枕営業から逃げたら江戸にいました。陰間茶屋でナンバー1目指します。

カミヤルイ

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ᒪove Stories 〈第二幕〉 ほぼ❁✿✾ ✾✿❁︎

DeepLove  2

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  予定の仕事が終われば彬が迎えに来てくれることになっている。

 音楽プロデューサーAと同居し、可能な限り、A自らが送迎をする関係に、社長の湯島は当初怪訝な顔をした。しかし、今まで散々蹴られていたAとの会食の機会を持った翌日には、すっかり上機嫌になっていた。

 それもそのはず。
 その会食の日、Aはフラワーアップが経営する音楽会社と専属契約を結んだのだ。
 
 契約は事実上、彬と悠理の秘密裏の交際を認める交換条件だ。
「女と噂になるよりは、初めから男と同居している方がスキャンダルは防げるわね。その代わりあくまでも親類関係のていにしてちょうだい」と、釘を刺すことは忘れなかったが。

 マネージャーに付き添われて事務所の地下の駐車場に出ると、すぐに濃青の車が見えた。念には念を重ね、悠理が乗り込むまでマネージャーが見送る。売り出す前からのハイエナ記者避けだ。



「お疲れ様、悠理」
 帰宅するとすぐに、彬の手が悠理の腰に回り、顔が近づく。

「あっ……! 待って彬さん。今日は先にシャワーに行くね」
 いつもならすぐに目を閉じてキスを受け入れるのに、悠理は慌ただしく浴室に向かって行った。

 その時、ふ、と香るものがある。
(楓真か……油断も隙もないな)
 悠理に香りが移るくらい近寄ったのかと彬はため息をついた。

 ────江戸時代でも、百合への思いを自覚してからの楓は忠彬への牽制が激しかった。

そばにいますから」と、何度睨まれただろう。

 当時は百合が幸せになるならそれで、と心を収めようとした。だが、楓は市山座に籍が移り、百合はぼろぼろになった。
 そばにいてやれない自分が、あれほどにもどかしかったことはない。それからも親代わりの権造の死に直面したりと、百合には辛い日々が続いた。

 その頃からだ。
「誰でもなく自分がそばにいてやりたい」と、二人で生きていく未来の為に真剣に動き出したのは。


「彬さん、シャワーお先でした」

 テーブルに夕食の皿を並べていると、悠理がバスルームから出てきた。
 濡れた前髪を全部上げて頬を上気させている悠理は、上演後の百合を思わせた。

「良く頑張ったな」
 彬はその額に口づけを落とす。
 悲しみを耐えた百合にも、今日一日頑張った悠理にも、両方への労いだ。

 悠理がふふ、と笑う。猫が頭を撫でられた時みたいなくしゃっとした笑顔がかわいい。
 笑顔と同時に鳴った悠理の腹の音もまた可愛いのだが、先程の楓真の残り香が心に残っていた彬は、悠理の額に自分の額をコツンとくっつける。

  「ドラマの顔合わせ、どうだった?」
 問うと、途端に悠理の目が落ち着き無く左右した。

  「あ、あの……楓真、と花房瞬が主演でね。BLなんだって、で、俺は楓真の幼馴染役で……」

  「……BL? ……それで?」

  「う……。それで、えっと……楓真のことが好きで楓真とキスしたんだ!」
 隠しても放送されればわかってしまうのだから、言っておいた方が良い、と判断して話すが、焦った時の悠理はどうにも言葉が足りない。
 楓真の「役」がの「役」が抜け、キスシーンがあるから練習をした、という説明が抜けた。
 ただ、どちらにせよ「キスをした」ことには変わりはなく、彬の神経を逆撫でする。

  「ふぅん……キス、許したんだ?」
  「あっ! いや、あの、練習。練習です」
  「練習? 必要とは思えないけど」
  「~~楓真が、その、現代では男同士でしたことがないから自信ないって、すごく心配してて、それでっ」

 必死に釈明する悠理だが、彬は今にも顔に青筋が立ちそうだ。
(楓真も楓真だけど、悠理、隙がありすぎだろ……)

 大きく息を吐いて呼吸を落ち着かせる。
 とにかくこの、純真で疑うことを知らない隙だらけのチョロい子に教えてやらねばならない。

 彬は悠理の腰に手を回して縦に抱き上げ、そのまま寝室に運んだ。

「わ、ちょっと彬さん!? ご飯は?」

「食事はあと」
 言って対面のまま腰を跨がせる。
 バスローブの帯を解かなくてもすぐに肌が現れ、悠理の中心まで丸見えだ。

 彬はちゅっ……と胸の小さな蕾を吸いながらそこに手をやる。途端に悠理の腰が揺れて、甘い声が漏れた。

  「悠理はだれの恋人もの?」
 舌で蕾を転がしながら問う。

  「あ……んっ……彬さん。彬さんの……」  
 
 悠理はもう、目尻を涙で濡らしていた。
 彬と暮らし始めてから毎晩のように求められ、悦くされる。そのたびに感度が上がるようで、ほんの少し触れられただけで中心は硬さを帯び、菊座はひくひくと疼いてしまうのだ。

  既に欲しくてたまらない。
  「彬さん、はやくして……」

  「まだ駄目だよ。悠理。いい? 悠理は俺の恋人でしょ? だったら撮影本番は仕方ないけど、練習でも楓真に……いや、他の人にも触らせちゃ駄目だよ。約束できる?」
 厳密にはそんなこと、不可能だと彬にもわかっている。それでも、危機感のない悠理にはきついくらいのお灸が必要だ。

  「んっ、できる。約束できるから……」
  悠理は言いながら彬のジーンズのファスナーを下ろし、中にある愛しいものを両手で包む。
 彬のそれも既に先を濡らし、雄々しい存在を主張していた。
「っ……つ。悠理、あれ、しよう?」

 彬はジーンズを下げ、あらわになった自分の熱と悠理の熱をすり合わせた。
 悠理は眉尻を下げた切ない表情で頷き、その二つを一緒に持って懸命に上下する。

(保科様の寝所で、こうやってした)
 
 あの頃を思い出すと、背中を撫で上げられたようにぞくぞくする。
 いつも余裕の表情の忠彬が、額に汗を浮かべて眉を寄せるのがはっきり見えるこの体勢がとても好きだった。

 それは彬も同じことで、向かい合って座ると、互いの息遣いが一番近く感じられる気がした。

  「あ……!」

 菊座に彬の手が回る。
 もう慣らされることに体は抵抗しなくなった。すぐにでも受け入れる準備はできている。

 顔を上げれば微笑んで頷く彬。
 悠理は両手を彬の肩に置いて腰を上げ、用意してくれている彬の昂ぶりを自分の中に迎え入れた。

  「ふぅ……んん……」
 蕩けそうな感覚に鼻から息が抜ける。揺さぶられると頭の天辺からつま先まで快感が走った。

  「彬さん、彬さん、すきっ……」
 先に達した悠理を追うように、しばらくすると彬も悠理の中に自分の白い痕を放った。


  ***


 終わったあと、悠理はいつも気を失ったように眠ってしまう。

  「しまったな。また無理させた。腹も減ってただろうし、疲れてただろうに」
 せめてもの償いで体をきれいにしてやり、起こさないように器用にシーツを取り替え、掛け布団でくるんでやった。

 部屋から出る時に眉間にちゅ、とキスをすると、悠理が寝とぼけたまま呟く。
  「彬さんだけ、約束……」

 思わず笑みがこぼれる。今しかた反省したばかりなのに、掛け布団を剥がし、うなじを食んでしまう。

(駄目だな、愛しくて愛しくてたまらない。……俺の悠理)

 彬は、眠る悠理の菊座に再び指を這わせるのだった。



DeepLove  end
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