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事故つがいの夫が僕を離さない!
軌跡 Side理人⑤
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当時を思い出していた。
前原さんに言われたときは、結婚のことなんて微塵も考えられなかった俺なのに、天音のヒートに遭遇した瞬間、全責任を負う覚悟ができていた。
未成年だったが、俺は天音の隣で、一緒に未来を歩んでいくんだと。
ただ、つがいになってからの五年間は天音に嫌われていると思い込んでいたから、全然駄目なつがいで夫だったけれど……
「……ねえ、天音」
「なあに?」
まだ少しだけふくれっ面だが、天音の頬を包むと俺をしっかりと見つめてくれる。
当時も、あれからの五年も、天音は俺を直視してくれなかった。
でも今は、いつでも俺を見ていてくれる。
他人から見つめられることにあれほど嫌悪感を抱いていたのに、天音にはずっと見つめられていたい。俺のことを愛情で雁字搦めにしてほしいし、俺もそうしたい。
「好きだよ。愛してる」
「も、もうっ、理人ったらまたこんな街中で突然! あっ、昔の彼女のこと、誤魔化そうとしてるんでしょ!」
「ふふ。彼女は彼女じゃなかったけど、ヤキモチがうれしいいから、そういうことにしておこうかな」
もう俺が彼女を思い出す日も二度とないだろうし、俺には、天音がすべてだから、いいよね?
「えっ? どういう意味?」
「いいのいいの。さ、シーツ買っちゃお。そのあと、行きたいところがあるんだからさ」
天音と指を絡め直し、ぎゅっと握って歩き出す。
「行きたいところ? どこ?」
天音が俺を見上げ、また瞳を見つめてくれる。
「着くまでナーイショ」
その場所に到着したときの天音の表情を思い浮かべると、ホクホクとした気持ちになる。
俺の愛するつがいは最初は目を丸くするだろう。
それから俺を見てぽかんとして、それからきっと涙を浮かべながらも、頬を桃色に染めて笑ってくれるだろう。
「理人が行き先を決めるって珍しいよね」
隣同士で座るバスの中。
天音は期待に満ちた眼差しを俺に向けている。
「いつもは僕が行きたいところとか、したいことを優先するでしょう?」
「うーん。でも、天音が行きたいところが俺の行きたいところで、したいことが俺のしたいことでもあるから、優先とは言わないと思うよ?」
返事をしながら手を握ると、天音は「うぅ」と言いながら頬を薄桃色にして、俺の手に手を重ねた。
一日のうちで頬が染まっていないことのほうが少ないかも。色白だからすぐに出るんだよね……愛おしすぎるよ、天音は。
そして天音は、さらに愛おしいことを言ってくれる。
「それは僕もだけど……デートの場所だけじゃなくて、理人はいつも僕の気持ちを優先してくれるんだもの。幸せだけど、だからこそ僕も理人のお願いをたくさん聞いて、幸せを感じてほしいよ」
「充分過ぎるくらい、毎日幸せだよ。天音が隣にいてくれるだけで、俺は宇宙一幸せだ」
「ぼ、僕だって……」
手をぎゅっとしてくるの、マジ可愛いな。唇を結ぶのも、口がバッテンのうさぎのキャラクターみたいで、ほんっっとに可愛い。
ただ、前後横の席の人も頬を赤くしていたり、ソワソワしている様子だ。そろそろ睦言は自粛しておこうか。
それにしても、俺のつがいはどんなに時を経ても純粋無垢だ。
それに、すこぶる天然さんだ。ベッドの上での俺が、お願いどころかわがまま放題だって、思っていないのかな?
なら少し、イタズラなことを言ってしまおう。
「うん……わかった。それじゃあこれから、もっともっとわがままになるね」
「わがまま? 理人がわがままなんて、想像つかないけど嬉しい!」
「ふふ、後悔しないでね」
思わず吹き出すと、天音は「しないよ、後悔なんて」と得意げな表情になる。
可愛いけどそれ、ホントかなあ。
絶対に理解していないだろう天音を愛しく見つめていると、バスが目的の停留所の案内を知らせた。
俺は腕を伸ばし、降車ボタンを押す。
「次で降りるの?」
「うん」
当時を思い出していた。
前原さんに言われたときは、結婚のことなんて微塵も考えられなかった俺なのに、天音のヒートに遭遇した瞬間、全責任を負う覚悟ができていた。
未成年だったが、俺は天音の隣で、一緒に未来を歩んでいくんだと。
ただ、つがいになってからの五年間は天音に嫌われていると思い込んでいたから、全然駄目なつがいで夫だったけれど……
「……ねえ、天音」
「なあに?」
まだ少しだけふくれっ面だが、天音の頬を包むと俺をしっかりと見つめてくれる。
当時も、あれからの五年も、天音は俺を直視してくれなかった。
でも今は、いつでも俺を見ていてくれる。
他人から見つめられることにあれほど嫌悪感を抱いていたのに、天音にはずっと見つめられていたい。俺のことを愛情で雁字搦めにしてほしいし、俺もそうしたい。
「好きだよ。愛してる」
「も、もうっ、理人ったらまたこんな街中で突然! あっ、昔の彼女のこと、誤魔化そうとしてるんでしょ!」
「ふふ。彼女は彼女じゃなかったけど、ヤキモチがうれしいいから、そういうことにしておこうかな」
もう俺が彼女を思い出す日も二度とないだろうし、俺には、天音がすべてだから、いいよね?
「えっ? どういう意味?」
「いいのいいの。さ、シーツ買っちゃお。そのあと、行きたいところがあるんだからさ」
天音と指を絡め直し、ぎゅっと握って歩き出す。
「行きたいところ? どこ?」
天音が俺を見上げ、また瞳を見つめてくれる。
「着くまでナーイショ」
その場所に到着したときの天音の表情を思い浮かべると、ホクホクとした気持ちになる。
俺の愛するつがいは最初は目を丸くするだろう。
それから俺を見てぽかんとして、それからきっと涙を浮かべながらも、頬を桃色に染めて笑ってくれるだろう。
「理人が行き先を決めるって珍しいよね」
隣同士で座るバスの中。
天音は期待に満ちた眼差しを俺に向けている。
「いつもは僕が行きたいところとか、したいことを優先するでしょう?」
「うーん。でも、天音が行きたいところが俺の行きたいところで、したいことが俺のしたいことでもあるから、優先とは言わないと思うよ?」
返事をしながら手を握ると、天音は「うぅ」と言いながら頬を薄桃色にして、俺の手に手を重ねた。
一日のうちで頬が染まっていないことのほうが少ないかも。色白だからすぐに出るんだよね……愛おしすぎるよ、天音は。
そして天音は、さらに愛おしいことを言ってくれる。
「それは僕もだけど……デートの場所だけじゃなくて、理人はいつも僕の気持ちを優先してくれるんだもの。幸せだけど、だからこそ僕も理人のお願いをたくさん聞いて、幸せを感じてほしいよ」
「充分過ぎるくらい、毎日幸せだよ。天音が隣にいてくれるだけで、俺は宇宙一幸せだ」
「ぼ、僕だって……」
手をぎゅっとしてくるの、マジ可愛いな。唇を結ぶのも、口がバッテンのうさぎのキャラクターみたいで、ほんっっとに可愛い。
ただ、前後横の席の人も頬を赤くしていたり、ソワソワしている様子だ。そろそろ睦言は自粛しておこうか。
それにしても、俺のつがいはどんなに時を経ても純粋無垢だ。
それに、すこぶる天然さんだ。ベッドの上での俺が、お願いどころかわがまま放題だって、思っていないのかな?
なら少し、イタズラなことを言ってしまおう。
「うん……わかった。それじゃあこれから、もっともっとわがままになるね」
「わがまま? 理人がわがままなんて、想像つかないけど嬉しい!」
「ふふ、後悔しないでね」
思わず吹き出すと、天音は「しないよ、後悔なんて」と得意げな表情になる。
可愛いけどそれ、ホントかなあ。
絶対に理解していないだろう天音を愛しく見つめていると、バスが目的の停留所の案内を知らせた。
俺は腕を伸ばし、降車ボタンを押す。
「次で降りるの?」
「うん」
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