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XXIII 運命が変わる時-II

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「……エルが、欲しがってた、ペンダントがあってな」

「姐さんの店で売られてるやつ? 姐さん、エルちゃんと仲良いみたいだもんね」

「……らしいな。ライリーから、エルが地味なペンダントを欲しがってるって聞いた」

「それで?」

 その先の言葉を促すと、彼が再び口を噤んだ。
 私の肩を押し退け距離を取り、のろのろとソファの方へと向かっていく。

「……その、ペンダントは……まぁ、所謂縁結びの様な、物らしい」

「……」

「……正確に言えば、プロポーズに使う物、らしいが」

 何処かたどたどしく、纏まっていない彼の言葉。しかし、私だって馬鹿では無い。それだけ聞けば、彼が街で、ライリーの店で何をしてきたか位分かる。

「買ったんだ! そのペンダント!」

 喜悦の情が沸き上がり、叫ぶ様に声を上げる。すると彼が、「急に叫ぶな」と嘆き顔を歪めた。

「プロポーズ! するんでしょ!? エルちゃんに!」

 私の言葉に、彼がやや不満げではありながらも首肯する。
 彼が、この短時間でこれ程大きく心変わりをするとは思わなかった。一体ライリーは、彼に何を言ったのだろう。
 少し前に、ライリーと話をした時の事を思い出す。彼女はあの時、「流石に、あの2人だけでは無理だろう。周りが手助けしてやらんと」と言った。恐らくライリーは、彼の心を動かす様な事を言ったのだろう。――いや、彼女の事だから、有無を言わさずペンダントを買わせた可能性もある。
 しかし、どの道彼がエルに想いを告げると決めた事には変わりない。

「へぇ、ふぅん、そっか」

 にやにやと下劣な笑みを隠さず、顔全面に浮かべながら、彼と向かい合う様にソファに座る。

「そんで? いつプロポーズすんの?」

「……考えてない」

「うっそだぁ! 絶対考えてたでしょ! でも、でもやっと、2人は結ばれるんだなぁ……!」

 まるで自分の事の様にそれが嬉しくて、溢れて止まらない笑みに、両手で頬を覆う。
 自身の姉弟きょうだい同然であるセドリックがエルを娶れば、エルは友人では無く妹の様な存在になる。それが何だか擽ったくなる様に嬉しくて、えへへ、と砕けた笑みを零すと透かさず「気持ち悪い」と鋭い言葉が飛んできた。

「結ばれる、とか簡単に言うな。どうなるか分かんねぇだろ」

「何言ってんの! 上手くいくから! 絶対!」

「なんでどいつもこいつも確信的なんだよ、未来見てきた訳でもねぇ癖に」

「いや、未来見てきた様なものだって! 上手くいくの! 絶対! 絶対ったら絶対!」

 私の言葉に、これ以上反論しても無駄だとでも思ったのか彼が口を噤む。そして一頻り私を睨みつけた後、諦めた様に顔を背け溜息を吐いた。
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