DachuRa 3rd story -天使と讃えられたのは、悲劇に堕ちた哀れな教唆犯-

白城 由紀菜

文字の大きさ
115 / 222

XXXIV 様々な思い-VII

しおりを挟む
 主犯格がエルを狙っていると分かった今、セドリックが取るであろう行動には察しがつく。体調が優れないのを良い事に、エルを自宅に監禁でもしているのでは無いだろうか。

「――私は別に、良いんだけどさ。エルちゃんと話すの好きだし、何よりエルちゃんは大切な友達だし。でも」

 監禁方法までは分からないが、ポケットに意識が向いているという事は何処かに鍵を掛けた可能性が最も高い。

「鍵が1つ、足りないんじゃない?」

 鎌を掛ける様な、自身の言葉。確率は五分五分ごぶごぶであったが、セドリックから流れてくる音が僅かに変化したのが分かった。
 焦りや不安を意味する、ぴりぴりとした耳鳴り。どうやら、予感は的中した様だ。

「……“喜怒哀楽の激しさは、その感情と共に実力迄も滅ぼす”」 

 思わず口を衝いて出たのは、昔読んだウィリアム・シェイクスピアの作品の台詞ことば

「……お前らしくない事言うんだな」

 自身の言葉に、彼の心情が乱れる。溢れる不安や焦燥感を、必死に誤魔化している様にも思えた。

「今のはウィリアム・シェイクスピアの言葉。私が昔良く話していたの、覚えてない?」

「何となく、聞き覚えが……。作品は確か――」

 作品を思い出せないのか、セドリックの言葉が止まる。そんな彼に、「ハムレット」と一言述べ頬を緩ませた。

「……間違ってることは分かってる。だけど……、エルを自分じゃない他の誰かに壊されたくないんだ」

「分かってる」

 緩やかに解けていく、彼の緊張感。
 彼はきっと今でも、エルを自宅に閉じ込めておきたいと願っている筈だ。しかしそれは、セドリックの為にもエルの為にもならない。それに、エルを拘束する行為にセドリックが慣れてしまえば、これから先セドリック本人が無意識のうちにエルを拘束する様になってしまうだろう。それだけは、避けなければならない。
 仮にそうなったとしても、エルの性格を考えれば関係が壊れる事は無いと言える。だが、最も危惧しなければならないのは共依存。共依存者は、相手から依存される事に無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そして相手をコントロールし自分の望む行動をとらせる事で、自身の心の平穏を保とうとする。そんな共依存者を待っているのは破滅のみだ。

「自分で自分の首絞めるのは良くないね。エルちゃんなら、別に怖がったりセディを嫌ったりする事は無いと思うけど、こういう行動に慣れちゃったら色々厄介だよ」

 彼が此方に向かって抛った小さな鍵を片手で受け止め、そう告げる。その瞬間、セドリックの心を黒く染める様に不安が広がっていくのを感じた。

「いつか自ら関係を壊してしまうかもしれない、他の誰かに壊される位ならいっそ、自分が彼女を壊してしまおう。って、思った事無くは無いでしょ?」

 彼に憑り憑いた不穏な感情が、徐々に肥大していく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...