DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

文字の大きさ
18 / 222

VII 追憶-願い- -II

しおりを挟む

 それから、約1時間と10分程かけてマリアの住む街へとやって来た。子供故に疲労はそれ程感じないが、喉はカラカラに乾いている。何処かで水を調達出来ないか、と思いながら街を歩いていると、マリアの姿を遠目に見つけた。
 マリアは、昨日と同じベンチに座っていた。相変わらず頭からスカーフをかぶり、此処からでは顔が良く見えない。

「マリアちゃん」

 彼女に近付き声を掛けると、彼女の肩がびくりと小さく震えた。何か物思いに耽っていた様だ。彼女が慌てた様子で、スカーフが頭から落ちない様押さえながら此方に顔を向けた。

「あら、マーシャ。来てくれたのね」

 顔の痣は、昨日よりも少し増えている様に思える。顔色も、悪いままだ。
 しかし私が居るからか、それとも今日は普段より天気が良いからか、彼女の心は昨日よりほんの少しだけ晴れている様に感じた。相変わらず彼女は心を病んでいる様だが、それでも昨日程では無く安堵に胸を撫で下ろした。

 ――私は天使なのだから、ちゃんと救わないと。
 そう自身に言い聞かせ、彼女の隣に腰を掛けた。

「マーシャ、今日は少し私の話をしてもいいかしら?」

 彼女の言葉に、昨日は私への質問攻めだった事を思い出す。
 
「いいよ。どんな話をしてくれるのか楽しみだな」

 笑顔で頷き、彼女に話をする様促す。
 するとマリアが嬉しそうにぱっと顔を輝かせ、えっと、あのね、等と言い淀みながらも話し始めた。
 まるで、小さな子供の様だ。そう思うが、彼女はまだ20代前後で幼さの残る顔をしている。それ程の年齢であれば、子供っぽい一面があるのも当然か、と心の内で納得した。

「娘の腕と私の胸に、お揃いのタトゥーを彫って貰ったの。それが安定して、やっと見れる様になったのよ」

「タトゥー?」

 タトゥーと言えば、王族や貴族の人間がファッションアイテムの1つとして身体の一部に思い思いの絵柄を彫っている印象がある。美しい絵柄を求めて、わざわざ国外へと足を運ぶ者も居るのだとか。
 最近では中流階級の人間にも支持され始めていると聞いたが、思い返してみれば彼女は中流階級の人間の1人だ。まだこの目では見た事のない物に好奇心が沸き上がり、思わず「見て見たいな」と言葉を漏らした。
 そんな私の言葉に、マリアがふふ、と嬉しそうに微笑み、頭から被っていたストールを肩にずらした。

「此処は人通りが少ないから、少しだけなら大丈夫かしら」

 余程、そのタトゥーを気に入っているのだろう。誰かに見せたかったのかもしれない。
 私の言葉に戸惑う事無く、胸元に結んでいたリボンを手早く解く。
 そしてブラウスのボタンを3つ、4つと外していき、胸元をはだけさせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...