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抱いてもらえないのは②

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「お手柄ですよ。この女性なら結婚のお相手に申し分ありません。リューク様もさぞお喜びになるでしょう。お戻りになったらすぐにお伝えしましょう」

 結婚、相手。

「ええ、ええ、ヤト子爵もいつでもと申しておりましたので、すぐにお引き合わせが可能です。ああ、さぞかし素敵なご夫婦になられることでしょうね!」

 ──ああ!

 おれはそれしか胸の中で叫べず、その場を後にして部屋に走って戻った。

「はあ、はあ、はあ……リューク様、リューク様が結婚を?」

 あの美しいフォークの女性と、結婚を!?
 どうして、どうして、どうしておれがいるのに他のフォークを? 

 ……いや、おれはなにをばかなことを思っているんだ。

 おれは貧民の出で男で、ただの娼夫だ。対してリューク様はこのウィンザー領の領主様。

 いつかは、なんてものじゃない。リューク様のお誕生日は今月末で、二十九歳になるリューク様は、もう結婚して子供がいてもいい年齢だ。しかるべきお相手が見つかれば結婚を決めて当然じゃないか。

 おれはすっかり失念していた。

 リューク様は糖化のために体調が万全ではなく、早逝の可能性もあったから結婚を躊躇していただけなんだろう。

 けれどおれというフォークで試したことで症状を抑えられることを知ったから、改めてフォークの女性を探していたに違いない。
 一生を共にでき、跡継ぎを産むことができる女性のフォークを……!

「ぅ……。うう、や、嫌だ……」

 リューク様が結婚する。そしておれは捨てられる。身体の準備ができているのに抱いてくれなかったのは、商人が結婚相手を探してくるのを待っていたのかもしれない。

 そうだよね、柔らかさがなくて挿入に時間がかかる男の身体よりも、ふくよかで、元からリューク様の大きいものでも受け入れる器がある女の人の身体の方がいいに決まっている。

「嫌だ、嫌だ、リューク様っ……!」

 胸が苦しい、お腹が痛い。リューク様がおれ以外に「愛しい」「可愛い」と囁くなんて。 

 リューク様がおれ以外の人にキスをして、おれ以外の人と性交するなんて、想像するだけでも耐えられない。

 おれ、おれ、リューク様が好きだ。リューク様がケーキだからじゃない。リューク様自身が好きなんだ……!

 誤魔化して抑えていた気持ちが溢れ出す。それと一緒に胃が痛み、吐き気を催して吐いてしまう。

「う、ぅえっ。げほっ、ぅう……」

 苦しい、苦しい、苦しい……!

「ユアル様? まあ、ユアル様、どうなさいましたか!」

 おれの嗚咽に気づいたらしいメイドさんが部屋に駆け込んでくる。

 おれは手厚く介抱されて、ベッドに寝かされた。  
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