生きる希望を失った青年は伯爵様の娼夫として寵愛されている

カミヤルイ

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抱いてもらえないのは①

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「……早く抱いてほしいな……」

 勉強の合間につい独り言が口を出た。

 おっと、と口を塞ぐ。勉強用の部屋には誰もいないけれど、そろそろ執事さんが休憩のお茶とお菓子を持ってきてくれる頃だ。

 ウィンザー城に来てからもうすぐ半年。勉強を始めてから四か月弱になる。最初の一か月はリューク様が付いて教えてくれたものの、いつまでも仕事を調整してもらうわけにもいかず、今はリューク様から課題を受けてひとりで取り組んでいる。

 たまに執事さんやメイドさんが教えてくれたりもするから、自分のペースでできていて、ずいぶん知識が増えたように思う。

 リューク様もおれに体液を与えることで体調が良い様子で、快活にお仕事をされている。
 今までよりもずっと忙しそうで、領地外や国外に泊まりで行くことも増え、今回も一昨日から明後日まではお留守だ。

「ユアルのおかげで生きていることを、そしてこれからも生きていけるのだと実感するよ。ありがとう」

 ユアル様はそう言って、おれの唇だけじゃなく身体じゅうにキスをする。
 胸にも、お腹にも、背中にも、触れられればすぐに勃ち上がるそこにも。
 そして、三本の指が楽に入るように慣らされたあそこにも……。

 だけど、まだ抱いてもらえてはいなくて。 

 リューク様は「身体の準備は申し分ないな」と肩で息をして、熱い息を漏らしながら慣らしてくださるのに、いつになったら以前言っていた「そのとき」が来るんだろう。 

 リューク様がおれと性交すれば、きっともっと糖化が抑えられて、喜んでくださると思うんだ。そうしたら、もしかしたら長い期間おそばに置いてくれるかもしれない。

 そりゃ年も取るし、いつかは娼夫の役目を解かれて城を追い出されるだろうけれど、役に立てば立つ分だけおれを必要としてくれて、可愛がってくれる気がする。

「勉強も頑張ってるし、身の回りのお世話にも慣れてきた。リューク様も執事さんも褒めてくれてるし、夜の仕事がなくなっても側仕えに置いてもらえるかもしれない」

 おれは、よし、と気合いを入れてリューク様からの課題に再び手を付ける。

 それからしばらくすると、部屋の扉のノッカーが鳴らされた。

「はい」

 返事をするとメイドさんがお茶を運んできてくれていた。
 執事さんは急な来客の対応中なのだそうだ。

「リューク様がご不在中のお客様は珍しいですね」
「ええ、なんでもリュクソール様に依頼されていた探しものがやっと見つかったとかで、領地一の大商人様がいらしていますわ。すぐにお伝えしたかったのだと、大興奮のご様子でしたわ」
「探しもの? なんだろう」
「さあ、わたくしたちにはわかりかねますが」

 メイドさんは首を傾げつつ微笑むと、テーブルにお茶とお菓子を置いて下がって行った。



 食べた後、お客様のことが気になって階下に降りる。

 ウィンザー家と交流のある諸侯貴族の方々や領地内の商人の人の顔と名前は覚えたけれど、くだんの大商人様には会ったことがなかったから、興味が湧いたのだ。

 出ていかないまでも、そっと遠くから見るくらいなら大丈夫だよね?

「ほう、これは美しい……年齢も二十三歳ですか。条件にぴったりですね」

 開かれた応接間の扉の前に近づくと、執事さんの声がした。

「ええ、ええ、ヨーク候爵領のヤト子爵の三番目の令嬢で、素性もはっきりしております。フォークが判明してから病死だと偽られ、隠されていたので探すのに手間取りましたが、私の手腕で見事に探し当てましてね」

 そっと応接間の中を覗くと、恰幅のいい商人さんが意気揚々と説明をしている。その手には美しい女性の肖像画が。

 ……フォークの、娘? 条件、ぴったり?

 その言葉だけで悪い予感がよぎり、騒ぎ出した胸を服の上からぎゅっと握った。
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