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 ぬわあああああ!! エエエエエエドウィン!!? なんであんたがここに!?

 と、私が咄嗟の出来事に対応できず頭をぐるぐると回転させている間に、一足早く現実世界に戻ってきたルーカスが一歩前に出た。

「ご、ごご誤解ですエドウィン様!! ぼ、僕達は逢瀬など……」
「煩いよ害虫。おかしいなぁ、今まで散々君は害虫だと躾けてきたよね? だからキャディに恋心なんて抱いても無駄だよって」
「こ、恋心など! そんな恐ろしいもの抱いておりません!」
「ふーん? 僕に嘘つくんだ? 5年前キャディと遊んでる時なんて言おうとしたのか忘れちゃったのかな?」
「そっ、それは……!」
「『キャンディス姉様のことが好きです。僕と結婚してくだ───』」
「5年前のことです!! もうそんな愚かなことは思っておりません!!」

 ……えっ、と。あの?
 私を置いてけぼりにするのはいいとして、君達は一体何を言っているんだい?
 エドウィンや? ルーカスのことを害虫だって?
 あれおかしいな? 私の記憶が正しければ小さい頃は仲良く3人で遊んでたよね? あれれ?
 しかも何? ルーカス私のこと好きだったの? そんな話一言も聞いてないぞ?

 ていうか何より、2人の間のあからさまな上下関係はなんだい?
 まあそりゃ確かに公爵と侯爵は家格が違うから多少は仕方ないかもしれないけど、それにしたってこのルーカスの引くほどの低姿勢は気にかかる。

「ふーん。まあどうでもいいや。君がキャディのことどう思おうと、彼女は僕の婚約者だし」

 ルーカスのことをまるでゴミを見るような無機質な目で見下ろすエドウィン。
 それに対してルーカスは心底ホッとした表情をする。

 いやいやちょっと待って!? それじゃあ私の作戦はどうなるの!?
 こんなルーカスがポンコツならエドウィンから逃げる盾にならないじゃん!!

「そうですよね、姉様はエドウィン様の婚約者ですものね。じゃあお邪魔虫の僕は消え───」
「でも、僕に黙って密会してたことが許せない」
「!?」
「やっぱり躾が足りなかったようだね。次はキャディの姿を見ただけで吐き気を催すくらいにしてあげないと───」
「ヒ、ヒイイイイイ!!」

 ルーカスの情けない絶叫がエントランスホールに響き渡った。
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