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LIV 招かれざる客-V
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この事実をどうするべきかと、思考を巡らせる。
セドリックに、素直に伝えるべきか。だが、セドリックは今子が生まれたばかりで物事に過敏になっている。そんな彼に、エルの母親が此処を訪ねて来たと伝えるのか?
彼がこの事実を知れば、確実に動揺するだろう。今迄以上に、仕事に手が付かなくなるかもしれない。
それに、あの女性は此処へ来た時「此方で、子供を譲って頂けると聞いたのですが」と言った。セドリックがエルを娶った事を知り、此処を訪ねて来た訳では無さそうだ。であれば、セドリックには黙っておいた方が良いかもしれない。1人客室のソファに座り、悶々と考える。
そんな自身の思考を止めたのは、突如聞こえた玄関扉が開閉される音。セドリックが帰って来たのだ。
咄嗟に手に持った書類を折り畳み、セドリックに気付かれない様ベストのポケットに突っ込んだ。
「――おかえり、何処行ってたの?」
客室を飛び出し、何かがあったと悟られない様にいつも通りの笑顔を浮かべ問い掛ける。
「……少し、街に」
彼はそれだけ言って、脱いだコートを投げる様にしてラックに掛けた。
「……誰か来たのか?」
彼の視線が、私の背後にあるテーブルに向く。しまった、と思ってももう遅い。テーブルには、あの女性――シャーロット・エインズワースに出そうと用意したお茶を置いたままだった。
「あぁ、えっと、うん。セドリックに依頼があって来たみたいで客室に通したんだけど、お茶用意してる間に帰っちゃったみたい」
嘘をつく事も考えたのだが、もし万が一それが嘘だと気付かれた時が厄介だ。
エインズワースの名を出さなければ、問題無いだろう。顔に笑みを浮かべたまま、密かに彼の顔色を伺う。
「……そうか。書類は出したのか?」
「うん。でも白紙だった」
一瞬、自身の意識がベストのポケットに向く。それを顔に出さない様に抑え込み、「気が変わっちゃったのかなぁ」と言葉を付け加えた。
「途中で心変わりした、という依頼者は過去にごまんと見て来た。だが、茶を用意してるうちに帰った奴は初めてだな……。まぁ、また用事があれば来るだろ」
彼は“途中で帰った”という行動に疑問を抱いてはいるが、私の返答を疑ってはいない様だ。早くも此処を訪ねて来た人物には興味を失ってしまった様で、彼の意識が私の背後に向く。外は気温が低く、身体が冷えてしまったのだろう。温かい物を欲するのは当然だ。
「紅茶、飲んでいいよ」
そう告げると、彼は何故分かったのだと言わんばかりに私に目を遣った。しかし直ぐに察しが付いたのだろう。私の言葉に、黙って頷いた。
セドリックに、素直に伝えるべきか。だが、セドリックは今子が生まれたばかりで物事に過敏になっている。そんな彼に、エルの母親が此処を訪ねて来たと伝えるのか?
彼がこの事実を知れば、確実に動揺するだろう。今迄以上に、仕事に手が付かなくなるかもしれない。
それに、あの女性は此処へ来た時「此方で、子供を譲って頂けると聞いたのですが」と言った。セドリックがエルを娶った事を知り、此処を訪ねて来た訳では無さそうだ。であれば、セドリックには黙っておいた方が良いかもしれない。1人客室のソファに座り、悶々と考える。
そんな自身の思考を止めたのは、突如聞こえた玄関扉が開閉される音。セドリックが帰って来たのだ。
咄嗟に手に持った書類を折り畳み、セドリックに気付かれない様ベストのポケットに突っ込んだ。
「――おかえり、何処行ってたの?」
客室を飛び出し、何かがあったと悟られない様にいつも通りの笑顔を浮かべ問い掛ける。
「……少し、街に」
彼はそれだけ言って、脱いだコートを投げる様にしてラックに掛けた。
「……誰か来たのか?」
彼の視線が、私の背後にあるテーブルに向く。しまった、と思ってももう遅い。テーブルには、あの女性――シャーロット・エインズワースに出そうと用意したお茶を置いたままだった。
「あぁ、えっと、うん。セドリックに依頼があって来たみたいで客室に通したんだけど、お茶用意してる間に帰っちゃったみたい」
嘘をつく事も考えたのだが、もし万が一それが嘘だと気付かれた時が厄介だ。
エインズワースの名を出さなければ、問題無いだろう。顔に笑みを浮かべたまま、密かに彼の顔色を伺う。
「……そうか。書類は出したのか?」
「うん。でも白紙だった」
一瞬、自身の意識がベストのポケットに向く。それを顔に出さない様に抑え込み、「気が変わっちゃったのかなぁ」と言葉を付け加えた。
「途中で心変わりした、という依頼者は過去にごまんと見て来た。だが、茶を用意してるうちに帰った奴は初めてだな……。まぁ、また用事があれば来るだろ」
彼は“途中で帰った”という行動に疑問を抱いてはいるが、私の返答を疑ってはいない様だ。早くも此処を訪ねて来た人物には興味を失ってしまった様で、彼の意識が私の背後に向く。外は気温が低く、身体が冷えてしまったのだろう。温かい物を欲するのは当然だ。
「紅茶、飲んでいいよ」
そう告げると、彼は何故分かったのだと言わんばかりに私に目を遣った。しかし直ぐに察しが付いたのだろう。私の言葉に、黙って頷いた。
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