193 / 215
LIII 私の娘に... -III
しおりを挟む愛する娘には、幸せになって欲しい。
出来る事ならいつまでも私達の傍に居て欲しい物だが、この世の中は少々残酷であり、大切な我が子を親の手だけで守れない事もある。
ならばせめて、2人がいつまでも共に居られるように。仮に不幸な道を進む事になったとしても、2人だけは離れる事は無い様にと、そんな願いをこの指輪に込めた。
「レイ、右手を出して」
「右手?」
彼女が怪訝な反応をしながらも、右手を此方に差し出す。
指輪を嵌める位置は、“集中力・行動力をつける”右手の人差し指。これは、アクセサリーに詳しいライリーから教わったものだ。
箱からそっと指輪を取り出し、レイの指に慎重に嵌め込んだ。
「指輪だ!」
瞳を輝かせ、様々な角度から指輪を眺めるレイはとても無邪気であり、やはりまだ子供なのだと笑みを漏らす。
「世界で“2つ”しかない、特別な指輪よ」
「2つ……、あっ……!もしかして……!」
もう1つの指輪は、ルイの元にあるのだと覚ったのだろう。彼女がガタリと音を立て椅子から立ち上がり、声を上げた。
それを肯定する様に、彼女に微笑みかける。
「その2つの指輪は、磁石みたいに、互いを強く引き寄せるお祈りが込められているの」
「磁石……」
私の言葉を復唱する様に呟いた彼女が、何やら考えこむ様な顔をし再び椅子に腰を下ろした。
「貴女も気付いているわね。もう片方は、ルイが持っているわ。貴方達2人の事は、ママとパパで何があっても守っていきたいと思ってる。でも、時にはそうもいかない事もあるでしょう。これから先、家族4人でずっと一緒に居られるという保証は何処にも無い」
「――うん……」
手を伸ばし、俯いたレイの髪をそっと撫でる。
「貴女達2人きりになってしまったその時は、貴女がルイを支えてあげてね」
「――私が?」
「そうよ。ルイは賢い子だけれど、咄嗟の時に頭より先に身体が動いてしまう子。でも貴女は、どんな時でも慎重で、しっかりと物事を考えられる。だから、ルイが危険な事をしようとしたら貴女が止めるのよ」
「――……」
するりと、柔らかなレイの髪を指先で梳く。
彼女は勉強に関しては不真面目であるが、この様な話を軽んじる子ではない。きっと、彼女も彼女なりに何かを真剣に考えているのだろう。
――と、思ったのも束の間。彼女が、突然吹き出す様に笑った。
「ルイ、私の言う事聞いてくれるかなぁ。ママが思っている以上に、ルイって私の話聞いてないんだよ」
「――それは、否定……出来ないかもしれないわね」
そういえば、ルイは少々自由な子だ。幼少期に、泣いているレイを放って1人絵本を眺めていたことがあった。そんな様々なルイの自由な行動を思い出し、苦笑を漏らす。
ルイは自分で決めた事は貫き通す所があり、レイの言う通り彼女の言葉を聞かない可能性も大いにあった。
「――でも、大丈夫。ちゃんと止めるよ」
しかし、レイはふふ、と笑いしっかりと頷いて見せた。
「聞かなかったら殴ってでも止めてやる」
「それは、程々にね」
再びレイの頭を撫で、彼女と顔を見合わせて笑った。
「仮に家族がバラバラになっても、いつか必ず巡り合える。だから、レイはルイと共に居る事だけ考えていればいいわ」
自分の言葉が、親として普通じゃない事は分かっている。しかし、2人には2人の思う幸せを歩んで欲しかった。
私達親が決めつけた幸せなどでは無い、彼女達の本当の幸せを。
「少し早いけど……、レイ、11歳のお誕生日おめでとう」
0
あなたにおすすめの小説
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
泡になった約束
山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。
夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。
洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。
愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。
そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。
振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。
平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる