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XLVI 夜-I
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「……前回はあんまり思わなかったけど、よく見たらだいぶ物が無いね」
足を踏み入れた先の二階。此処にはマリアが住んでいた時に何度も訪れていたが、同じ部屋だという事が信じられない程に彼の部屋は殺風景だ。
置かれている家具と言えば、ベッド、テーブル、チェスト、それと医学書が数冊入った空に近い棚が1つ。小窓には、カーテンすら掛けられていない。
「殺風景だと言いたいのでしょうが、男の部屋なんてこんなものですよ」
「あぁ、まぁ、そうかもね」
思い返してみれば、セドリックの家もだいぶ殺風景だった。エルと共に暮らす様になって潤った方だが、当時のセドリックの家とこの部屋は何ら変わりないと言っても過言ではないだろう。彼の言う通り、男性の1人暮らしなどこんなものなのかもしれない。
しかし、住まわせてもらう身でこんな事を言うなんて図々しい事この上ないのは分かっているが、あまりに寂しい部屋だ。せめて明るい色のカーテン位は掛けたい所である。
「荷物は適当な場所に置いておいてもらって構いません。棚も、キッチンも、好きに使って良いですよ」
「……どうも」
言われるがままに荷物をベッド横の床に置き、トランクケースを開く。
考えてみれば、自身の荷物はトランクケース1つに収まってしまう程に少ない。
仮にも女性だというのに、こんなにも荷物が少ないとは。この部屋が殺風景な事よりも問題である。
羞恥心が沸き上がるのを感じながらもネグリジェを引っ張り出し、トランクケースを強めに閉めた。
「先生、私着替えたいんだけど……」
「……? どうぞ」
彼が不思議そうに此方を見つめながら、首を傾げた。脱衣所に案内してくれる気も、背を向けてくれる気も無さそうだ。
「……言わないと分からないかな、私着替えたいの。脱衣所を貸して欲しいんだけど」
「えぇ、僕の前で着替えてくれないんですか?」
「馬鹿なの? 例え恋人同士になろうと夫婦になろうと、私は先生の前で着替えないよ」
「……」
彼が何やら考え込む様な素振りを見せ、そして何かをひらめいたのかポンと手を打った。嫌な予感しかしない。
「僕が着替えをお手伝いしましょう。それで万事解決です」
嫌な予感は、見事的中だ。
100年の恋も冷めそうなその発言に、彼への期待や今迄の印象がガラガラと崩れていき肩を落とす。
「その頭、医者に診せた方が良いんじゃない?」
「何故ですか。僕達は相思相愛なんですから肌を隠す必要は無いでしょう。それに、こう見えて僕医者なんですよ。女性の裸体は見慣れています。恥ずかしがる事はありませんよ」
「自分が医者らしくない発言してるって自覚あったんだ! それに、女性の裸見慣れてるって情報は要らなかったかな」
「まぁ、変態だって罵られてもおかしくない事を言ってるな、という自覚は薄らぼんやりとありますね。あれ? 嫉妬ですか? 可愛らしい所もあるんですね」
「黙って脱衣所まで案内してくれないかなぁ!」
暫くの口論の末、彼が心底納得のいっていない顔で脱衣所まで案内してくれた。
前回入院という体で此処へ来た時は、正直怪我の所為で意識が朦朧としていた事もあり何も考えられなかった。しかし今は、傷ももう安定している。意識もはっきりとしている。
その為、彼の発言が変態的だという事も充分に理解出来た。
足を踏み入れた先の二階。此処にはマリアが住んでいた時に何度も訪れていたが、同じ部屋だという事が信じられない程に彼の部屋は殺風景だ。
置かれている家具と言えば、ベッド、テーブル、チェスト、それと医学書が数冊入った空に近い棚が1つ。小窓には、カーテンすら掛けられていない。
「殺風景だと言いたいのでしょうが、男の部屋なんてこんなものですよ」
「あぁ、まぁ、そうかもね」
思い返してみれば、セドリックの家もだいぶ殺風景だった。エルと共に暮らす様になって潤った方だが、当時のセドリックの家とこの部屋は何ら変わりないと言っても過言ではないだろう。彼の言う通り、男性の1人暮らしなどこんなものなのかもしれない。
しかし、住まわせてもらう身でこんな事を言うなんて図々しい事この上ないのは分かっているが、あまりに寂しい部屋だ。せめて明るい色のカーテン位は掛けたい所である。
「荷物は適当な場所に置いておいてもらって構いません。棚も、キッチンも、好きに使って良いですよ」
「……どうも」
言われるがままに荷物をベッド横の床に置き、トランクケースを開く。
考えてみれば、自身の荷物はトランクケース1つに収まってしまう程に少ない。
仮にも女性だというのに、こんなにも荷物が少ないとは。この部屋が殺風景な事よりも問題である。
羞恥心が沸き上がるのを感じながらもネグリジェを引っ張り出し、トランクケースを強めに閉めた。
「先生、私着替えたいんだけど……」
「……? どうぞ」
彼が不思議そうに此方を見つめながら、首を傾げた。脱衣所に案内してくれる気も、背を向けてくれる気も無さそうだ。
「……言わないと分からないかな、私着替えたいの。脱衣所を貸して欲しいんだけど」
「えぇ、僕の前で着替えてくれないんですか?」
「馬鹿なの? 例え恋人同士になろうと夫婦になろうと、私は先生の前で着替えないよ」
「……」
彼が何やら考え込む様な素振りを見せ、そして何かをひらめいたのかポンと手を打った。嫌な予感しかしない。
「僕が着替えをお手伝いしましょう。それで万事解決です」
嫌な予感は、見事的中だ。
100年の恋も冷めそうなその発言に、彼への期待や今迄の印象がガラガラと崩れていき肩を落とす。
「その頭、医者に診せた方が良いんじゃない?」
「何故ですか。僕達は相思相愛なんですから肌を隠す必要は無いでしょう。それに、こう見えて僕医者なんですよ。女性の裸体は見慣れています。恥ずかしがる事はありませんよ」
「自分が医者らしくない発言してるって自覚あったんだ! それに、女性の裸見慣れてるって情報は要らなかったかな」
「まぁ、変態だって罵られてもおかしくない事を言ってるな、という自覚は薄らぼんやりとありますね。あれ? 嫉妬ですか? 可愛らしい所もあるんですね」
「黙って脱衣所まで案内してくれないかなぁ!」
暫くの口論の末、彼が心底納得のいっていない顔で脱衣所まで案内してくれた。
前回入院という体で此処へ来た時は、正直怪我の所為で意識が朦朧としていた事もあり何も考えられなかった。しかし今は、傷ももう安定している。意識もはっきりとしている。
その為、彼の発言が変態的だという事も充分に理解出来た。
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