バレンタインパーティで出逢ったダサい年下君は、脱いだらまさかのアノヒトでした。

カミヤルイ

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***

 どれくらい眠ったのか、外の光が入らず、時計がないラブホテルでは朝が来たかどうかもわからない。

 スマホを取り出す間もなくバスルームに移動したので、梶山はソファに置いた覚えのあるバッグを取りに行こうとそっと身体を動かした。

 隼人はよく眠っているが、体ががっしりとしているために腕が重く、きつく抱きしめられているのと同じ状態だ。

「……どこ行くの」

 起こさないように静かに動いたつもりだったのに、再び腕の中に閉じ込められた。

「あっ、起こしてごめんね。時間を知りたくて」
「時間……俺のアラームが鳴ってないからまだ夜中だと思うよ」

 隼人が身体を起こし、下着一枚身につけないままベッドを下りる。

 脱ぎ捨てていた自分の上着のポケットからスマホを取り出すと、午前4時半過ぎだと教えてくれた。

 それにしてもいい身体だと無意識にため息が漏れる。

(俺、本当に芳野隼人に抱かれたんだ……あのたくましい身体に、あの大きいアレに……)

 ボッ、と顔が熱くなった。

 興奮していない状態でも、隼人の割れた腹の下に下がっているものは立派で猛々しい。

「ふふ。やーらしい。どこ見てんの」

 梶山の視線の位置に気づいた隼人がくすっと笑う。
 スマホをテーブルに置くと、堂々と身体を見せつけるようにしてベッドに戻ってくる。

 梶山の目はギリシャの彫刻のような美しさに再び釘付けになった。

 だからこのとき、隼人が置いたスマホの横に、バッグから取り出していないはずの梶山のスマホがあることにはまったく気づかなかった。

「……ね、もう一度、していい?」

 ベッドに這い上がってきた隼人は梶山の身体を跨ぎ、四つん這いの姿勢で覆いかぶさるように見下ろしてくる。

 チロリ、と舌先を出して自身の唇を舐める仕草にドキッとした。

 さすがは俳優だ。自分をセクシーに見せる方法を存分に知っている。

 こんなイケメンに、それも推しに色っぽい表情で迫られて、首を縦に振らない人間がいるだろうか。いやいない。

 梶山が瞼を閉じてコクリと頷くと、柔らかさを確かめるように唇を食まれた。

 数度吸われて唇が濡れると、肉厚な舌が潜り込んでくる。

 ただ、昨夜の劣情をぶつけるような激しさはない。じっくりと味わうような濃厚なキスは、まるでチョコレートのような甘さだ。

 演技だとわかっていても、愛されていると勘違いしそうになる。

(俺が枯れオジでよかったね。若い子なら期待してしまうよ?)

 梶山は期待しない。
 今まで誰も自分を愛してくれなかった。

 いつも自分は脇役。

 誰かの恋を見守るばかりで、たまにマッチングした相手とワンナイトをするだけの人生だった。

「ね、目を開けて俺が触るところ、見てて? 俺、気持ち良くできてる? 昨日は無理させてごめんね」

 昨日は猛獣のようだったのに、今は飼い主に褒めてもらおうとする忠犬のように言ってくる。

 その愛らしさに梶山はふふっと微笑み、隼人のつむじに口づけをしてやった。

「とても気持ちいいよ。昨日も……激しかったけど、とても良かった。あんなに感じたのは初めてだったよ」
 ……あんなに必死に求められたのも。

 だから演技でもいい。ワンナイトでもかまわない。
 奇跡が起こって出会えた推しに、一生分抱いてもらったのだから。

「ほんと? やったぁ」

 イケメン俳優が歯を見せ、あどけない笑顔を弾けさせる。
 その笑顔がこれまで指導してきた生徒たちの笑顔と重なった。

 田舎くさい若者の変装をして現れ、猛獣のように梶山を抱き、大型犬のように甘え、子供のように笑う隼人。

 いったいどれが隼人の本当の顔なのだろう。

(いや、彼はカメレオン俳優の芳野隼人だ)

 どれもが演技だ。

 一介のファンである梶山が隼人の本当の顔を知ることは絶対にない。
 これは一夜限りの夢なのだから。

「たくさん感じてね。ここはもう、すっかり俺の形になってるから、すぐにでも入りそうだけど」
「は、ぁあん!」

 隼人のサイズと違い過ぎて恥ずかしいソコを愛撫されながら、後孔にツプリと指を沈められる。

 そのままかき混ぜられてえぐられて。

 前は裏筋や鈴口などのイイところを執拗に責め立てられて。

 梶山の快楽が頂点に達しそうになると、後孔から指を引き抜かれた。

「ぁ、ああっ」

 それにさえ感じて腰を揺らせば、がっしりと腰を掴まれて熱い杭を打ち込まれる。

 本当に隼人の形になってしまったらしい淫路は、少しほぐしただけでたやすく隼人の長大な杭を受け入れ、歓びに震えてそれを締め付ける。

「隼人君っ……!」
「本当に最高だよ、せんせっ……!」

 そう言えば……せんせ、とは「先生」のことだろうか。

 昨夜ホテルに入るまでに、梶山はいつの間にか自分の職業を漏らしてしまっていたのだろうか。

 それとも隼人は芸能人だから、ゲイバーで出会った男に情事をネタに揺すられて困らないよう、あらかじめ梶山の個人情報を聞き出して対応しようとしたのだろうか。

(そんな心配は不要だよ。俺はずっと君を推し続けるから……)

 梶山は思考を止め、愉悦にすべてを委ねる。

「せんせ、せんせ、好きっ……!」

 切羽詰まったような声で呼びかけられ、固く抱きしめられる。

 身体も心も感謝と幸福で満たされていく。

 そして波が去った後は、泥のように心地良い疲労感に包まれ、再び微睡へと落ちていく梶山だった。


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