異世界転生した俺はまったりスローライフを送りたいのだが案外修羅場だらけであり

D・D

文字の大きさ
14 / 27

14.大いなる獣の威力

しおりを挟む
「国の中でも…群を抜いて…治癒魔法の使い手?」

疑心さを持ちながらレイネルの告げた言葉を確認がてらに復唱する。

容易には信じがたい事実なだけに俺はまだ真に受けられない。

「そ。」

しかし、レイネルは何事もないかのようにただ短く肯定した。

俺はレイネルに驚きの表情を向けながら、歩く猫耳幼女に指を差す。

「あの女の子が?」

「そうよ。あなたの指差してるあの子が。」

「あんな猫耳幼女なだけの要素で十分なあの子が?」

「そ。」

「…………。治癒魔法、あの子できるの?」

「出来るなんてものじゃないわ。死にかけの兵士でも全盛期の状態まで回復させるほどの力を持ってるわよ。」

「…なにそれ。…ヤバすぎ。」

「まあ、私はそれ見たことないけど。噂で知ったし。」

「噂かよ…」

「でも、実際すごいわよ。骨折ったりしてもあの子がいれば、一瞬で治るわ。」

「…なにそれ。噂?」

「いや、これは噂じゃない。だって私が実際に腕折って治療されたし。」

「あの子はRPGのベッドかな?」

とりあえず、ある程度あの猫耳幼女のキャラクター性を聞いたあと、俺はただ微笑する。
レイネルが「あーるぴーじー?」と、不思議そうに首を傾げていたがそれはまあ置いといて。
とにかく、あの猫耳幼女がとんでもない魔法の使い手だということがわかった。

さっきの思念魔法だか幻影魔法だかを余裕で使うあたり力量が計りしれてくる。
それも二つ同時発動させるという圧倒的強者感。

治癒魔法に関しては国の中でもトップクラスらしいし。しかも、今はまだ9歳らしいし。
なにあの猫耳幼女、スペックが高すぎる。

あんな笑いながらニャーニャー言っているような幼女がねぇ。さすが異世界ファンタジー。
俺の固定観念をどんどん覆してくるなあ。

「あんなちびっ子でも世の中は認めてくれる世界か…」

「なーにがちびっ子だニャー!」

目を瞑りながら自分なりにふむふむと得心していると、真下から高い声が聞こえてきた。
目線を下に向けると、先を歩いていった猫耳コラルが頬をぷっくら膨らませてこちらを見上げている。

「ついてきてって言ったのになんでついてきてないニャ!一人で鼻歌して歩いていることに気づいて恥ずかしかったニャ!」

腕を振り上げながらプンスカした表情をしている猫耳コラル。
鼻息をフーンと鳴らしては可愛らしく口元を尖らしていた。

うん、多分、怒っているんだろうけど、全然怖くない。

「あ、ごめん。先に歩いていったのは知ってたけど、なんか話しちゃってて。」

「わちは恥ずかしかったニャ!めちゃくちゃ笑いながら後ろに話しかけちゃってたニャ!誰もいないのに話しかけちゃってたニャ!」

顔をしわくちゃにしながら地団駄を踏む猫耳幼女。

言いながら自分の恥ずかしい行為を思い出してしまったのか、コラルはちょっとうる目になっていた。

あぁ、それは、うん。恥ずかしいわな。よくわかるよ。
俺にもその経験あるもの。

「はあ…。なにあんた、女の子泣かしてんのよ。」

ため息を吐くとともにそう告げるのは後ろにいたレイネルだ。

え?俺が悪いの?

「レイネルゥ…」

目元を潤わせながらヨタヨタとコラルは俺の横を通っていき、レイネルの元に縋るように歩いていく。

それを見るやレイネルはしゃがみ込み、パァッと腕を広げると、

「はいはい。コラル先生は何にも悪くないですよー。悪いのはあそこの無職でーす。」

「うぅ、レイネル、わちは一緒に歩いていると思ってたのに。」

「はーい。大丈夫、大丈夫。ちょっと、あの無職から聞かれることがあってですねえ。」

「急いでくれてもよかったのにニャァ。」

「ごめんなさい。コラル先生。あの無職の質問がしつこくてですねえ。」

「次はちゃんとついてきてくれる、か?」

「はーい。一緒に喋りながら行きましょう。」

優しく言葉をかけながら俯いているコラルの頭を撫でるレイネル。子をあやすようなその様子は見るだけならば優しいお姉さんだ。
コラルの方もちょっと泣き止んでいるようである。

うん、別にさ、いい光景なんだけど、ちょっと言葉に気をつけようかレイネルさん?

無職って言うんじゃねえよ。いや、それはまだいいよ。

なんで俺だけ悪いみたいな扱いになってんの?
あんたもちゃんと喋ってたよね?
あんたも全然急ぐ素振り見せてなかったよね?

あれ?おかしいな?俺の思い込み?

「あんた、ちゃんと反省しなさいよ。」

しかし、俺のそんな心境などいざ知らず、レイネルは鋭い声音を向ける。
まるで自分のした事を気にも留めないかとでも言うように。

この女!しらばっくれる気か!
自分の罪を俺に擦りつけようとしてやがる。

そうはいかねえ。俺だってプライドってもんがあるんだ。事実を言いふらしてやらぁ。

「おいっ。俺は…」

「にゃはは…、いいのだ。レイネル。」

レイネルの言葉に対して抗弁を垂れようとしたところ、それにかぶさるようにコラルが一言小さく告げた。

その言葉にはもうプンスカした心はないと感じられた声音だ。
涙声だったけれど、先ほどのような怒っているような鋭さは無いようであり、コラルは俯いていた顔を上げてレイネルに告げる。

「わちは、もう大丈夫だニャ。レイネル。お兄さんを責めるんじゃないんだニャ。」

「コラル…先生。……………………っ⁈」

コラルの発言。それに応じたレイネル。
と、思ったらいきなり彼女は口を手で押さえコラルから顔を背けた。

「?」

レイネルの一瞬の素振り。
なんか一瞬、「うっ」って小さく唸ったような気がしたけど。

ただ立ったまま見ていた俺にはよくわからなかった。

どうしたの、レイネルさん?

お?

すると、そんな訝しげな表情をしている俺に対しコラルはくるりと顔を向き、一言告げた。

「お兄さんも一緒についていってくれるかニャア。わちはそれで満足だなー。」

「そうか、…………………っ⁈」

コラルの振り向き様の発言。それに応じたとともに俺は口を手で押さえコラルから顔を背けた。

コラルは涙目だった。目元が赤くなっていた。
しかし、こちらを見上げる面持ちは笑みを浮かべており、ぐすんと鼻をすする仕草は子供特有の愛しさがあった。
上目使い、涙目、かつ恥じらいプラス笑みのコラボレーション。
それを形容すべき言葉が見つからない。見つからないがあえて言うのならば、

それは……………天使だ。

圧倒的愛愛しさとの会合。一瞬の世界の変容。
あまりの衝撃的な出会いに俺は言葉が出てこない。

いけない!可愛い!食べちゃいたい!

それはダメだ!俺の馬鹿野郎!

理性崩壊とモラルの狭間に立たされながら、俺は一瞬、猫耳幼女を薄目でぼんやりと見る。(理性が崩壊しちゃうからね!)

涙目を浮かべながら幼女は不安そうな様子でこちらを見つめているようだ。
俺の返答待ちのご様子。

駄目だ、この子の要求に応じないなんて俺は人として終わっている。

俺は口を手で押さえながらくぐもり声でなんとか話す。

「ぐうっ、行くよ。お兄さんが、ちゃんと一緒についていくよ。ごめんね。さっきは一人だけ行かしちゃって。」

「本当かにゃっ。もう、一人にはしない?」

「しませんよ。コラル先生。私はあなたをもう独りにはしません。ずっと近くにいます。」

ややくぐもった声音で発せられる言葉。
口元を押さえながらチラリとレイネルを見ると、どうやら俺と同じく口元に手を押さえていた。

はうあっ⁈

レイネルの方を向くと同時に視界に猫耳の天使が映り込む。コラルは未だに涙目でこちらを伺っていた。

アカン‼︎直視できないっ!
なにあの子⁈可愛すぎない⁈
俺、別にロリコンじゃないのに!
あの泣き顔はどんな人間でも屈してしまうよ!

「それなら…にゃははー!いいんだなー。お兄さんとレイネルはわちと一緒に行くのだー!」

声音に元気が戻り、手を挙げながら進んでいくコラル。
うん、あの子の笑顔は世界の平和だ。

俺とレイネルはもちろんコラルについて行く。

ああ、俺はなんてことをしてしまったのだろう。
あの子を泣かせるなんてそれだけでもう大罪じゃないか。
ああ、神様数々の暴言苦言をお許しください。

幼女の笑顔に学び、幼女の泣き顔から自分の愚かさを知った。
自分の中にある恨みやら憎悪やら、そんな感情など俺には必要ない。
あの幼女が幸せならば俺はそれで十分だ。

「レイネルさん、俺、一つだけ決めたことがあるよ。」

俺は澄んだ顔で横にいる衛兵女性に告げる。
レイネルも特段嫌な顔はせず、素直に俺の発言を聞き入れた。

「何よ。言ってみなさい。」

「あの子には涙を流させない。」

断固たる決意の表れ。
いきなりの発言であったが、しかしレイネルは俺の言葉に否定的な意は示さない。
むしろ、「フッ」と笑みを浮かべると、

「奇遇ね。私も一つだけ決めたことがあるわ。」

「…………」

「あの子には常に笑顔でいてもらうわ」

その時、初めて俺とレイネルの意見が合致した。

やはり世界には共通の認識があるのだ。
可愛いは正義であると。平和をもたらす象徴であると。

コラル先生万歳。















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...