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事故つがいの夫が僕を離さない!
軌跡 Side理人②
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❋❋❋
「高梨君、好きです! 付き合ってください」
「ごめんね。誰ともそういう気持ちにはなれなくて」
「そ、そうですか、す、すみませんでした」
放課後、告白をしてくれたベータの女子が、傷ついた顔をしながら俺の前から走り去った。
俺はフウッとため息を吐いて、校門に向かう。
小学生の頃からあったが、中学生になると、女子や、オメガでは男子からも面と向かって好意を伝えられることが格段に増えた。
さっきの子はすぐに引き下がってくれたが、相手が気位の高いアルファの女子なら、納得できないと詰め寄ってくることもあるし、気弱なオメガの子だと、その場で泣き崩れて立てなくなることもある。
ただ告白してくる子は何かしら決着が着くだけマシなのかもしれない。
告白はしてこなくても、ストーカーのように俺の行動を追ってくる子や、俺の持ち物を盗って行く子がいる。それから、手作りのものをくれる子もいるが、変わったおまじないが流行しているらしく、くれたものにその子の髪や唾液が混ぜられていると知ったときにはゾッとした。
人が作った食べ物は苦手だから口にしていないし、物もどれかを使えば、使わなかった物をくれた子が悲しむので、未使用にしていて本当に良かった。
それにしても、アルファに生まれたというだけで……俺はアルファの中でも能力が高めらしいのだが……他人からここまで好意を向けられると、ありがたさよりもむしろ煩わしさを感じてしまう。
生き辛い。常に視線を感じて気が抜けない。俺のちょっとした言動が他人を一喜一憂させることが不思議でいて、強い違和感と嫌悪感を覚える。
両親には、アルファに生まれた意味を考えていつも正しくありなさいと言われている。
優秀な遺伝子を授かって生まれたのだから、社会の役に立つ人間になれということだ。それに異論はないが、自分が偶像を演じているような気持ちになることがある。
もっと自由でいたい。誰の視線も気にせず、自分でもまだ知らない自分らしさを見つけたい────
彼女、前原さんにある提案を持ちかけられたのは、そんな思いが強くなっていた中二の二学期が始まってすぐの頃だ。
「高梨くん、いっそ本当に彼女を作ればいいのよ」
生徒会役員に立候補する前原さんに応援を頼まれていた俺は、演説日の応援演説の原稿を仕上げるために彼女と一緒に教室に残っていた。
「えー? 誰も好きになれないのに?」
「好きな子じゃなくていいじゃない。カムフラージュ彼女的な感じで。そうしたら今よりは学校生活が楽になると思うけど?」
先に自分の演説原稿を仕上げた前原さんがにっこりと微笑む。
前原さんは俺と同じアルファで、彼女も能力が高い方だと思う。女子の中では群を抜いて目立つ子で、男子からと、女子のオメガからも絶大な人気がある。
「そうなのかな。じゃあ先に前原さんが試してみなよ。前原さんも俺と同じように……」
大変そうだもんね、と言いかけて察する。
話すのをやめて彼女を見ると、ご名答だと言うように頷いた。
そして、俺たちはその日、「偽の恋人」になった。
「高梨君、好きです! 付き合ってください」
「ごめんね。誰ともそういう気持ちにはなれなくて」
「そ、そうですか、す、すみませんでした」
放課後、告白をしてくれたベータの女子が、傷ついた顔をしながら俺の前から走り去った。
俺はフウッとため息を吐いて、校門に向かう。
小学生の頃からあったが、中学生になると、女子や、オメガでは男子からも面と向かって好意を伝えられることが格段に増えた。
さっきの子はすぐに引き下がってくれたが、相手が気位の高いアルファの女子なら、納得できないと詰め寄ってくることもあるし、気弱なオメガの子だと、その場で泣き崩れて立てなくなることもある。
ただ告白してくる子は何かしら決着が着くだけマシなのかもしれない。
告白はしてこなくても、ストーカーのように俺の行動を追ってくる子や、俺の持ち物を盗って行く子がいる。それから、手作りのものをくれる子もいるが、変わったおまじないが流行しているらしく、くれたものにその子の髪や唾液が混ぜられていると知ったときにはゾッとした。
人が作った食べ物は苦手だから口にしていないし、物もどれかを使えば、使わなかった物をくれた子が悲しむので、未使用にしていて本当に良かった。
それにしても、アルファに生まれたというだけで……俺はアルファの中でも能力が高めらしいのだが……他人からここまで好意を向けられると、ありがたさよりもむしろ煩わしさを感じてしまう。
生き辛い。常に視線を感じて気が抜けない。俺のちょっとした言動が他人を一喜一憂させることが不思議でいて、強い違和感と嫌悪感を覚える。
両親には、アルファに生まれた意味を考えていつも正しくありなさいと言われている。
優秀な遺伝子を授かって生まれたのだから、社会の役に立つ人間になれということだ。それに異論はないが、自分が偶像を演じているような気持ちになることがある。
もっと自由でいたい。誰の視線も気にせず、自分でもまだ知らない自分らしさを見つけたい────
彼女、前原さんにある提案を持ちかけられたのは、そんな思いが強くなっていた中二の二学期が始まってすぐの頃だ。
「高梨くん、いっそ本当に彼女を作ればいいのよ」
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前原さんは俺と同じアルファで、彼女も能力が高い方だと思う。女子の中では群を抜いて目立つ子で、男子からと、女子のオメガからも絶大な人気がある。
「そうなのかな。じゃあ先に前原さんが試してみなよ。前原さんも俺と同じように……」
大変そうだもんね、と言いかけて察する。
話すのをやめて彼女を見ると、ご名答だと言うように頷いた。
そして、俺たちはその日、「偽の恋人」になった。
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