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LXI 真実-V
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セドリックとの話が終わり、書斎の定位置に座って1人思考を巡らせていた時。メイベルから告げられたもう1つの言葉を思い出した。
“You should consider the excuse for staying out without permission to darling.《ダーリンへの無断外泊の言い訳は考えておいた方がいいわね》”
マクファーデンに何も知らせることなく、無断外泊をしてしまった事に気付いたのは黎明頃の事。今から帰っても遅いと思いながらも、慌てて屋敷を飛び出し、もう誰も居なくなった街を息を切らせながら駆ける。
すると遠目に、明かりの漏れる建物が見えてきた。見間違える筈がない、あの建物は診療所だ。まさか、私の帰りが遅い事を不審に思い、ずっと待っていたのだろうか。
診療所の前に辿り着き、息を整えながらそっと扉を押し開く。カラリと鳴るドアベルの音がやけに煩く、しんと静まり返った街に反響し響き渡った。
「マーシャ!」
ドアベルの音で気が付いたのだろう。カーテンの奥からバタバタと慌ただしい足音が聞こえ、マクファーデンが顔を出した。その顔には、安堵にも怒りにも見える表情が浮かんでいる。
「こんな時間まで何処にいっていたんですか!」
駆け寄ってくるなり私を強く抱きしめたマクファーデンが、怒りの籠った声で怒鳴る様に言った。
「どれだけ心配したと……」
だが次第にその声に気迫が無くなり、語尾が弱々しく消えていく。
鼻腔を擽る、彼の匂い。いつも通りの、ハスキーな声。最愛の人のその顔。全てが揃い、瞳にじわじわと涙が浮かぶ。
「先生……」
彼の背に腕を回し、強くその身体を抱きしめ返した。
「大事なもの、また守れなかった」
その言葉をきっかけに、浮かんだ涙が一粒、また一粒と頬を伝い落ちていく。
「また、守れなかったよ……」
彼を抱く腕に力を籠めると、それと同時に彼の腕にも力が籠った。
彼は何も言わなかった。ただ、私を強く抱きしめ続けてくれていた。
私には、大切なものがある。大切な人が居る。なのに、私の大切な人はいつもいつも大切なものを失う。何故それが私でないのか、何故それを防げないのか、何故、私はいつも守れないのか。
エリオット先生が今の私を見たらどう思うだろうか。そんな無意味な事が頭に浮かぶ。マリアとノエルを捨て、更には私までをも裏切ったあの男を思い出す必要なんてない。抑々、あの男が全ての元凶なのだ。
そう分かっているのに、今は何故だかエリオット先生の事が頭から離れなかった。
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