10 / 222
IV 最期の微笑-V
しおりを挟む
その後彼と軽い会話を交わし、いつまでもマリアの事を引き摺っていても仕方が無いと気持ちを無理矢理入れ替え踵を返した。背後にセドリックの気配を感じながらも、客室に入り黙ってトレーに空のティーカップを乗せていく。
「――なぁ」
今まで黙っていた彼が声を上げ、片付ける手を一瞬だけ止めた。背後の彼に意識を向ければ、自然とその先の言葉が見えてくる。
きっと、私の能力について聞きたいのだろう。
「人の感情ってどんな風に見えんの?」
案の定、と言うべきか。予想通りの言葉に、思わず苦笑いが漏れた。
「……うぅん、見えるって感じじゃないんだよね。“何考えてるか分かる”と言っても、その人が考えてる事が文字で見えたり声で聞こえる訳じゃないし。表現するなら、耳鳴りや温度……あとはその場の空気感とかかな。人それぞれ微妙に違うそれを感じ取ってるってだけ」
自分自身ですら、この能力のメカニズムを理解する事は出来ない。
ただ瞬時に感じた匂い、温度、欠片の様な記憶に、その人物の心を読み取る事が出来るだけだ。
語言化出来るものなら、もうとっくの昔にしている。
「それは……ただの勘、ではないのか」
「まぁ、勘って言うのが一番近いかもね。私だって分かんないよ。何となく、『この人今嘘ついてるな』とか、『今家庭の事で悩んでるな』とか『隠し事してるな』って分かっちゃうんだもん。でも、その嘘の内容とか悩み事、隠し事が分かる訳じゃないんだよ。だから、はっきりと知る為にはやっぱり会話しなくちゃ駄目」
彼から感じる、女性の影。彼から零れ落ちる様に“視えた”のは、昨晩の記憶。誰かは分からないが、彼は若い女性を1人拾った様だ。昨晩彼はエインズワース家のパーティーに参加していた。そう考えると、拾って来たのは若い令嬢だろう。
幼馴染を超えて、弟の様な存在である彼の力になってやりたいのは山々だ。しかし、彼はその女性の事を私に丸投げしようとしている様に見える。
「言っとくけど、私の“これ”使いたいとか言われても嫌だから」
故に、少々突き放した様な言葉を口にした。
「まだ何も言ってないだろ」
すぐ様反論されるが、彼は周りの人間の中でも特に分かり易い性格をしている。恐らく、他人に興味が無い故に自身を隠すという事もしないのだろう。その為か、彼からは特別色々な事を読み取ることが出来た。
「どうせ、まだ私に言わなきゃいけない事とかあるんでしょ? 例えば、昨日拾った可愛い可愛い女の子の事とか」
そう言って彼を一瞥すると、彼がやや複雑な表情を浮べた。彼の事ならなんでも分かる。きっと、今私に感じているのは若干の“恐怖”だ。
マリアの事を考えるのはもう辞めよう。これ以上考えた所でキリが無い。
それよりも今は、彼が拾って来た令嬢の方が問題だろう。彼がソファに腰掛けたのを見て、自身も向かいのソファに続いた。
「――なぁ」
今まで黙っていた彼が声を上げ、片付ける手を一瞬だけ止めた。背後の彼に意識を向ければ、自然とその先の言葉が見えてくる。
きっと、私の能力について聞きたいのだろう。
「人の感情ってどんな風に見えんの?」
案の定、と言うべきか。予想通りの言葉に、思わず苦笑いが漏れた。
「……うぅん、見えるって感じじゃないんだよね。“何考えてるか分かる”と言っても、その人が考えてる事が文字で見えたり声で聞こえる訳じゃないし。表現するなら、耳鳴りや温度……あとはその場の空気感とかかな。人それぞれ微妙に違うそれを感じ取ってるってだけ」
自分自身ですら、この能力のメカニズムを理解する事は出来ない。
ただ瞬時に感じた匂い、温度、欠片の様な記憶に、その人物の心を読み取る事が出来るだけだ。
語言化出来るものなら、もうとっくの昔にしている。
「それは……ただの勘、ではないのか」
「まぁ、勘って言うのが一番近いかもね。私だって分かんないよ。何となく、『この人今嘘ついてるな』とか、『今家庭の事で悩んでるな』とか『隠し事してるな』って分かっちゃうんだもん。でも、その嘘の内容とか悩み事、隠し事が分かる訳じゃないんだよ。だから、はっきりと知る為にはやっぱり会話しなくちゃ駄目」
彼から感じる、女性の影。彼から零れ落ちる様に“視えた”のは、昨晩の記憶。誰かは分からないが、彼は若い女性を1人拾った様だ。昨晩彼はエインズワース家のパーティーに参加していた。そう考えると、拾って来たのは若い令嬢だろう。
幼馴染を超えて、弟の様な存在である彼の力になってやりたいのは山々だ。しかし、彼はその女性の事を私に丸投げしようとしている様に見える。
「言っとくけど、私の“これ”使いたいとか言われても嫌だから」
故に、少々突き放した様な言葉を口にした。
「まだ何も言ってないだろ」
すぐ様反論されるが、彼は周りの人間の中でも特に分かり易い性格をしている。恐らく、他人に興味が無い故に自身を隠すという事もしないのだろう。その為か、彼からは特別色々な事を読み取ることが出来た。
「どうせ、まだ私に言わなきゃいけない事とかあるんでしょ? 例えば、昨日拾った可愛い可愛い女の子の事とか」
そう言って彼を一瞥すると、彼がやや複雑な表情を浮べた。彼の事ならなんでも分かる。きっと、今私に感じているのは若干の“恐怖”だ。
マリアの事を考えるのはもう辞めよう。これ以上考えた所でキリが無い。
それよりも今は、彼が拾って来た令嬢の方が問題だろう。彼がソファに腰掛けたのを見て、自身も向かいのソファに続いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる