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XXXVI 罪の意識-II
しおりを挟む「お、お前……! 昨日の!」
彼が私の顔を見るなり、怯えた表情を見せた。彼が慌てて、扉を閉めようとドアノブを引く。
「待って、今日は話があって来たの」
閉まる前に扉を掴み、自身の出せる力を全て使って扉をこじ開ける。
「お、俺には話なんて無い! ど、どうせ警察に言うとか言って脅すつもりなんだろ!」
彼は抵抗する様に再びドアノブを引くが、彼からは僅かな心の揺らぎを感じた。私と会話をするかどうかを、彼は決めかねている。
つまりそれは、自身の行為を警察に話すか悩んでいる、という事だ。
「大丈夫。脅したりしない。私は貴方を救いに来たの」
「――救い……?」
私の言葉に、彼が漸くドアノブを引く手を緩めた。
「話の内容は、確かに貴方が関わっている事件の事で間違いない。でも、貴方がアルフレッドに無理矢理従わされているのは分かってる。少し、話を聞かせて欲しいだけなの」
「――……」
ウォーレンがドアノブから手を離し、その場に俯いた。
彼から流れてくるのは、圧倒される程の心の闇。その莫大な闇は、1人の人間が抱えられる量では無い。もう、彼は崩壊寸前だ。
「――妹が、帰ってくる前に話を終わらせてほしい」
そう消え入りそうな声で呟いた彼が、扉を開いた。そして数歩後退り、家に入るよう促す。
「分かった。なるべく早く終わらせる」
◇ ◇ ◇
テーブルを挟んで向かい合って座り、俯いたまま顔を上げない彼を尻目に部屋を眺める。通された家の中は、狭いなりに物が丁寧に並べられていて温かみを感じる内装だった。
所々に飾られた生花や外の花壇は彼の趣味なのかとも思ったが、今の彼は酷く心を病んでいて、とても花を愛でる余裕は無さそうだ。それに全て丁寧に手入れがされている為、恐らく彼の言う“妹”の趣味なのだろう。
テーブルの上にも、1輪の薔薇が活けた花瓶が置かれていた。花瓶は意匠の少ない質素なものであるが、薔薇はとても綺麗に花が開いていて買ったばかりのものなのだと見受けられる。
「――それで、聞きたい事って何かな」
ぽつりと呟いた彼は、まだ顔を上げようとしない。
「あまり回りくどい言い方をしても仕方が無いから、はっきり聞くね。貴方はどうしてアルフレッドに従っているの?」
アルフレッドの名前を出した瞬間、彼からじわりと恐怖の感情が滲みだす。しかしそれよりも濃く伝わってくるのは、深い罪の意識。
「何か、特別な理由があるんでしょ?」
更に言葉を続けると、彼が顔を上げた。
「――妹を、守る為だよ」
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