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お仕事開始とあの夜と
③*
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「んっ……」
生まれて初めてのキスだった。
小鳥の羽根でくすぐるように、静かに微かに唇が擦れる。
「やだっ、これっ、いらないっ……」
濃厚なキスを望んでいるわけじゃない。でもどう考えてもこの状況にそぐわない、幼い子供をあやすようなキスをされるのはもっと嫌だった。
僕は子どもじゃない。慰めとか、甘やかしなんていらない。何も考えられなくなるくらい、強く咬みついて、痛くしてくれたらそれでいい。
千尋は首を振って抵抗した。
「しー。静かにして。ゆっくり、ゆっくりと俺の感触を感じて?」
短くなった髪の中に指を入れられ、柔く固定される。下唇を挟まれてちゅる、と吸われた。
「ん、んんっ」
ほんの少しの濡れた感触がきぃんとにうなじに響いて、反射的に唇の結びを解いた。
瞬時に唇を塞がれ、肉厚なぬめりが歯列を割って口内に入ってくる。同時に、首筋から鎖骨を渡ってきた指が凝った胸先に辿り着いた。
「は、あ、ぁやだっ……怖い、怖いっ」
口の中が熱い。意識とは無関係に唾液が溢れ出てくる。
尖った舌で歯茎や上顎を舐られると、粘膜がじゅわりと溶けていく錯覚に陥った。
張りつめた薄桃色の胸先を指で挟まれ、先端をくにくにとよじられれば、じんじんしてじっとしていられず、身を小刻みに揺らしてしまう。
かつてこんなふうに触られたことも、感じたこともない。クラブではわかりやすい痛みを与えてもらい、それが去ったあとの解放感で感じていたから。
「専務、も、やです、怖いっ……」
「怖くないよ。ほら、ここはこんなに感じてる」
後孔の表面をくるりと撫でられた。濡らしている自覚はあったが、きっと生きてきた中で一番濡れている。
光也の指は千尋が滲ませた蜜の力を借りて、秘められた内部へと侵入した。
「あぁ、っ……」
そこは、自分でなら幾度も触れてきた。課長に蔑まれるのを想像しながら玩具を入れたこともある。
でも、光也の指は玩具や妄想とはまるで違った。
男らしい指で肉壁をこすられると、連動して腹の奥がきゅうきゅうと疼き、疼きは背筋を駆け上がってうなじを熱くさせる。
「こんなにフェロモンを溢れさせて……部屋じゅうに香りが広がってる。千尋の香りは甘くて蠱惑的で、クチナシみたいだね」
違う、違う……千尋には自分の匂いはわからないし、部屋がどんな匂いになっているのかなどわからない。けれど千尋を苦しくさせる甘ったるい香りなら、光也自身からも、千尋の体に落ちる光也の汗からも薫っている。
「クチナシ……そうだ、クチナシ! それは、専務の香りです。専務、自分の香水の匂いを、僕って、勘違いして、るっ……」
息が切れ切れになりながらも懸命に言うと、光也の顔がほころんだ。
「香水? 俺はつけていない。ねぇ千尋、君は俺に同じ匂いを感じているんだね? 俺の両親と同じだ。やっぱり俺達は運命の番なんだよ」
「ぁ……?」
この人は何を言っているのだろう。そんな話は聞いたことがない……と思う余裕は一瞬だけだった。
再び唇を塞がれ、今度こそ咬みつくようなキスをされる。
生まれて初めてのキスだった。
小鳥の羽根でくすぐるように、静かに微かに唇が擦れる。
「やだっ、これっ、いらないっ……」
濃厚なキスを望んでいるわけじゃない。でもどう考えてもこの状況にそぐわない、幼い子供をあやすようなキスをされるのはもっと嫌だった。
僕は子どもじゃない。慰めとか、甘やかしなんていらない。何も考えられなくなるくらい、強く咬みついて、痛くしてくれたらそれでいい。
千尋は首を振って抵抗した。
「しー。静かにして。ゆっくり、ゆっくりと俺の感触を感じて?」
短くなった髪の中に指を入れられ、柔く固定される。下唇を挟まれてちゅる、と吸われた。
「ん、んんっ」
ほんの少しの濡れた感触がきぃんとにうなじに響いて、反射的に唇の結びを解いた。
瞬時に唇を塞がれ、肉厚なぬめりが歯列を割って口内に入ってくる。同時に、首筋から鎖骨を渡ってきた指が凝った胸先に辿り着いた。
「は、あ、ぁやだっ……怖い、怖いっ」
口の中が熱い。意識とは無関係に唾液が溢れ出てくる。
尖った舌で歯茎や上顎を舐られると、粘膜がじゅわりと溶けていく錯覚に陥った。
張りつめた薄桃色の胸先を指で挟まれ、先端をくにくにとよじられれば、じんじんしてじっとしていられず、身を小刻みに揺らしてしまう。
かつてこんなふうに触られたことも、感じたこともない。クラブではわかりやすい痛みを与えてもらい、それが去ったあとの解放感で感じていたから。
「専務、も、やです、怖いっ……」
「怖くないよ。ほら、ここはこんなに感じてる」
後孔の表面をくるりと撫でられた。濡らしている自覚はあったが、きっと生きてきた中で一番濡れている。
光也の指は千尋が滲ませた蜜の力を借りて、秘められた内部へと侵入した。
「あぁ、っ……」
そこは、自分でなら幾度も触れてきた。課長に蔑まれるのを想像しながら玩具を入れたこともある。
でも、光也の指は玩具や妄想とはまるで違った。
男らしい指で肉壁をこすられると、連動して腹の奥がきゅうきゅうと疼き、疼きは背筋を駆け上がってうなじを熱くさせる。
「こんなにフェロモンを溢れさせて……部屋じゅうに香りが広がってる。千尋の香りは甘くて蠱惑的で、クチナシみたいだね」
違う、違う……千尋には自分の匂いはわからないし、部屋がどんな匂いになっているのかなどわからない。けれど千尋を苦しくさせる甘ったるい香りなら、光也自身からも、千尋の体に落ちる光也の汗からも薫っている。
「クチナシ……そうだ、クチナシ! それは、専務の香りです。専務、自分の香水の匂いを、僕って、勘違いして、るっ……」
息が切れ切れになりながらも懸命に言うと、光也の顔がほころんだ。
「香水? 俺はつけていない。ねぇ千尋、君は俺に同じ匂いを感じているんだね? 俺の両親と同じだ。やっぱり俺達は運命の番なんだよ」
「ぁ……?」
この人は何を言っているのだろう。そんな話は聞いたことがない……と思う余裕は一瞬だけだった。
再び唇を塞がれ、今度こそ咬みつくようなキスをされる。
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