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12.執事が弾けました
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「ミーグル、あなたは嫌々犯罪に加担していた。だけどお世話になった侯爵家に逆らうことはできなかった。違う?」
犯罪資料に記載されている誘拐してきた子どもの数と金持ちに売った子どもの数は明らかに違った。
巧妙に隠されてはいたけど、わかる人が見ればわかる。
ということは、管理している者が故意的に数をちょろめかしたということ。
ここからはあくまで予想だけど、幼すぎる子や持病がある子なんかはミーグルがこっそり逃していたんじゃないかな。
そうでもないと数が合わない理由がない。
もしそうなら管理者は人情脆く、何か理由があって侯爵家に逆らえないだけだと思った。
でも、特に脅された形跡はなかった。彼について調べたけど家族はいないようだったし、借金もしていない。脅されるネタがない。
あと考えられるとすれば、先代侯爵──ああ、もう先々代か──に拾ってもらい、命尽きるまで侯爵家に骨を埋めると誓ったはいいものの、最低なクズ息子とそのゴミ嫁に仕えることになってしまい、めちゃくちゃ嫌だけど先々代に『息子を頼む』と言われた手前、見捨てられなかった…とか?
うん、人情脆いミーグルに一番有り得そうな話だ。
──そう思って、こうして今自信満々に自分の考えをミーグルに確かめているわけ。
「で、ですが…! いえ、それでも先代侯爵様と奥様を止められなかった私が悪いのです。私が、私がもっとしっかりしていれば…お二人は道を踏み外さなかったかもしれないのに…!」
おお、否定されなかったということは私の予想は大方合っていたらしいね。
それにしてもミーグル、なんておめでたいのかしら。
そんなことあるわけないじゃん。
ミーグルがいようがいまいが、しっかりしていようがしていまいが、あの毒親達は悪の道まっしぐらだったよ。
だってゲームの設定上そうなんだもん。
──とはさすがに言えないから、ミーグルの罪悪感が少しでも減るような耳触りの良いことを言ってあげるとしますか。
「ミーグル、落ち着いて。あなたはよく頑張ってくれたわ。ろくでもない両親たちを最後まで見放さないでくれてありがとう。情けないのは私の方よ。証拠集めに必死になってお父様とお母様を更生させようなんて思わなかったんだもの…」
こう言えばミーグルのことだから私を慰めることに必死になって罪悪感が薄れるでしょう。
「プレイシア様…! そんな、そんなこと、侯爵様が情けないなんてあるわけない! 侯爵様は然るべきことをやってのけたのです! 自分の親の悪事を暴くなんて、とても勇気がいったでしょうに…。私はそんなプレイシア様の大変な思いなんて全く知らず、自分だけが不幸なんだと勘違いして、大馬鹿野郎です! やはり、どうかこの間抜け野郎を罰してください!!」
お、おう…。
感極まってか思いっきり地面に頭を打ち付けたミーグル。
まさか罪悪感が私の方へ向くとは…それも想像以上に…。
別に本当の親でもないし自分が生き残るには毒親たちを売るしか道がなかったから、勇気も何も…。
うーん…。
「ミ、ミーグル…とりあえず頭を上げて? もう犯罪者たちは捕まったんだからそれでいいじゃない。これからは私達で力を合わせて侯爵家を復興させていきましょう。あんな人たちのために思い悩むなんてそれこそ馬鹿らしいでしょう?」
もうどうにでもなれ。ここまで言ってまだ罪悪感が拭えないようだったらもう知らん。
勝手に自首するなりしてくれ。私は眠いんだ。不眠はお肌の大敵なんだぞ。
ミーグルを救うために徹夜したのにこれじゃあ私の肌が可哀想だ。
なんて思っていたけれど、どうやら杞憂だったようだ。
「確かに。侯爵様の仰る通りですね。あの親不孝もんが。偉大なる先々代侯爵様の思いを足蹴にしやがって。あんなろくでもなし夫婦更生させようとするだけ無駄! 証拠集めに勤しんだ侯爵様が大大大正解です。ああ、やっと解放された。ようやく普通の執事としての業務ができます。これほどの喜びはありません。今完全に目が覚めました」
ミーグル、ウケる。
相当溜まっていたみたいね。
何はともあれ、私がしたことが無駄にならなくて良かった。
犯罪資料に記載されている誘拐してきた子どもの数と金持ちに売った子どもの数は明らかに違った。
巧妙に隠されてはいたけど、わかる人が見ればわかる。
ということは、管理している者が故意的に数をちょろめかしたということ。
ここからはあくまで予想だけど、幼すぎる子や持病がある子なんかはミーグルがこっそり逃していたんじゃないかな。
そうでもないと数が合わない理由がない。
もしそうなら管理者は人情脆く、何か理由があって侯爵家に逆らえないだけだと思った。
でも、特に脅された形跡はなかった。彼について調べたけど家族はいないようだったし、借金もしていない。脅されるネタがない。
あと考えられるとすれば、先代侯爵──ああ、もう先々代か──に拾ってもらい、命尽きるまで侯爵家に骨を埋めると誓ったはいいものの、最低なクズ息子とそのゴミ嫁に仕えることになってしまい、めちゃくちゃ嫌だけど先々代に『息子を頼む』と言われた手前、見捨てられなかった…とか?
うん、人情脆いミーグルに一番有り得そうな話だ。
──そう思って、こうして今自信満々に自分の考えをミーグルに確かめているわけ。
「で、ですが…! いえ、それでも先代侯爵様と奥様を止められなかった私が悪いのです。私が、私がもっとしっかりしていれば…お二人は道を踏み外さなかったかもしれないのに…!」
おお、否定されなかったということは私の予想は大方合っていたらしいね。
それにしてもミーグル、なんておめでたいのかしら。
そんなことあるわけないじゃん。
ミーグルがいようがいまいが、しっかりしていようがしていまいが、あの毒親達は悪の道まっしぐらだったよ。
だってゲームの設定上そうなんだもん。
──とはさすがに言えないから、ミーグルの罪悪感が少しでも減るような耳触りの良いことを言ってあげるとしますか。
「ミーグル、落ち着いて。あなたはよく頑張ってくれたわ。ろくでもない両親たちを最後まで見放さないでくれてありがとう。情けないのは私の方よ。証拠集めに必死になってお父様とお母様を更生させようなんて思わなかったんだもの…」
こう言えばミーグルのことだから私を慰めることに必死になって罪悪感が薄れるでしょう。
「プレイシア様…! そんな、そんなこと、侯爵様が情けないなんてあるわけない! 侯爵様は然るべきことをやってのけたのです! 自分の親の悪事を暴くなんて、とても勇気がいったでしょうに…。私はそんなプレイシア様の大変な思いなんて全く知らず、自分だけが不幸なんだと勘違いして、大馬鹿野郎です! やはり、どうかこの間抜け野郎を罰してください!!」
お、おう…。
感極まってか思いっきり地面に頭を打ち付けたミーグル。
まさか罪悪感が私の方へ向くとは…それも想像以上に…。
別に本当の親でもないし自分が生き残るには毒親たちを売るしか道がなかったから、勇気も何も…。
うーん…。
「ミ、ミーグル…とりあえず頭を上げて? もう犯罪者たちは捕まったんだからそれでいいじゃない。これからは私達で力を合わせて侯爵家を復興させていきましょう。あんな人たちのために思い悩むなんてそれこそ馬鹿らしいでしょう?」
もうどうにでもなれ。ここまで言ってまだ罪悪感が拭えないようだったらもう知らん。
勝手に自首するなりしてくれ。私は眠いんだ。不眠はお肌の大敵なんだぞ。
ミーグルを救うために徹夜したのにこれじゃあ私の肌が可哀想だ。
なんて思っていたけれど、どうやら杞憂だったようだ。
「確かに。侯爵様の仰る通りですね。あの親不孝もんが。偉大なる先々代侯爵様の思いを足蹴にしやがって。あんなろくでもなし夫婦更生させようとするだけ無駄! 証拠集めに勤しんだ侯爵様が大大大正解です。ああ、やっと解放された。ようやく普通の執事としての業務ができます。これほどの喜びはありません。今完全に目が覚めました」
ミーグル、ウケる。
相当溜まっていたみたいね。
何はともあれ、私がしたことが無駄にならなくて良かった。
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