事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ

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事故つがいの夫は僕を愛してる

初デート side天音①

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 混みあった電車は苦手だ。
 十五歳で初めてヒートを起こした日、満員電車の中で、ラット化したサラリーマンに襲われそうになった。

 思い出すと今でも怖くて、僕はあの日以来、二十歳を過ぎた今でも一人では電車に乗れなくなっていた。

 だけど今日は……。

「天音、大丈夫? 怖くない?」
「うん、平気だよ」

 今は混雑する時間じゃないし、理人と一緒に電車に乗っているから。
 理人が隣に座り、身体をぴたっとくっつけて座ってくれているから。
 指を絡めて繋いだ手をぎゅっとして、優しい声で理人が聞いてくれるから。

 ──今日は、理人との初めてのデートだから!

 僕が笑顔で返事をするのを見て、理人も白い歯を見せて笑ってくれる。相変わらずかっこよくて、僕は太陽でも直視したみたいに目をすがめた。

 僕が理人を好きすぎて過剰反応をしてるんじゃないかと気になったけれど、向かい側の座席の女の子も理人を見て目を細めているし、その隣に座っているオメガらしき男の子も、うっとりと理人を見ている。
 
 中学のときもこうだったなぁ。皆の視線も奪う素敵な理人。そんな人が僕のつがいで夫だなんて……。

「ん? どうしたの?」

 理人が少し前傾して僕を見て、顔を覗き込まれるみたいになった。視線がごく近い位置で絡み合う。

「う……」

 途端に胸がドキドキドキドキ、きゅっ、と拍動を刻んだ。
 初デートに浮かれていた昂揚感がどこかに飛んで行ってしまう。

 ああ、僕って変わらない。理人に見つめられると、緊張しすぎて胸が痛くなってしまうんだ。今すぐ目をそらしてうつむいてしまいたい。

 でも駄目。長い年月お互いに持っていた誤解が解けて、僕たちはやっと本当の夫夫として再スタートを切ったんだ。これからは誤解されるような行動はしないって決めたんだから!

 よし、と小さくこぶしを握って気合いを入れる。見つ返して、にこ、っとしたら、きっと理人も安心してくれる。

「天音?」
「……あ、あ、ぁの……その」

 笑え。さっきみたいに自然に笑え。

「………………ナンデモナイ……」

 無理みたい。僕は目をぎゅっと閉じて、結局うつむいてしまった。
 だって、デート仕様の理人は、いつもにも増してかっこいいんだもの。

「天音とのデートのために気合いを入れるね」と理人が言ったとおり、服装も髪型もとっても素敵だ。
 
 今までふたりで外を歩いたことがないわけじゃないけれど、近くのスーパーとか本当にそれくらいで。

 基本的には理人が買い物を済ませてくれていたし、生協さんの配送を利用しているから、外にいくときも服は本当に普段着だったし……そもそもデートじゃなくてもふたりで目的を持ってでかけるなんて、本当に久しぶりで。

 理人は対人恐怖症になった僕を守りたかったのもあるけれど、誰の目にも触れさせたくなかったんだと気まずそうに教えてくれた。
 
 僕はずっとそれを「僕なんかがつがいで夫なのが恥ずかしいのかも。そうだよね、僕みたいな地味なオメガをつれて歩くなんて、嫌だよね」と思って、パートに行く以外ではずっと家に引きこもってた。

 だからそれを聞いたとき、とても嬉しかった。それにもう、理人は家の中で何度も言ってくれるんだ

「ふふ、天音、可愛い」

 そう、僕のこと、可愛いって。
 ……って、そうじゃなくて!

「り、理人、ここ電車、今、外!」
「誰も聞いてないよ。こんなくらいで顔を赤くして、俺のつがいは本当に可愛いね」

 繋いだ手を上げて、一瞬でちゅ、と僕の手に唇を付ける。

「~~~~!!!!」

 聞いてる。見てる。同じ車両には僕たち以外に五人ほどしかいないけど、そのみんなが僕たちを見てほそーい目になってるから!
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