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第一章 怖くて偉大で大きな木
31.大樹戦 目的地
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白霧が激しく舞い、地が爆破したかのような痕跡が残っていた。凄まじい力でその場を飛び立った者がいることを、誰が見てもわかるかのように。
ある程度、霧の周りに根を蔓延らせていた天樹だったが、難敵であるラザクに対し根の追跡を集中していたため、カウラの見張りが疎かになってしまっていた。慢心があったのか、あの女はそれほど脅威ではないと天樹の中で軽視していたところがあったのは否めない。しかし、いとも簡単に白霧からの脱出を許してしまった。
白霧の中からラザクとカウラが出て来た瞬間、一息に刺し殺そうとそういう手筈だったのに。
結果的に二人は天樹の囲みから抜け出してしまっている。
ーきしゃゃぁぁぁぁ!
天樹は根を使い、二人を容赦なく追跡する。それぞれ別々の方向に逃げたラザクとカウラに対し、鋭利な先の根を向け続けた。
遠慮なんてかけらもない。一度、捕まえればこちらの勝ちだ。刺し殺して八つ裂きにしてやる。
「…………」
うねり、きしませる音を打ち鳴らせながら天樹は根を暴れさせる。周りの木々をなぎ倒しながら二人を無鉄砲に追尾する。
遥か上空へと向かうカウラはその様子を静観していた。
雷纏状態となり、空へと駆けながらも少しだけ後ろを振り向く。
やはり、多くの根は追ってきていた。が、そんなのは想定内だ。
白霧から脱出する時、ラザクが天樹の根を引きつけてくれていたおかげで、空への道が少し開けていた。カウラはそこにできたわずかな隙間を抜け、上空へと飛び上がることができたのだ。本来なら周りを囲まれて身動き出来なかったが、上手く天樹を出し抜くことができた。
「…怒りが抑えきれないようですね。」
飛びながらカウラは一言そう呟く。
後ろの多くの根を見れば、必死こいて追尾していることがよく分かった。
些細な戦法など微塵も考えていない。ただ怒りに任せた殺意のみで攻撃してきている。仮にもし天樹に表情というものがあったならば、憤激した形相をしていることだろう。
「何も考えずただ行動すると痛い目を見ますよ。私がいうのもなんですが。」
肩を竦めながらカウラは天樹に向かって告げる。
軽く自責の念を孕ませながら。
カウラが少し前に『雷轟の大突』を放った行為、あれは好ましい判断ではなかった。
天樹に相方を吹っ飛ばされ、気が動転してしまっていた。圧倒的不利な状況に立たされて、焦燥感に追われていた。さらにはカウラの戦士としてのプライドを傷つける天樹の食事行為。
それを目の当たりにした瞬間、怒りが総身を覆い尽くした。天樹を叩きつぶしてやると、それだけしか頭が回らなくなっていたのだろう。ただただ持ち得る最強の大技でねじ伏せようとした。
結果、力を使い果たしてしまった挙句、意識が飛んでしまうはめになってしまった。本当に情けない行動だったと省みる。あの時、ラザクが駆けつけてくれなければほぼ確実に天樹に喰われていただろう。
「…忠告はしましたよ。そちらに聞く耳があるかどうかは知りませんが。」
カウラは皮肉じみて天樹に言い放つ。
躍起になって追いかける天樹だがカウラとの距離は一向に縮まりそうになかった。むしろ遠く離れている気がしてならない。
カウラの雷纏は大幅にスピードが上がる雷術だ。生身の時とは段違いに速い。が、先程は雷纏状態でも天樹の根の速度とは大差はなかったはずだ。しかし、なぜ今はこんなにも速度に差が生じているのか。
「追いつけないことが解せないですか?あなたは私に時間を与えすぎたのですよ。」
カウラはそう言い放つとスピードのギアを上げ、天樹を置き去りにしていく。
カウラの今の雷纏状態は一度目の雷纏とは少し違う。一度目になった時は瞬時に通常状態から雷纏状態へと切り替えた。すぐさま戦闘へと参戦するために。
しかし、今回はしっかりと練度を高めた雷纏状態へと転変することが可能であった。
白霧の中での時間をかけた雷術発動。集中力を高め、ゆっくりと雷を身体全体へと染み渡らせていったのだ。雷と一つになるかのようにカウラは雷術を行った。
「…先ほどの雷纏とはわけが違いますよ。と、もう聞こえませんか。」
超高速で空を駆けるカウラに対し、天樹はついていけていない。後ろを振り返っても鋭利な先を向ける根は遠くに見えるだけである。
雷纏状態になったことで動きが格段に速くなっている。その為もあり、作戦遂行のための移動は心配いらないようだ。
「…あとは」
カウラは目を凝らし、目的の場へと移動していく。
目的は山の頂上だ。そして、
「どのあたりに落としましょうか。」
カウラは懐をまさぐりながら綺麗な鉱石を取り出した。それを手で砕きながらあたりをキョロキョロと見回す。
「ここら辺からで十分でしょう。」
砕き、石ころ程度になった鉱石。これはこの天樹との戦闘が始まったばかりの頃、かウラが超広範囲に雷を落とし天樹にダメージを与えた際に用いられた鉱石だ。避雷針の効力のある石であり、キラキラと淡い光沢を光らせている。
それを握りしめながら、カウラは山森の中にばら撒いていった。そこは天樹のいる場所とはなんら関係ない、ただの山の中腹だ。
カウラは鉱石をばら撒きながら山の頂上へと向かっていく。そして、そのまま空の滑空を続けながら、頂上付近で目的のものを探し、
「…見つけた。」
一言、静かに告げ、カウラは両手に雷を発生させた。
ある程度、霧の周りに根を蔓延らせていた天樹だったが、難敵であるラザクに対し根の追跡を集中していたため、カウラの見張りが疎かになってしまっていた。慢心があったのか、あの女はそれほど脅威ではないと天樹の中で軽視していたところがあったのは否めない。しかし、いとも簡単に白霧からの脱出を許してしまった。
白霧の中からラザクとカウラが出て来た瞬間、一息に刺し殺そうとそういう手筈だったのに。
結果的に二人は天樹の囲みから抜け出してしまっている。
ーきしゃゃぁぁぁぁ!
天樹は根を使い、二人を容赦なく追跡する。それぞれ別々の方向に逃げたラザクとカウラに対し、鋭利な先の根を向け続けた。
遠慮なんてかけらもない。一度、捕まえればこちらの勝ちだ。刺し殺して八つ裂きにしてやる。
「…………」
うねり、きしませる音を打ち鳴らせながら天樹は根を暴れさせる。周りの木々をなぎ倒しながら二人を無鉄砲に追尾する。
遥か上空へと向かうカウラはその様子を静観していた。
雷纏状態となり、空へと駆けながらも少しだけ後ろを振り向く。
やはり、多くの根は追ってきていた。が、そんなのは想定内だ。
白霧から脱出する時、ラザクが天樹の根を引きつけてくれていたおかげで、空への道が少し開けていた。カウラはそこにできたわずかな隙間を抜け、上空へと飛び上がることができたのだ。本来なら周りを囲まれて身動き出来なかったが、上手く天樹を出し抜くことができた。
「…怒りが抑えきれないようですね。」
飛びながらカウラは一言そう呟く。
後ろの多くの根を見れば、必死こいて追尾していることがよく分かった。
些細な戦法など微塵も考えていない。ただ怒りに任せた殺意のみで攻撃してきている。仮にもし天樹に表情というものがあったならば、憤激した形相をしていることだろう。
「何も考えずただ行動すると痛い目を見ますよ。私がいうのもなんですが。」
肩を竦めながらカウラは天樹に向かって告げる。
軽く自責の念を孕ませながら。
カウラが少し前に『雷轟の大突』を放った行為、あれは好ましい判断ではなかった。
天樹に相方を吹っ飛ばされ、気が動転してしまっていた。圧倒的不利な状況に立たされて、焦燥感に追われていた。さらにはカウラの戦士としてのプライドを傷つける天樹の食事行為。
それを目の当たりにした瞬間、怒りが総身を覆い尽くした。天樹を叩きつぶしてやると、それだけしか頭が回らなくなっていたのだろう。ただただ持ち得る最強の大技でねじ伏せようとした。
結果、力を使い果たしてしまった挙句、意識が飛んでしまうはめになってしまった。本当に情けない行動だったと省みる。あの時、ラザクが駆けつけてくれなければほぼ確実に天樹に喰われていただろう。
「…忠告はしましたよ。そちらに聞く耳があるかどうかは知りませんが。」
カウラは皮肉じみて天樹に言い放つ。
躍起になって追いかける天樹だがカウラとの距離は一向に縮まりそうになかった。むしろ遠く離れている気がしてならない。
カウラの雷纏は大幅にスピードが上がる雷術だ。生身の時とは段違いに速い。が、先程は雷纏状態でも天樹の根の速度とは大差はなかったはずだ。しかし、なぜ今はこんなにも速度に差が生じているのか。
「追いつけないことが解せないですか?あなたは私に時間を与えすぎたのですよ。」
カウラはそう言い放つとスピードのギアを上げ、天樹を置き去りにしていく。
カウラの今の雷纏状態は一度目の雷纏とは少し違う。一度目になった時は瞬時に通常状態から雷纏状態へと切り替えた。すぐさま戦闘へと参戦するために。
しかし、今回はしっかりと練度を高めた雷纏状態へと転変することが可能であった。
白霧の中での時間をかけた雷術発動。集中力を高め、ゆっくりと雷を身体全体へと染み渡らせていったのだ。雷と一つになるかのようにカウラは雷術を行った。
「…先ほどの雷纏とはわけが違いますよ。と、もう聞こえませんか。」
超高速で空を駆けるカウラに対し、天樹はついていけていない。後ろを振り返っても鋭利な先を向ける根は遠くに見えるだけである。
雷纏状態になったことで動きが格段に速くなっている。その為もあり、作戦遂行のための移動は心配いらないようだ。
「…あとは」
カウラは目を凝らし、目的の場へと移動していく。
目的は山の頂上だ。そして、
「どのあたりに落としましょうか。」
カウラは懐をまさぐりながら綺麗な鉱石を取り出した。それを手で砕きながらあたりをキョロキョロと見回す。
「ここら辺からで十分でしょう。」
砕き、石ころ程度になった鉱石。これはこの天樹との戦闘が始まったばかりの頃、かウラが超広範囲に雷を落とし天樹にダメージを与えた際に用いられた鉱石だ。避雷針の効力のある石であり、キラキラと淡い光沢を光らせている。
それを握りしめながら、カウラは山森の中にばら撒いていった。そこは天樹のいる場所とはなんら関係ない、ただの山の中腹だ。
カウラは鉱石をばら撒きながら山の頂上へと向かっていく。そして、そのまま空の滑空を続けながら、頂上付近で目的のものを探し、
「…見つけた。」
一言、静かに告げ、カウラは両手に雷を発生させた。
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