し始めた瞬間、アズリアが口を開いた。
「…… 会いに行っても、いいのよね?」
「……まあ、予定が合えばだが、その時は話し相手くらいにはなってやるよ」
「そう。なら、その時はよろしくね」
そうしてアキラは自身に背を向けるアズリアに対して自身も背を向け、そして歩き出した。
これが根性の別れというわけではない。このままで行けばアズリアたち勇者一行は今日もこの村に泊まることになるだろう。だがそれでも別れは別れだ。次にアキラとアズリアが出会ったとしても、今の様に気安く話すことはないだろう。
だがそれでも、離れていく二人の口元には笑みが浮かんでいた。
「面倒をかけたな、アズリア」
「うあぁぁ~。まだ少しだるい気がするぅ」
アキラがさって行った後、アズリアは寝ていた勇者一行の仲間たちの様子を見ていたのだが、アキラによって手配された宿の者が寝ている一行たちを宿へと運んだ。
そうして半日ほど経た後全員が一斉に目を覚まし始め、アズリアはアキラと話した偽の話を説明し、ちょうど今、その説明を終えたところだった。
「……私もだ。痛みはないが、全身の疲労が残っているな」
「すみません。できる限り治したのですけれど……」
「いやいや、あれを倒して生き残れたのだ。怪我もソフィアの治癒術で治っておるし、疲労程度で済んでいるのであれば幸いであろうよ」
疲労感を感じていると言ったが、それはアキラとの戦闘によって感じたものである。そしてそれに加えて、戦闘があって命からがら逃げ出したのに疲労感がないんじゃおかしいだろ、とアキラが疲労を感じる様に魔法をかけたのだった。なんとも芸の細かい男である。
「ま、そうだね。……それにしても、この調子じゃすぐに出るのは無理かなぁ」
「もう一日この村に泊まるべきであろうな」
「……それが妥当なことろか」
「それにしても、よくドラゴンなんて倒せましたね。それも魔境という場所で強化された特殊個体を」
「だね。いやー、さすがに死ぬかと思ったよ」
ドラゴンは年齢にもよるが単体でも国を滅ぼすことのできる存在であり、いわば意思を持つ災害であった。
その強さは、国を落とすことができるほど強いだけあって、半端な者では障害にすらならない。それほどの存在である故に、いかに勇者であったとしても絶対に倒せるというわけでもないのだ。
それほどの存在を、未だ魔王への道半ばである自分たちが倒せたことで、疲れてはいるものの全員が喜びを感じていた。……まあ、それもアキラが植え付けた偽の記憶なのだが。
アキラのかけた暗示に見事かかっているのを確認して、アズリアは上手くいっている様だとほっとすると同時に、すごいなと感心していた。
だがこうして事情を知り、魔法にかかったものをそばで見ていると、アキラがどうして魔法を使わなかったのか、その理由を理解できた。
確かにアズリアはアキラから魔法を使わないことの理由を聞いていたが、それは言葉の上での理解でしかなかった。こうしてはっきりと自身の目で見ることで、ようやく本当の意味で理解できたのだ。
(世界中の誰もが自分の思い通りに動く世界。そんなのは……)
断られてしまったのだからもうあまりアキラのことは考えまいとしていたアズリアだが、ついそんなことを考えてしまう。
「一応確認ですが、みなさん怪我はありませんか?」
「今のところおかしな感じはしない、かな」
「私もだ」
「ワシは元々後衛だったのでな。それほど怪我もなかったから問題はない」
だがそうして思い出してしまえば、一度は区切りをつけたと思っていたはずなのに、アキラへの思いがどんどん溢れ出す。アズリアの頭の中は年頃の少女の様にまさにピンク一色、お花畑、恋する乙女状態だった。
勇者一行の仲間たちはお互いの様子を確認しあっているが、アズリアはそんなことは聞いていなかった。
「アズリアさん?」
「……」
ソフィアの呼びかけに答えないアズリアの様子に勇者一行たちは顔を見合わせて眉を寄せている。
「アズリア?」
「どうしたアズリア。何か問題でもあったか?」
「っ! え、えっと、ごめんなさい。なにかしら?」
仲間たちに声をかけられてようやく意識を目の前へと戻したアズリアは、いったん頭を振ってアキラのことを頭の隅に追いやると、話し合いへと参加した。
「どこか怪我があったりしませんか?」
「大丈夫よ。ただ、やっぱりすごく疲れてるわね」
「そうですか。……いえ、そうですよね」
「皆疲れているようであるし、やはり今日は休養に当てるしかないだろうな」
「そうだね。……じゃ、これで話は終わりよね? あー、ベッドベッド。頭の中をかき回したみたいに気持ち悪いし、さっさと寝よーっと」
頭の中をかき回したという言葉で、アキラがかけた魔法に気がついたのかとど切りとしたアズリアだが、そうでもなかった様でふうと息を吐いた。
そして、アズリアはベッドに倒れ込んだセリスや他の仲間を見回してから目を瞑り、深呼吸をしたのちに目を開いて仲間たちに向けて口を開いた。
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