DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

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XXIV 心の変化-I

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 ――診療所のカーテンの奥。定位置に座り、鼻歌を歌いながらそれに合わせてリズムを刻む様にタンタンと指先でテーブルを叩く。
 セドリックから、エルと結婚する事になったと聞いたのは2日前の事。セドリックがエルにプロポーズをした、翌日の夜だ。
 エルの返事は分かり切っていたが、やはり上手くいった事を聞くと嬉しくなってしまうものである。それを聞いた時、私は年甲斐もなく飛び跳ねて喜び、そして思わずセドリックに抱き着いてしまった。当然と言うべきか、彼にはすぐさま突き飛ばされてしまったが。

 セドリックは、決して多くを語らなかった。しかし、その心の内は喜びで満ち溢れていた。
 生に執着が無く、嬉しみも悲しみも無かったセドリックが、エルと夫婦になれる事を心から喜んでいる。そんな姿を見ていると、涙が出る程に嬉しかった。

「――随分とご機嫌ですね」

 不意に投げかけられた言葉に、テーブルを叩く指を止める。
 デスクに視線を遣ると、やや眠そうな顔をしたマクファーデンが此方に顔を向けていた。

「セディが――幼馴染が、結婚する事になったの。ずっと好きだった子と結ばれて、それで」

「そうでしたか、それはおめでたい話ですね」

「おめでたい、なんてもんじゃないよ。私、ずっと傍で2人の事見てきたから、2人の想い知ってたから、だから本当に、本当に嬉しくて……! それにね、セディは弟みたいな存在なの。だから、そんな弟が結婚したら、結婚相手は私の妹になるでしょ? なんか、家族が増えるみたいで嬉しくって、こう、温かい気持ちになるっていうか、擽ったい気持ちになるっていうか、良く分かんないけど……」

 そこで、はたと気付く。私はマクファーデン相手に、何を話しているのだろう。
 気が付けば頬も緩んでいて、だらしない表情を浮べている事が自分でも分かった。

「ごめん、話し過ぎ――……」

 顔を引き締め、再度マクファーデンに視線を向ける。しかし、彼の顔を見て言葉が止まった。
 いつも無表情で感情の読めない彼が、珍しくも、私に微笑みを向けていたからだ。
 眼鏡の奥の、バイオレットの瞳は優しく細められ、口元は弧を描く様に緩んでいる。

「貴女のその様な笑顔は、初めて見ました。余程、その幼馴染の方とお相手の女性を大切にしていらっしゃるのですね」

 普段より低く、優しい声音。
 優しい声なら、昔から聞いた事があった。エリオット先生だって、いつもいつも私に優しい声で語り掛けてくれていた。
 そう思うも、今のマクファーデンとエリオット先生ではまるで違う。しかし、具体的にどこが違うかと問われれば、上手く答えられない。
 だが、2人が全く違うという事だけは明瞭だった。
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