事故つがいの夫が俺を離さない!

カミヤルイ

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1巻

1-1




   プロローグ


「エルフィー・セルドラン、結婚しよう」

 そう言ったあと、リュミエール王国の若き黒豹と称揚しょうようされる男が俺の前でひざまずいた。
 手には白薔薇のラウンドブーケ。いつもは無造作な黒い短髪を後ろに撫で付け、騎士が慶事の儀式のときにだけ着用する、白地に金の縁取りの軍服をきっちりと着込んでいる。

「一切の責任は俺が取る。結婚、しよう」

 幻聴かと、第一声にはぽかんとしていた俺の耳に、二度目のプロポーズの言葉が届いた。
 彼の黄金色の瞳は、まっすぐに俺を射貫いている。

「お、お、俺? 俺とクラウスが、結婚⁉」

 思いも寄らないプロポーズに、俺の声は裏返った。
 頼むから冗談だと言ってくれ。つがいが成立してしまったとはいえ、クラウスと俺とは「事故つがい」だ。
 俺がつがいになりたかったのはクラウスじゃない。
 クラウスと結婚なんて、天地がひっくり返ってもあり得ない。
 誰か、あの日の俺に言ってやってくれないか。
 大変なことになってしまうから、あんなものをお守りにするなんて、やめておくんだって。



   第一章 卒業式、俺は憧れの人に告白をする


 澄み切った青空に、白光りするすじ雲がいくつもの薄い線を描く秋の始まり。
 大講堂の鐘が祝福の音を響かせた直後、高い空に赤、青、黄、緑の角帽が舞い上がった。
 今日は十三歳から五年間通った王立アカデミーの卒業式だ。

「卒業おめでとう! エルフィー」
「ニコラ、おまえも!」

 治癒魔法科の列で前後に並んでいた双子の弟、ニコラと最初に抱き合うと、クラスメイトたちも「わあっ」と歓声を上げて抱きついてきた。皆でもみくちゃになりながら祝い合う。

「わぁぁぁぁ! クラウス! フェリクス!」

 別の列からも歓声が上がる。
 視線を移せば、アカデミーで二大人気を誇る国防騎士科のクラウス・モンテカルストと、商業流通科のフェリクス・アーシェットが握手と抱擁を交わしているところだった。
 第二性バースがアルファのふたりはそれぞれの科の首席で、親友同士だ。

「はぁ……クラウス、凜々りりしい……」

 俺の体から腕を下ろすと、ニコラは胸の前で手を組み、感嘆のため息混じりにつぶやいた。
 視線の先にいるのは、言葉どおりクラウスただひとり。
 クラウスは、このリュミエール王国の二大公爵家のひとつ、モンテカルスト家の後嗣こうしだ。卒業後は王都騎士団で国防に従事し、将来は現モンテカルスト公爵の跡を継いで、国防長官の座に就くだろうと今から期待されている。
 騎士らしく長身で筋肉が張った屈強な体つきに、性格まで鋼みたいに真面目一辺倒なクラウス。
 アカデミーでの人気は男子八割・女子二割というところで、俺も残り八割の女子と同じく、彼を堅物で面白味がない男だと思う。
 それでもニコラは、クラウスのそんな寡黙で真面目なところが好きなんだと言う。
 俺にはわからない。だって、俺が好きなのは……

「はぁ……フェリクス、麗しい……」

 俺の瞳に映るのは、女子人気八割・男子人気二割、クラウスとは正反対のフェリクス。
 プラチナブロンドの長いストレートヘアを風に揺らし、今日の蒼天のような美しいセルリアンブルーの瞳を細めて微笑むその人は、もうひとつの公爵家、アーシェット公爵家の三男だ。
 彼の父上は王国宰相で、兄上たちもこのアカデミーでアルファだけの国政運営科を卒業したのち、王国議会議員として活躍している。
 そんな家庭環境にありながら、フェリクスは別の視点から公爵家を盛り立てたいと熱望し、アルファにもかかわらず、自らベータばかりの商業流通科に籍を置いて学んだ。
 さらに彼は学生のうちに人脈を広げ、すでにいくつかの事業を展開している。
 ――ああ、美しくて話し上手、そのうえ敏腕で有能で優しくて聡明で優雅で……それからそれから。
 とにかく、愛読書のロマンス小説に出てくる王子様みたいなフェリクス。
 君とつがいになりたい……!
 入学の日、フェリクスは、俺のピンクブロンドの髪をひと束指に絡め、「オメガちゃんは髪の色まで可愛いんだね。まるでリュミエールの桃色ウサギみたいだ」って、微笑みかけてくれた。
 俺はあの一瞬で恋に落ちたんだ。
 隣にいたニコラは「気障きざで無駄にキラキラしてて、胡散臭いよ。僕は苦手だな」と言ったけれど、ニコラとは双子でも幼い頃から好みが違う。
 俺はそのことについて深く感謝している。仲良しの弟と好きな人が一緒だなんて、絶対にいいことないから。
 俺がフェリクスを、ニコラがクラウスを、横並びの同じポーズでうっとりと見つめていると、背後でクラスメイトの男女が話し始めた。

「あのふたりの姿を近くで拝めるのも、今日が最後かな」
「そうね、アカデミーを卒業すれば、高貴な身分の彼らと私たちとでは住む世界が違うもの。でも」

 女子生徒はそこでいったん会話を止めると、俺にも声をかけてくる。

「ふたりはクラウスとはお付き合いが続くのよね? セルドランラボラトリーの創業時に、モンテカルスト公爵家が出資した頃からのご縁なんでしょう?」

 セルドランラボラトリーというのは、俺たち双子のひいおじい様が創設した癒薬品いやくひん会社だ。
 ひいおじい様は俺たちくらいの年の頃、オメガのフェロモンに万病に効く成分が含まれていることを発見した。あわせてオメガの手のひらから誘淫力のないフェロモンが出ていて、小さな病気や怪我なら治せることも。
 それを「治癒魔法」と名付けたひいおじい様は、魔法で癒薬いやしぐすりを錬成する事業をおこし、モンテカルスト公爵家からの出資で成功すると、オメガのための治癒魔法科をアカデミーに設置申請した。そのときも賛助してくれたのは、当時のモンテカルスト公爵だ。
 そしてそれ以降現在でも、モンテカルスト公爵家、つまりクラウスの家からラボへの協賛は続いている。
 というわけで、クラウスとは卒業後も関係が続くかと問われれば……

「うん、まあ、そうだね」

 俺がそっけなく頷くものの、女子生徒は気に留めず、次にニコラに話しかけた。

「なんといってもニコラとクラウスは、特に懇意ですものね」
「う、うん! 家同士の繋がりで、アカデミーに入学する前くらいまでよく遊んだ幼馴染なんだ。だからいつも僕を気にかけてくれるの」

 ニコラの表情がパッと華やぐ。
 素直な反応が可愛い。クラウスもニコラのこういうところを好んでいるんだろう。
 女子生徒もふわっと表情を緩めると、悪戯いたずらっぽくニコラに聞いた。

「皆、ふたりは将来つがいになると噂しているわ。実際のところどうなの?」
「や、やだ、そんな。そんな、つがいだなんて! そうだね……なれたら嬉しいな……」

 首を左右に振りながらも、ニコラは頬を赤らめて、嬉しそうに返事をする。そのままニコラと女子生徒が恋愛話に花を咲かせ始めると、男子生徒は思い出したように俺に訊ねてきた。

「そういえば同じ幼馴染なのに、エルフィーとクラウスは全然接点がなかったよな? どうしてだ?」

 俺は無意識に地面の小石を蹴っていたことに気づき、それをやめた。

「さあ……どうしてだっけ。いいじゃん、そんなこと」

 だって面白い話じゃない。ある日クラウスが一方的に俺だけを避けるようになった、なんてさ。俺だっていまだに理由がわからないんだ。

「ふうん。ま、エルフィーはフェリクスにお熱だったものな。でもエルフィーが治癒魔法科の首席でアカデミー内では対等だったとはいえ、卒業したらフェリクスとは縁遠くなるんじゃ? 公爵家令息のフェリクスには、卒業と同時にしかるべきお家柄のアルファ令嬢たちが未来の妻候補として集うだろうし」

 そのとおりだ。
 俺は苦い気持ちで足元を見つめた。
『誰もが等しく切磋琢磨せっさたくまする同輩であれ』という校訓のこのアカデミーの中でしか、平民の俺と公爵家ご令息のフェリクスとの接点はない。卒業してしまえば礼儀としての挨拶や、同窓生としての多少の会話、よくいって事業での関わりはあるとしても、それ以上はない。
 だから今日が、フェリクスに思いを伝えることができる、最後の日。
 俺は今夜、プロムパーティーのあとにフェリクスを呼び出し、気持ちを伝えると決めている。
 細く息をついて決意を新たにし、顔を上げる。けれどそこで、男子生徒が思わぬことを口にした。

「エリートアルファと平民オメガが結婚するには、ヒートトラップでも起こして無理やりつがいになるしかないぜ? ほら、セルドランラボの新しい薬、ヒート誘発剤なんだろ?」
「な、なに言って……」

『ヒートトラップ』に『ヒート誘発剤』。この単語を聞いて、心臓がきゅっと縮んだ。
 俺たちオメガは男女どちらも生殖機能を持ち、三月みつきに一度の七日程度、繁殖行動せいよくだけにすべてを支配される発情期がある。そして、発情状態を指す『ヒート』になると、意思とは関係なくアルファの理性を奪い、劣情を誘うフェロモンを発する特性を持っている。

「ヒートトラップ⁉ なに言ってるの、野蛮だわ!」
「わ、君、聞いてたのか。冗談だよ冗談。それくらい難度が高いって意味だって」

 動揺している俺の横で、目くじらを立てて怒る女子生徒と、笑って誤魔化そうとする男子生徒。

「ヒートのときにわざとアルファに近づくとか、薬で強制的にヒートを起こしてアルファとつがうとか、最低! そうやってになっても互いに不幸になるだけよ。ヒートトラップなんて、絶対に駄目よ。ね、ニコラ?」

 女子生徒は釈明し続ける男子生徒を無視して、ニコラに同意を求めた。

「えっ? う、うん……エルフィーはどう思う?」
「えっ、俺?」

 品行方正なニコラならすぐに女子生徒に同意すると思ったのに、身を小さくしている男性生徒に気を遣ったのか、返答を濁して俺に振ってくる。
 ニコラだけじゃなくふたりにも視線を向けられて、俺は唾を呑み下してから答えた。

「も、もちろん、駄目に決まってる」

 ぎこちなくないかな、俺。気取られてないかな、俺。
 実は俺がヒート誘発剤を持っていて「これを使ったらフェリクスとつがいになれるのかな」なんて一瞬でも考えてしまったことを。
 もちろん今はそんなつもりはない。俺は自分の力で恋を叶えると決めている。
 ……よし、行動開始だ。 
 俺の答えに「そうよね」と満足げに頷いた女子生徒と、女子生徒の憤慨が落ち着いたことにホッとした様子の男子生徒とニコラに断り、商業流通科の列へ向かって駆け出す。
 気持ちが強くあるうちに、フェリクスとの約束を取り付けるのだ。

「フェリクス!」

 フェリクスはまだクラウスと談笑中で、その周囲をたくさんの生徒たちが囲んでいる。
 身長が百七十センチに満たない俺は、人垣の外側から背伸びをしてフェリクスを呼んだ。

「ん? そのピンクの髪は、エルフィーだね? ……ちょっと失礼」

 フェリクスはわざわざ話を中断して、人垣を掻き分けてきてくれる。
 取り巻きのご令嬢・ご令息の顔には「治癒魔法科オメガがフェリクスになんの用?」と書いてあるものの、奥ゆかしい良家の彼らは公爵令息の行動に口出しをしない。
 フェリクスは貴族らしい上品な笑みを浮かべて、俺の前に立った。

「どうしたの? プロムでは俺からダンスを申し込むつもりではいたけど、そのお誘いかな?」

 俺と踊ってくれるつもりでいたんだと、その言葉に嬉しさが募る。だけど、ダンスだけで今夜を終わらせたくない。
 俺は緊張で汗をかいている手を握りしめて、矢継ぎ早に言葉を連ねた。

「話に割って入ってごめん。うん、ダンスもそうなんだけど、あの、あのさ、卒業を機に君に話したいことがあるんだ。西館の談話室を借りたから、プロムのあとで寄ってくれないかな?」

 言い切れた。その達成感にほっと小さく息を吐いて、胸を撫で下ろす。
 けれどフェリクスは「ええと……」と言って、戸惑うような表情を見せた。
 普通に考えて「愛の告白」だろうと取れるから、困ってる? それとも先約が? どうしよう、告白する機会さえ与えられなかったら。
 途端に居たたまれなくなり、視線を横にずらした。すると、元の位置でフェリクスを待っていると思われるクラウスと視線がぶつかった。
 クラウスは苦々しげに眉をひそめて俺を見ている。
 平民が公爵家令息に告白なんて無礼だと思っているのか、無駄なことはやめておけと思っているのか。またはその両方だろうか。
 俺はクラウスからも視線を外し、長く感じられる沈黙に耐えかねてうつむいた。
 優しい声が頭の上から降り注いだのは、その直後だ。

「あのね、エルフィー。俺は役員代表だろ? 片付けや打ち上げなんかもあって、遅くなりそうなんだ。それでも大丈夫かい? 今日から寄宿舎じゃなくて自宅に帰ることになるけど、帰宅が遅くなるとご両親が心配しないかな?」

 フェリクスがイエスで答えてくれて、そのうえ心配までしてくれた。
 天にも昇れそうなほど背筋が伸び、俺の視線は彼の元へと戻る。

「大丈夫! きてくれるまでずっとずっと待ってるから、絶対にきて」
「熱烈だね。どんなお話を聞かせてくれるのかな」

 フェリクスがふふ、と魅惑的に口角を上げる。次に俺の顔回りの髪を指に絡めると、耳元に顔を寄せて囁いた。

「楽しみにしてるね」
「わっ……」

 かすかな息が耳たぶにかかり、甘い声が耳の中に直接入ってくる。
 これって脈アリなのでは……ったとうもろこしが跳ねるみたいに、期待に胸がはずんだ。

「じゃあ、俺はそろそろ準備に向かうね。お互いにドレスアップして、サロンで会おう」

 フェリクスの指が髪から離れる。俺は耳と頬を熱くしたまま頷いて、彼の背中を見送った。
 その流れでクラウスの姿が目に入る。いつの間にかニコラもこちらにきていたようで、ふたりで談笑していた。
 ああ、いい雰囲気だ、と自然と口元がほころぶ。
 普段は表情筋が死んでいるクラウスも、ニコラとは優しい表情で話すのだ。女子生徒が言っていたように、アカデミー内では「ふたりは将来つがいになるのでは?」と噂していた生徒も多い。
 ――だけど、本当に、なにが原因だったんだろう。
 俺はふたりの和やかな様子を微笑ましく思いながらも、胸の奥がちりりと痛むのを感じた。
 ニコラと俺は一卵性の双子で、つむじの位置以外見た目はまったく同じだ。それなのにクラウスは、いつの頃からか露骨に俺だけを避けるようになった。
 アカデミー内でも常に目をそらされていたし、この五年間で会話をしたのは数えるほど。
 幼い頃はどちらかというと、室内遊びが好きなニコラよりも、外遊びが好きな俺と気が合っていたと思うのに――
 まあ……今さらもうどうでもいい。俺が好きなのはフェリクスで、クラウスを好きなのはニコラだ。クラウスがニコラを幸せにさえしてくれたら、なにも言うことはない。
 ニコラもプロムのあとに、噴水広場にクラウスを誘って告白するそうだ。
 ニコラ、俺は半身であるおまえの幸せを心から祈ってる。これだけいい雰囲気なんだから、ニコラの気持ちは絶対にクラウスに受け入れてもらえるよ。
 心の中でそう声援を送っていると、フェリクスが遠くからクラウスに声をかけた。「クラウスも早く準備に取り掛かれ」と言っている。
 クラウスはフェリクスに手を上げて応じると、ニコラに「では、また」と軽くお辞儀をして、俺のいる方向に向かって足を踏み出した。
 ……うわ、睨んでくる。
 クラウスが俺の横を通り過ぎる瞬間、彼からの強い視線を感じ、俺は顔をしかめた。
 鍛錬で浅く日焼けした肌に、なににも染まらない意志を表すような漆黒の髪。そして、若き黒豹と言われるように光を受けると輝く黄金色の瞳は、人に畏怖の念を抱かせる。そんな彼は国を守る騎士としては最高なんだろう。
 だからって、曲がりなりにも幼馴染に睨みを利かせる必要はないと思う。
 まあ、それももう今さらだ。クラウスの態度に腹を立てている時間がもったいない。フェリクスのダンスの相手として相応しくあるよう、準備万端にするんだから。

「ニコラ、俺たちも着替えに行こう」

 俺はニコラを手招いて、いったん治癒魔法科の寄宿舎に戻り、自分たちの部屋で着替えを始めた。
 プロムのためにお揃いで作ってもらったのは、背面から見ればドレスに見えるローズピンクのロングジャケットだ。中には小花の刺繍をあしらったフリルつきのブラウスに、光沢のある細身のホワイトブリーチズ。靴は編み上げの白いロングブーツ。

「オーケー。ニコラ、仕上げだ」

 ふたりで着替えた最後に、女性やオメガの間で流行しているリップを唇に乗せようとすると、ニコラが首と両方の手のひらを振った。

「やっぱり僕、こんな派手な格好はできないよ」
「え~? 俺、そんなにおかしい?」

 ニコラの前で立って、全身を見せる。鏡なんかなくても、俺たちが向かい合えば鏡と同じだ。
 するとニコラは、また首を横に振った。

「ううん。エルフィーはとても綺麗だよ。フェリクスとのファーストダンスの相手として申し分ない」
「だろ?」

 ウィンクしてみせるものの、ニコラはそれでも首を縦には振らない。

「でもね、クラウスは華美なのを好まないと思うんだ。前に、僕がエルフィーのお気に入りの服を貸してもらったときも、エルフィーがフェリクスの誕生日にとびっきりのお洒落をしてお祝いに駆けつけたときも、クラウスは苦い薬でも飲んだような表情だった。きっと彼は、男が女の子みたいにお洒落をするなんておかしいと思ってるんだよ」
「は、なんだよそれ」

 お洒落に男も女も関係あるか。フェリクスなら俺が新しい靴を下ろしたときや、髪を少し揃えただけでも「素敵だね」とわざわざ声をかけにきてくれるんだぞ。……まあ、俺にだけじゃなく、皆に分け隔てなくだけど!
 ニコラだってクラウスに褒めてほしくてお洒落をしたのに、クラウスってば、オメガ心のわかんないやつ! これだから堅物唐変木とうへんぼくは駄目なんだ。
 かといってクラウスを思うニコラの気持ちを無視することはしたくない。
 俺は、ニコラを上から下まで眺めて、いくつかの調整策を考えた。

「じゃあ、ニコラはクラウス仕様にしておこう。シャツの裾と袖口のフリルはなし。リップも塗らない。それでいい?」

 本当は、ニコラのために血色がよく見えるリップを買って用意していた。
 ニコラはもともと努力家だけれど、五年生になってからさらに学業に打ち込み、徹夜も辞さないことが増えた。卒業式直前まであったテストが終わってからもなお、ラボで扱う癒薬関連の勉強や魔法の取得に余念がなく、外で活動することも少ないためか、常に顔が青白い。
 ただしそれは言わずにおく。ニコラは努力している姿を人に……特に俺に指摘されるのを好まないから。

「うん! ありがとう、エルフィー。エルフィーは頼れる兄さんだ」
「こんなときばっかり兄さんって言うんだから。でも弟よ、可愛いから許す」
「兄さん大好き! どうかお互いの恋が叶いますように」

 屈託なく微笑むと、ニコラはジャケットを脱いでフリルを外し始めた。
 その間に、俺はさっきまで着ていたアカデミック・ガウンのポケットから真鍮のピルケースを取り出し、ジャケットの内ポケットに大事に収める。
 ピルケースの中、常備のヒート抑制剤の他にもうひとつ入れているのは、セルドランラボ最新のソフトカプセル型ヒート誘発剤だ。
 ヒート誘発剤は発情期のないオメガや不妊のオメガに使うもので、カプセル型は、カプセルを指で潰すと中の液状薬が気化して効果を発する、という優れものだ。
 オメガフェロモンを利用した癒薬は多々あるけれど、オメガフェロモンを口にすることを敬遠するアルファやベータがまだ多いこと、飲み薬では体質により効果に個人差が大きいことが考慮され、ここ一年でソフトカプセル型の錬成を進めてきた。
 先んじて始めたこの錬成には俺も携わったし、フェロモンも俺のものを使って、先月ようやく成功したのだ。
 だから俺は、さまざまな苦労を越えて錬成したこの薬をいつも持っている。
 そして今夜は特に、困難なことをやり遂げるお守りとして、告白のときに持っていようと思う。

「エルフィー? エルフィーったら」

 ポケットの上からピルケースをギュッと握り、成功を祈っていると、後ろから支度が終わったらしいニコラにつつかれた。

「さっきから呼んでるのに、やっと気づいた。そろそろ向かおうよ」
「ごめんごめん。うん、行こう」

 勇気で胸を満たした俺はポケットから手を下ろし、ニコラと並んで部屋を出た。
 プロムパーティーの会場は、卒業式式典がり行われた大講堂の二階にあるサロンだ。
 王国随一であるこのアカデミーの施設はどれも立派だけれど、サロンは特に、王城の大広間を模したしつらえになっている。
 古代の神々の遊宴の様子がフレスコ画で描かれたドーム型の天井。そこから吊るされたいくつもの壮麗なシャンデリア。緞子どんす張りの壁には美しい絵画が飾られ、バランスよく配置された柱には繊細な彫刻。大理石の床は、シャンデリアの細工がはっきりと映るほどに磨き抜かれている。
 けれど俺の瞳はその豪奢な内装ではなく、すぐにフェリクスを探して彷徨さまよった。
 ……いた! 
 フェリクスは、最高に見目麗しかった。品のあるシャンパンゴールドのテールコートを着て、長い髪を美しい編み込みにして後ろで束ねている。
 まさにロマンス小説の王子様だ。口にするのははばかられるものの、リュミエール王国の王太子殿下よりも王子様感があると思う。
 あまりの麗しさに気後きおくれして、自分から声を掛けられずにいるうちに、生徒全員が揃った。
 役員代表のフェリクスが挨拶をし、高らかにプロムパーティー開始の宣言をする。

「生徒諸君、改めて卒業おめでとう! 今宵は紳士淑女として、おおいに楽しもう!」

 乾杯! と言葉が続き、生徒たちがシャンパンを掲げた。
 初めてのアルコールは口当たりが良く、甘くておいしい。少し飲んだだけなのに、もう酔ってしまいそうだ。
 だけどこのあと、フェリクスがダンスを申し込んでくれるんだから、待っていなきゃ。
 そう思いながら背筋をしゃんと伸ばし、今はまだ遠くにいるフェリクスを見つめた。
 どんな舞踏会でも、ファーストダンスには特別な意味が込められている。妻や恋人、またはその候補が相手をになうからだ。
 期待に高揚感が増していく胸を両手で押さえる。
 フェリクスがシャンデリアのきらめき以上にまぶしくて、目を細めながらも視線を送った。
 それなのになぜだろう。ゆっくりと歩き出したフェリクスの瞳には、俺は映っていなかった。
 彼は華やかな赤いドレスを着たアルファの伯爵令嬢の元へと向かい、ファーストダンスを申し込む。
 伯爵令嬢はフェリクスの手を取ると、ホールの中央へ進みつつ俺をちらりと見て、片側の口角を上げた。
 そしてセカンドダンスも、フェリクスは俺を誘いにはきてくれなくて───
 俺は軽やかに舞う舞踏会の主人公たちを、悄然と見ているだけの外野になっていた。

「……エルフィー」

 気づくと、ニコラが俺のジャケットの袖口を心配そうに握っていた。

「あの、あのね、フェリクスは役員代表だし、公爵家令息だし……そうだ、事業のお付き合いもあるから、だからそういう人たちを優先しただけだと思うよ? 気にしちゃ駄目」
「うん。そうだな」

 そう思おうとしている。けれど気持ちがついていかない。ダンスを申し込むと言われて、ファーストダンスの相手になれるんだと思い違いをしていた自分が恥ずかしい。
 俺は苦笑しつつ、ニコラを見て首を横に振った。

「心配かけてごめん。俺のことはいいから、ニコラはクラウスと踊りなよ。まったく、クラウスも誘いにもこないで、どうしてるんだ?」
「乾杯のあと、すぐに姿が見えなくなっちゃったんだ。役員のお仕事でもあるのかなぁ」

 ニコラは俺の袖口から手を離し、サロン内に視線を移す。
 俺も一緒になり、ふたりで中を見回すもののクラウスは見当たらない。役員でもプロム中は役目なんてないはずだし、あれだけ背の高い男だ。いなくなるときはわかりそうなものなのに、俺はフェリクスばかり見ていたから……
 ニコラへの気遣いが欠けていたことを自省しつつ、再びサロンの左右に目を動かしていると、二曲目の演奏が終わりを告げた。
 俺の視線は反射的にサロン中央に戻り、フェリクスの姿を確かめる。
 次こそ俺を誘いにきてくれるだろうか。
 ひと筋の希望を込めてフェリクスを見つめるけれど、やっぱりフェリクスは別の令嬢の元へと向かい、サードダンスを始めた。
 フェリクスは俺を選ばない……うつむいて唇を噛む。
 そのとき、羽のように軽やかなのに、肌を刺すような笑い声が聞こえた。
 顔を動かさずに視線だけをずらすと、アルファの生徒たちが俺を見て笑っている。

「オメガのくせに、フェリクスのファースト、セカンドダンスをもらえると思っていたのかしら」
「もしかして最後までないんじゃない?」

 嘲笑が胸にも突き刺さってくる。
 ……「オメガのくせに」か。
 この世の中に三種ある第二性バース
 神に与えられた優秀な遺伝子を持ち、ヒエラルキーの頂点に君臨するアルファ。
 凡庸でも、努力により能力が向上する可能性のあるベータ。
 そして、発情期があるためにいやしい性とされ、責任ある仕事に就くこともできずに社会から蔑まれてきたオメガ。
 治癒魔力を持つことが判明して以降、社会的地位が向上しているとはいえ、この国の人々の心の中で、オメガの地位はいまだ底辺だ。けれどフェリクスは生粋のアルファ一族の公爵令息でありながらも、どのバースにも平等だった。
 自身がアルファであることを決してひけらかさず、アルファ特有のおごりを持つ生徒をいさめることもあった彼は、オメガの俺にもいつも優しく接してくれていた。けれど、もしかして心の中ではずっと蔑んでいたのだろうか。

「エルフィー」

 ニコラが俺の袖口を握り直した。双子だから、オメガへの嘲笑に一緒に傷ついているんだろう。
 平気だよ、って言わないと。
 そう思うのに、喉がからからで声が出ない。
 俺は通りかかった給仕のトレイからカクテルグラスを奪い、中身をぐいっと喉へ流し込んだ。
 コーヒーとミルクの混ざった味がするそれは、甘いカフェオレのようでも俺の喉や鼻の奥を熱くする。しだいに目の裏側まで熱くなり、涙が滲んできた。

「俺、ちょっと酔ったみたい。風に当たってくる」

 泣いているのを見られたくなくて、ニコラに背を向けて歩き出した。

「待って、エルフィー。もう少ししたらきっとフェリクスが誘いにきてくれるよ」
「ん……すぐ戻るからさ」

 背を向けたまま手を振り、引き留めようとしてついてくるニコラを制する。
 ――ごめん、ひとりにしてほしい。
 その気持ちは伝わったようだ。ニコラがあとを追ってこないことに安心して、バルコニーへ向かった。
 プロムは始まったばかりだ。今ならまだバルコニーに出ている生徒はほとんどいないだろう。特に北側はアカデミー校舎の煉瓦れんが壁しか見えず、景色におもむきがないから人がこないはずだ。
 予測どおり北側のバルコニーには誰の姿もなかった。それでも窓からホールの様子が見えて、フェリクスが他の人と踊るのが目に入ると切ないから、壁面だけの隅へと進んでいく。

「あ、れ? ……クラウス?」

 外灯が柔らかな光を放つだけの椅子もないそこで、ワイングラスを片手に壁に背を預けている人影を見つけた。あれほど長身で、がっしりとした体躯は……間違いなくクラウスだ。

「……エルフィー」

 俺に気づいたクラウスは、すぐさま顔をそむけた。
 いつもならばひるむところだったけれど、少しばかり酔っていたし、文句を言いたかったから彼のそばまで足を進める。

「どうしてこんなところにいるんだよ。ニコラが待ってる。早く戻ってダンスに誘ってやって」

 黒地に赤や銀の糸で刺繍があしらわれたロングテールコートの袖を、ごく軽く引っ張った。
 本当にごく軽く、だ。
 それなのにクラウスは、一歩後退りをすると、勢いをつけて俺の手を払った。
 なんだよ、そこまで嫌わなくてもいいじゃないか、と唇を噛みそうになる。
 すると、体を鍛えている男特有の低く深みのある声が、気まずそうに謝ってきた。

「……すまない」

 え、なに、珍しい。
 俺はきょとんとして、クラウスの横顔を凝視してしまう。
 こんなに近くで顔を見るのは何年ぶりだろう。
 俺から逃げていた瞳がゆっくりとこちらに向く。視線が重なり合った。
 ――綺麗だ。夜の闇を照らす月みたい。
 光が当たると黄金色に輝くクラウスの瞳。昔は月じゃなく「猫さんの目!」とか言いながら覗き込んだこともあったっけ。今のクラウスは「若き黒豹」で威圧感があるけれど、あの頃はそれなりに笑っていて、俺はクラウスが笑うと嬉しくて、また笑わせようとして……
 酔いが回ってきたのか、クラウスの瞳から目が離せない。
 けれどクラウスはまたもや顔をそむけた。謝ってきたくせにうつむいて、唇を固く結んでしまう。
 またそれか……
 さすがに傷つく。今は特に、フェリクスのことでナーバスなんだから。

「そんなに嫌うなよ、俺だってクラウスの幼馴染じゃん」
「……っ違う。嫌ってなどいない!」
「えっ?」

 うな垂れそうになっていると、短髪が揺れるほどの勢いでクラウスが向き戻った。頬が赤らんでいるのは、きまりが悪くて恥ずかしいからか。
 いや、クラウスが恥ずかしいとかないか。お酒を飲んでいるからだろう。

「嫌うわけない。こうなるのは、俺が騎士として鍛錬が足りないせいだ」

 は? なんの話?
 意味がわからず首を傾げると、サロンから次のダンスの演奏が漏れ聴こえてきた。

「エルフィー、君に話が」
「よくわかんないけどいいや。とにかくさ、中に戻ってニコラと踊ってやってよ。ほら、行って行って」

 クラウスがなにやら言いかけたけれど、クラウスを待っているに違いないニコラの顔が不意に浮かんで、発言権を奪ってしまった。
 次の曲で第一部が終わってしまうから、早く行ってニコラを笑顔にさせてやってほしい。俺みたいな淋しい思いをさせないでやってほしい。
 そう思うのに、クラウスは微動だにしなかった。

「俺は行かない」
「どうしてだよ。せっかくのプロムだよ? 思い出だよ?」
「じゃあなぜエルフィーは行かないんだ」

 深い声で問われる。

「俺は……フェリクスが、踊ってくれないから……」

 俺のことなんて今はいいのに、久しぶりに間近で聞くからか、お酒を飲んだからなのか、その声が心の奥にまで染み入ってくる気がして、つい零してしまった。
 俺の方こそ、そんなことにこだわるなって呆れられてしまうかな? いや、その前に、堅物のクラウスには繊細な恋心がわからないかも。
 言わなければよかったとすぐに後悔した。けれどクラウスは、二、三度小さく頷いて返事をしてくれた。


感想 409

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目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続。 2025.4.28にも1位に返り咲きました。 ありがとうございます! 美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活 (登場人物) 高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。  高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。 (あらすじ)*自己設定ありオメガバース 「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」 ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。 天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。 理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。 天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。 しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。 ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。 表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。