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II 全てはこの日から-I
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――現時刻は18時。
ティーカップに注がれた紅茶の香りを楽しみ、そっと口に含んだ後、窓際のテーブルに突っ伏して転寝をする幼馴染――セドリック・アンドールに目を向ける。
今日は、彼の仕事の依頼者であるラルフ・スタインフェルドからパーティーへの同行を命じられていた筈だ。約束時間は、確か18時。
約束の時間を迎えてしまった今、彼を叩き起こした所で「何故もっと早く起こさなかったのだ」と理不尽に怒られるのだろう。どの道怒られるのなら、起こさずに怒られた方が幾分マシだ。
それに、約束の相手は貴族の男。約束の時間を大幅に遅れてくるに違いない。抑々今日の約束ですら、覚えていないかもしれない。貴族なんて、そんなものだ。
再び紅茶を啜り、膝の上に置いていたお気に入りの本に視線を落とす。
「――今、何時だ」
ふと耳に入ったのは、目を覚ましたのであろうセドリックの独言。
「もう、18時だけど」
そう返事をしてみると、彼の視線が壁時計に止まった。そして暫く時計を見つめた後、彼が勢いよくソファから立ち上がり、洗面所へと駆け込む。
「今日用事あるって言っただろ! 時間分かってたなら起こせよ!」
洗面所から怒鳴り声が聞こえるが、今の私にとってはそんなもの知った事では無い。抑々私は、今日のパーティーへの同行は反対していたのだから。
今日は、私の大切な友人であるマリア・ウィルソンの娘、ノエルがスタインフェルド家に引き渡される日だった。基本子供の引き渡しには、依頼者当人とブローカーが立ち会う事が必須とされている。
しかし、何を思ったのか依頼者当人であるラルフ・スタインフェルドは、引き渡しを妻であるローズ・スタインフェルドに押し付け、名家エインズワース家で開催されるパーティーに参加すると言い出したのだ。そして有ろう事か、ブローカーであるセドリックにそのパーティーへの同行を命じた。
セドリックは何度も、引き渡し日の変更を提案していた。だが、ラルフ・スタインフェルドがその提案に応じる事は無かった。
結果、今回の取引のみ特例で、当人不在の中子供の引き渡しが行われる事になったのだ。
決まりを破る事は、トラブルを招く原因となる。
今回の特例を、私は酷く反対した。それこそ、朝から晩まで彼に考え直すよう訴え続けた。しかし彼は決まって、「特例は当人不在だけでは無い」と言った。
彼の言っている事に、間違いはない。
抑々彼の仕事には“知人や友人からの依頼は受けない”というルールがあるのだ。それを私が必死に頼み込み、特例を認めさせた。マリアとセドリックに接点は無かったが、私の友人である事には変わりはない。
故に、私に「決まりを破る事は、トラブルを招く原因になる」だなんて言う資格など最初から無かった。
それでも、私は大切なマリアの取引をぞんざいに扱って欲しくは無かったのだ。しかしそんな私の願いは、悲しくも無になった。
ティーカップに注がれた紅茶の香りを楽しみ、そっと口に含んだ後、窓際のテーブルに突っ伏して転寝をする幼馴染――セドリック・アンドールに目を向ける。
今日は、彼の仕事の依頼者であるラルフ・スタインフェルドからパーティーへの同行を命じられていた筈だ。約束時間は、確か18時。
約束の時間を迎えてしまった今、彼を叩き起こした所で「何故もっと早く起こさなかったのだ」と理不尽に怒られるのだろう。どの道怒られるのなら、起こさずに怒られた方が幾分マシだ。
それに、約束の相手は貴族の男。約束の時間を大幅に遅れてくるに違いない。抑々今日の約束ですら、覚えていないかもしれない。貴族なんて、そんなものだ。
再び紅茶を啜り、膝の上に置いていたお気に入りの本に視線を落とす。
「――今、何時だ」
ふと耳に入ったのは、目を覚ましたのであろうセドリックの独言。
「もう、18時だけど」
そう返事をしてみると、彼の視線が壁時計に止まった。そして暫く時計を見つめた後、彼が勢いよくソファから立ち上がり、洗面所へと駆け込む。
「今日用事あるって言っただろ! 時間分かってたなら起こせよ!」
洗面所から怒鳴り声が聞こえるが、今の私にとってはそんなもの知った事では無い。抑々私は、今日のパーティーへの同行は反対していたのだから。
今日は、私の大切な友人であるマリア・ウィルソンの娘、ノエルがスタインフェルド家に引き渡される日だった。基本子供の引き渡しには、依頼者当人とブローカーが立ち会う事が必須とされている。
しかし、何を思ったのか依頼者当人であるラルフ・スタインフェルドは、引き渡しを妻であるローズ・スタインフェルドに押し付け、名家エインズワース家で開催されるパーティーに参加すると言い出したのだ。そして有ろう事か、ブローカーであるセドリックにそのパーティーへの同行を命じた。
セドリックは何度も、引き渡し日の変更を提案していた。だが、ラルフ・スタインフェルドがその提案に応じる事は無かった。
結果、今回の取引のみ特例で、当人不在の中子供の引き渡しが行われる事になったのだ。
決まりを破る事は、トラブルを招く原因となる。
今回の特例を、私は酷く反対した。それこそ、朝から晩まで彼に考え直すよう訴え続けた。しかし彼は決まって、「特例は当人不在だけでは無い」と言った。
彼の言っている事に、間違いはない。
抑々彼の仕事には“知人や友人からの依頼は受けない”というルールがあるのだ。それを私が必死に頼み込み、特例を認めさせた。マリアとセドリックに接点は無かったが、私の友人である事には変わりはない。
故に、私に「決まりを破る事は、トラブルを招く原因になる」だなんて言う資格など最初から無かった。
それでも、私は大切なマリアの取引をぞんざいに扱って欲しくは無かったのだ。しかしそんな私の願いは、悲しくも無になった。
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