DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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XVII ピアス-II

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「別に、役立たずだなんて思ってない」

 彼から小包を受け取り、近くの椅子に腰掛ける。此処は、私の定位置である場所だ。
 エリオット先生の居ない今、昔と同じ様に此処に座っていいか分からなかったが、マクファーデンは特別それを責める事はしなかった。

 息を吐き、震える手でそっと小包の包装紙を剥がす。
 最後に、彼女から贈られる物。そう考えるだけで、自然と呼吸も手も震えた。
 包装紙が剥がれ顔を出したのは、随分と傷み古びた黒い小箱。その小箱に添えられる様に、見て直ぐに上質だと分かるメッセージカードが付けられていた。
 古びた小箱に、上質なカード。随分とアンバランスだ。そんな事を思いながら、メッセージカードに目を走らせる。

――

 Dear Marsha
《親愛なるマーシャへ》

 This is something I was thinking of giving to you someday.
《これは、いつか貴女に贈ろうと思っていた物》

 A memorable thing that I wore when I first stood on the stage.
《初めて舞台に立った時身に着けた思い出の物です》

 Garnet earrings that look a lot like your eye color.
《貴女の瞳の色によく似た、ガーネットのピアス》

 Please don't forget me.
《どうか私を忘れないで》

 good bye.
《さようなら》

――

 彼女のメッセージに、徐々に視界が滲んでいく。そして遂にカードの文字が見えなくなり、瞬きをしたと同時にぽたりと雫がテーブルに落ちた。

「マーシャ」

 マクファーデンが、何か言おうとしたのか私の名を呼ぶ。しかし、何も言う事無く私の頭にぽんと手を置いた。

「何、慰めとか要らないから」

 頭に置かれた手を振り払い、服の袖で乱暴に目元を拭う。

「慰め……の、つもりでは無かったんですが……」

 困惑した声が、頭上から聞こえる。
 彼は私の主治医の筈だ。エリオット先生も、私をただの患者としてしか見ていなかった。彼も、きっとそうなのだろう。
 なのに、彼の接し方は患者へのそれとは違っている。私を特別視しているのか、それとも純粋に、患者との距離感が普通では無いのか。彼の心の内が読めないだけに、それはどれだけ考えてみても分からなかった。

 いつまでも泣いていても仕方が無いと、息を吐き呼吸を整える。そして古びた小箱に向かい、そっと蓋に手を掛けた。
 蓋を開いた先、丁寧に仕舞われていたのはカードに書かれていた通りのガーネットのピアス。涙の様な形をしたティアドロップのガーネットは、光を反射しキラキラと輝いている。普段装飾品を扱っている為宝石は見慣れているが、その中でもこのガーネットは特別高価な物の様に感じられた。
 金属部分はやや錆びれているが、定期的に手入れをして大切に保管していたのだろう。傷や欠けも無く、見惚れてしまう程に美しい。
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