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LII 堕落-V
しおりを挟む「貴女がこの様な行動を取るとは……、驚きですね。前までの貴女なら『好きにすれば』などと言っていた筈なのに」
「そこまで冷たくないでしょ」
「いや、貴女が思っている以上に、貴女は僕に冷たいですよ」
ふふ、と笑みを零した彼が再び私を強く抱き締める。
「お仕置内容は、まぁ検討します。それで? まだ話す気になりませんか、その悩み事とやらを」
「そうだね、話してもいいんだけど、先生の答えは大体想像がつくからなぁ」
彼は、この愛を異常だとは言わないだろう。最初の頃は彼も少し迷ってる様に見えたが、今ではこれが当たり前かのように振る舞う。
故に、話した所で「他者に相談するよりも僕に相談すれば良かったのに」などと言うに決まっている。
「貴女はまだ分かっていないようですね。僕が何と言うかだなんてどうだっていいんですよ。僕は貴女の全てを把握したい。だから、貴女に口を噤む権利は無いんです」
「横暴だなぁ」
「貴女に対してだけですよ」
「そうじゃないと困る」
彼の発言にやや呆れながらも、息を吐いて言葉を脳内に並べ立てる。何から話せば良いだろうか、などと考えながら、口を開いた。
「――愛って、なんだと思う?」
私の問い掛けに、彼が理解出来ないとでも言うように「随分と唐突ですね」と言葉を漏らした。
「姐さんには、この質問をしただけだよ。悩みを聞いてもらった、って言ったけど、正確には姐さんの自論を聞いただけかな」
「……自論、ですか」
「そう。私ずっと、先生との関係って本当に愛なのかなって思ってた。私が先生に抱いてる感情も、先生との行為も、何もかもが歪で、普通じゃないって。でも、姐さんは『愛と死は表裏一体』だって、『死を覚悟出来ているのならどんな愛だって構わない』って言ってくれた。例えそれが暴力でも、支配でも、拘束でも」
「………」
意外にも彼は、何も言う事は無かった。何か考え込む様な素振りを見せるものの、口を噤んだまま相槌も打たず私の首元に顔を埋める。
「私、先生の為ならなんだって出来るよ。それこそ、死ぬことだって、人を殺す事だって」
そう言葉を付け加えるが、彼は私の首元に顔を埋めたまま動かない。
彼を見て、“今何を考えているのだろう”と思うのはこれで何度目だろうか。心が読めないだけに、どう反応すべきか、どう声を掛けるべきかが分からない。これ以上は何も言わぬべきか、それとも、もう少し具体的にライリーの言葉を伝えるべきか。悶々と考えながら、彼の柔らかな髪をふわりと撫でる。
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