異世界転生した俺はまったりスローライフを送りたいのだが案外修羅場だらけであり

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14.大いなる獣の威力

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「国の中でも…群を抜いて…治癒魔法の使い手?」

疑心さを持ちながらレイネルの告げた言葉を確認がてらに復唱する。

容易には信じがたい事実なだけに俺はまだ真に受けられない。

「そ。」

しかし、レイネルは何事もないかのようにただ短く肯定した。

俺はレイネルに驚きの表情を向けながら、歩く猫耳幼女に指を差す。

「あの女の子が?」

「そうよ。あなたの指差してるあの子が。」

「あんな猫耳幼女なだけの要素で十分なあの子が?」

「そ。」

「…………。治癒魔法、あの子できるの?」

「出来るなんてものじゃないわ。死にかけの兵士でも全盛期の状態まで回復させるほどの力を持ってるわよ。」

「…なにそれ。…ヤバすぎ。」

「まあ、私はそれ見たことないけど。噂で知ったし。」

「噂かよ…」

「でも、実際すごいわよ。骨折ったりしてもあの子がいれば、一瞬で治るわ。」

「…なにそれ。噂?」

「いや、これは噂じゃない。だって私が実際に腕折って治療されたし。」

「あの子はRPGのベッドかな?」

とりあえず、ある程度あの猫耳幼女のキャラクター性を聞いたあと、俺はただ微笑する。
レイネルが「あーるぴーじー?」と、不思議そうに首を傾げていたがそれはまあ置いといて。
とにかく、あの猫耳幼女がとんでもない魔法の使い手だということがわかった。

さっきの思念魔法だか幻影魔法だかを余裕で使うあたり力量が計りしれてくる。
それも二つ同時発動させるという圧倒的強者感。

治癒魔法に関しては国の中でもトップクラスらしいし。しかも、今はまだ9歳らしいし。
なにあの猫耳幼女、スペックが高すぎる。

あんな笑いながらニャーニャー言っているような幼女がねぇ。さすが異世界ファンタジー。
俺の固定観念をどんどん覆してくるなあ。

「あんなちびっ子でも世の中は認めてくれる世界か…」

「なーにがちびっ子だニャー!」

目を瞑りながら自分なりにふむふむと得心していると、真下から高い声が聞こえてきた。
目線を下に向けると、先を歩いていった猫耳コラルが頬をぷっくら膨らませてこちらを見上げている。

「ついてきてって言ったのになんでついてきてないニャ!一人で鼻歌して歩いていることに気づいて恥ずかしかったニャ!」

腕を振り上げながらプンスカした表情をしている猫耳コラル。
鼻息をフーンと鳴らしては可愛らしく口元を尖らしていた。

うん、多分、怒っているんだろうけど、全然怖くない。

「あ、ごめん。先に歩いていったのは知ってたけど、なんか話しちゃってて。」

「わちは恥ずかしかったニャ!めちゃくちゃ笑いながら後ろに話しかけちゃってたニャ!誰もいないのに話しかけちゃってたニャ!」

顔をしわくちゃにしながら地団駄を踏む猫耳幼女。

言いながら自分の恥ずかしい行為を思い出してしまったのか、コラルはちょっとうる目になっていた。

あぁ、それは、うん。恥ずかしいわな。よくわかるよ。
俺にもその経験あるもの。

「はあ…。なにあんた、女の子泣かしてんのよ。」

ため息を吐くとともにそう告げるのは後ろにいたレイネルだ。

え?俺が悪いの?

「レイネルゥ…」

目元を潤わせながらヨタヨタとコラルは俺の横を通っていき、レイネルの元に縋るように歩いていく。

それを見るやレイネルはしゃがみ込み、パァッと腕を広げると、

「はいはい。コラル先生は何にも悪くないですよー。悪いのはあそこの無職でーす。」

「うぅ、レイネル、わちは一緒に歩いていると思ってたのに。」

「はーい。大丈夫、大丈夫。ちょっと、あの無職から聞かれることがあってですねえ。」

「急いでくれてもよかったのにニャァ。」

「ごめんなさい。コラル先生。あの無職の質問がしつこくてですねえ。」

「次はちゃんとついてきてくれる、か?」

「はーい。一緒に喋りながら行きましょう。」

優しく言葉をかけながら俯いているコラルの頭を撫でるレイネル。子をあやすようなその様子は見るだけならば優しいお姉さんだ。
コラルの方もちょっと泣き止んでいるようである。

うん、別にさ、いい光景なんだけど、ちょっと言葉に気をつけようかレイネルさん?

無職って言うんじゃねえよ。いや、それはまだいいよ。

なんで俺だけ悪いみたいな扱いになってんの?
あんたもちゃんと喋ってたよね?
あんたも全然急ぐ素振り見せてなかったよね?

あれ?おかしいな?俺の思い込み?

「あんた、ちゃんと反省しなさいよ。」

しかし、俺のそんな心境などいざ知らず、レイネルは鋭い声音を向ける。
まるで自分のした事を気にも留めないかとでも言うように。

この女!しらばっくれる気か!
自分の罪を俺に擦りつけようとしてやがる。

そうはいかねえ。俺だってプライドってもんがあるんだ。事実を言いふらしてやらぁ。

「おいっ。俺は…」

「にゃはは…、いいのだ。レイネル。」

レイネルの言葉に対して抗弁を垂れようとしたところ、それにかぶさるようにコラルが一言小さく告げた。

その言葉にはもうプンスカした心はないと感じられた声音だ。
涙声だったけれど、先ほどのような怒っているような鋭さは無いようであり、コラルは俯いていた顔を上げてレイネルに告げる。

「わちは、もう大丈夫だニャ。レイネル。お兄さんを責めるんじゃないんだニャ。」

「コラル…先生。……………………っ⁈」

コラルの発言。それに応じたレイネル。
と、思ったらいきなり彼女は口を手で押さえコラルから顔を背けた。

「?」

レイネルの一瞬の素振り。
なんか一瞬、「うっ」って小さく唸ったような気がしたけど。

ただ立ったまま見ていた俺にはよくわからなかった。

どうしたの、レイネルさん?

お?

すると、そんな訝しげな表情をしている俺に対しコラルはくるりと顔を向き、一言告げた。

「お兄さんも一緒についていってくれるかニャア。わちはそれで満足だなー。」

「そうか、…………………っ⁈」

コラルの振り向き様の発言。それに応じたとともに俺は口を手で押さえコラルから顔を背けた。

コラルは涙目だった。目元が赤くなっていた。
しかし、こちらを見上げる面持ちは笑みを浮かべており、ぐすんと鼻をすする仕草は子供特有の愛しさがあった。
上目使い、涙目、かつ恥じらいプラス笑みのコラボレーション。
それを形容すべき言葉が見つからない。見つからないがあえて言うのならば、

それは……………天使だ。

圧倒的愛愛しさとの会合。一瞬の世界の変容。
あまりの衝撃的な出会いに俺は言葉が出てこない。

いけない!可愛い!食べちゃいたい!

それはダメだ!俺の馬鹿野郎!

理性崩壊とモラルの狭間に立たされながら、俺は一瞬、猫耳幼女を薄目でぼんやりと見る。(理性が崩壊しちゃうからね!)

涙目を浮かべながら幼女は不安そうな様子でこちらを見つめているようだ。
俺の返答待ちのご様子。

駄目だ、この子の要求に応じないなんて俺は人として終わっている。

俺は口を手で押さえながらくぐもり声でなんとか話す。

「ぐうっ、行くよ。お兄さんが、ちゃんと一緒についていくよ。ごめんね。さっきは一人だけ行かしちゃって。」

「本当かにゃっ。もう、一人にはしない?」

「しませんよ。コラル先生。私はあなたをもう独りにはしません。ずっと近くにいます。」

ややくぐもった声音で発せられる言葉。
口元を押さえながらチラリとレイネルを見ると、どうやら俺と同じく口元に手を押さえていた。

はうあっ⁈

レイネルの方を向くと同時に視界に猫耳の天使が映り込む。コラルは未だに涙目でこちらを伺っていた。

アカン‼︎直視できないっ!
なにあの子⁈可愛すぎない⁈
俺、別にロリコンじゃないのに!
あの泣き顔はどんな人間でも屈してしまうよ!

「それなら…にゃははー!いいんだなー。お兄さんとレイネルはわちと一緒に行くのだー!」

声音に元気が戻り、手を挙げながら進んでいくコラル。
うん、あの子の笑顔は世界の平和だ。

俺とレイネルはもちろんコラルについて行く。

ああ、俺はなんてことをしてしまったのだろう。
あの子を泣かせるなんてそれだけでもう大罪じゃないか。
ああ、神様数々の暴言苦言をお許しください。

幼女の笑顔に学び、幼女の泣き顔から自分の愚かさを知った。
自分の中にある恨みやら憎悪やら、そんな感情など俺には必要ない。
あの幼女が幸せならば俺はそれで十分だ。

「レイネルさん、俺、一つだけ決めたことがあるよ。」

俺は澄んだ顔で横にいる衛兵女性に告げる。
レイネルも特段嫌な顔はせず、素直に俺の発言を聞き入れた。

「何よ。言ってみなさい。」

「あの子には涙を流させない。」

断固たる決意の表れ。
いきなりの発言であったが、しかしレイネルは俺の言葉に否定的な意は示さない。
むしろ、「フッ」と笑みを浮かべると、

「奇遇ね。私も一つだけ決めたことがあるわ。」

「…………」

「あの子には常に笑顔でいてもらうわ」

その時、初めて俺とレイネルの意見が合致した。

やはり世界には共通の認識があるのだ。
可愛いは正義であると。平和をもたらす象徴であると。

コラル先生万歳。















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