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LII 堕落-I
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マクファーデンから首輪を嵌められて、どれ程が経過しただろう。最初の1週間は首に違和感を抱いていたが、今やもう気にならなくなる程に慣れてしまった。
彼との関係は、静かに、けれど確実に形を変えてゆく。最初こそ純粋な恋愛だったが、お互いの欲望や不安等が交じり合い、今や歪な関係となってしまった。例えるのなら、“サディストとマゾヒスト”や、“依存関係”、“服従関係”と言うのが近いだろうか。恋愛に疎い私は、この関係を“愛が重い”の一言で片づけてしまって良い物なのかも、改善すべきものなのかもわからない。だがもし改善すべき関係だったとしても、今の私にはどうする事も出来ない様な気がしていた。
その理由は、自分でも分かっている。彼に、依存してしまっているからだ。
毎夜繰り返される性交渉も、飼い慣らされている事実も、悲観的に思うどころか寧ろ好適に思っている位だ。自らこの状況を変える事は出来ない。
しかしながら、心の何処かではやはり不安に思っていた。“正常”に囚われる必要性はない、と思いつつも、まだ自分の中に人間の心が残っているのだろう。このままで良いのだろうかと一抹の不安が拭えずにいた。
ふらふらとした足取りで、街の石畳の上を歩く。
仕事の空き時間に、こうして当てなく街に出るのは久しぶりだ。曇った空を見上げ、息を吐く。
なんと無しに足を向けたのは、街の小さな雑貨屋。商品を並べた台の奥で、退屈そうな顔をして座っているのは私の古い友人、ライリーだ。
「姐さん、相変わらずな顔してんね」
そう声を掛けると、彼女が視線だけを此方に向けた。
「珍しいね、あんたが此処に来るなんて」
「うん、ちょっとね。姐さんと久々に話したくなって」
「どうせ下らん事で悩んでいるんだろう。あんたが私の所に来る時なんて、そういう時位だからね」
「流石姐さん、なんでもお見通し」
彼女の言う通り、私は何か心配事や悩み事、不安がある時に此処を訪れる事が多い。勿論それ以外で訪れる事もあるが、殆どそうだと言って良いだろう。
ライリーは決して、悩み相談に長けている訳では無い。しかし何故だか、彼女の言葉を聞きたくなってしまうのだ。
「今度はなんだい。私は別に、大した助言をしてやれる訳じゃないんだがね」
「別に助言が欲しい訳じゃないよ。ただ、姐さんの自論が聞きたいだけ」
「自論、ねぇ」
彼女はやや面倒臭そうな反応をするが、構わず言葉を続ける。
「姐さんにとって、愛って何だと思う?」
抽象的な質問だという事は、自分でも分かっている。しかし、これ以外に言える事が無かった。
襟に結んだリボンを整えるフリをして首輪を指先でなぞり、顔を上げた彼女を見つめる。
「愛、なんて……。まさかあんたからそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったよ」
驚愕した彼女は顔色を変え、私を見て目を瞬かせた。
彼女が驚くのも無理もない。私は今迄彼女に愛の話をしてこなかっただけでなく、彼女が話す愛の話に耳を傾けた事も無かった。
しかし、流石はライリーだ。状況を飲み込むのが早く、直ぐに「そうだねぇ」と言葉を漏らし考える素振りを見せる。
「これはあくまで私の考えだ。あまり触れ回るんじゃないよ」
「私が口硬いの、姐さんなら知ってるでしょ?」
「それもそうだね」
彼女と顔を見合わせて笑い、そしてライリーが小さく息を吐いた。
彼との関係は、静かに、けれど確実に形を変えてゆく。最初こそ純粋な恋愛だったが、お互いの欲望や不安等が交じり合い、今や歪な関係となってしまった。例えるのなら、“サディストとマゾヒスト”や、“依存関係”、“服従関係”と言うのが近いだろうか。恋愛に疎い私は、この関係を“愛が重い”の一言で片づけてしまって良い物なのかも、改善すべきものなのかもわからない。だがもし改善すべき関係だったとしても、今の私にはどうする事も出来ない様な気がしていた。
その理由は、自分でも分かっている。彼に、依存してしまっているからだ。
毎夜繰り返される性交渉も、飼い慣らされている事実も、悲観的に思うどころか寧ろ好適に思っている位だ。自らこの状況を変える事は出来ない。
しかしながら、心の何処かではやはり不安に思っていた。“正常”に囚われる必要性はない、と思いつつも、まだ自分の中に人間の心が残っているのだろう。このままで良いのだろうかと一抹の不安が拭えずにいた。
ふらふらとした足取りで、街の石畳の上を歩く。
仕事の空き時間に、こうして当てなく街に出るのは久しぶりだ。曇った空を見上げ、息を吐く。
なんと無しに足を向けたのは、街の小さな雑貨屋。商品を並べた台の奥で、退屈そうな顔をして座っているのは私の古い友人、ライリーだ。
「姐さん、相変わらずな顔してんね」
そう声を掛けると、彼女が視線だけを此方に向けた。
「珍しいね、あんたが此処に来るなんて」
「うん、ちょっとね。姐さんと久々に話したくなって」
「どうせ下らん事で悩んでいるんだろう。あんたが私の所に来る時なんて、そういう時位だからね」
「流石姐さん、なんでもお見通し」
彼女の言う通り、私は何か心配事や悩み事、不安がある時に此処を訪れる事が多い。勿論それ以外で訪れる事もあるが、殆どそうだと言って良いだろう。
ライリーは決して、悩み相談に長けている訳では無い。しかし何故だか、彼女の言葉を聞きたくなってしまうのだ。
「今度はなんだい。私は別に、大した助言をしてやれる訳じゃないんだがね」
「別に助言が欲しい訳じゃないよ。ただ、姐さんの自論が聞きたいだけ」
「自論、ねぇ」
彼女はやや面倒臭そうな反応をするが、構わず言葉を続ける。
「姐さんにとって、愛って何だと思う?」
抽象的な質問だという事は、自分でも分かっている。しかし、これ以外に言える事が無かった。
襟に結んだリボンを整えるフリをして首輪を指先でなぞり、顔を上げた彼女を見つめる。
「愛、なんて……。まさかあんたからそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったよ」
驚愕した彼女は顔色を変え、私を見て目を瞬かせた。
彼女が驚くのも無理もない。私は今迄彼女に愛の話をしてこなかっただけでなく、彼女が話す愛の話に耳を傾けた事も無かった。
しかし、流石はライリーだ。状況を飲み込むのが早く、直ぐに「そうだねぇ」と言葉を漏らし考える素振りを見せる。
「これはあくまで私の考えだ。あまり触れ回るんじゃないよ」
「私が口硬いの、姐さんなら知ってるでしょ?」
「それもそうだね」
彼女と顔を見合わせて笑い、そしてライリーが小さく息を吐いた。
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