上 下
26 / 28
滅びのメロディー

約束

しおりを挟む
「…み…あす…み…。」
誰かがわたしの名前を呼んでいる。
あれ?わたし?生きていた?
自分は生きていた。そんな喜びを感じながら、重たい瞼を開けた。
誰かがわたしの顔を覗き込んでいる。
ぼやけていた輪郭が段々ハッキリしてきた。
見慣れた清楚な感じの美少女、可愛らしい感じの女の子だった。里沙に奈央だ。
「目が覚めた?」
里沙がわたしに問いかけてくる。
「わたし、生きてる…!!」
自分は死んだかと思った。みんなの前でゾンビに惨殺されたかと思ってた。
「死んだかと思った。今頃、御花畑かなって…。」
「もう、そんな呑気な事、言ってる場合じゃないわよ?本当に危機一髪だったんだから!!」
里沙が涙目で言う。どうやらわたしは本当に危なかったらしい。
「ねっ祐太君、本当に慌ててたもんね!!」
奈央が今にも吹き出しそうな顔で隣をチラッとみる。
そこには膨れっ面の四人組がいた。
「知らねッ。」
「知らん。」
「もう知らないからね。」
なんか、御機嫌ななめらしい…。
「さっきまでこの世の終わりって感じだったのに~」
奈央がぼそっと呟いた。
わたし、ゾンビに襲われた所までは覚えてるけれど…。
その後どうなったのか全く分からない。
「わたし、どうなっていたっけ?」
「ゾンビに食べられかけてたところを祐太君達に助けられたのよ。
その後は五郎君にお姫様抱っこされてここまで来たの…。」
奈央が真面目な顔でことの経緯を語る。
「そうなんだ…。」
わたし、またみんなに迷惑かけちゃったな…。
彼らが膨れっ面になるのも仕方ないや…。
「でも、明日美ちゃんが助かって本当に良かった…。」
そんな事を言って奈央はわたしに抱きついた。
柔らかい感触と優しい香りがわたしをそっと包み込む。
温かい…。
わたしはすっかり安心した。
「じゃ、私たち、明日美ちゃんのお母さんとお父さんを手伝いに行くわね。」
「行ってらっしゃい。」
奈央と里沙を見送った後でわたしは祐太達と五人っきりになってしまった。
なんて声を掛けよう…。
迷っていると意外な事に彼らの方からわたしに声をかけてきた。
祐太「どっか行きたい所あるか?」
わたし「いきなりどうしたの?」
一翔「この騒ぎが治まったらどこかに明日美ちゃんをつれていってあげようかなって。」
義経「遠慮なく申せ。」
季長「何処でもいいぞ。」
わたし「えっ…。」
わたしは一瞬言葉に詰まった。それから少し考え込んだ。どうせならちょっぴりからかってやるか。
わたし「じゃあ、ハワイ旅行に行きたいな。」
祐太一翔「ハワイ旅行ねぇ…。」
わたし「じゃあ、内裏で寝泊まりしてみたい。」
義経「内裏かぁ…。」
わたし「執権に会ってみたい!!」
季長「ふーん。」
「「「「って…はああああぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
わたし「ちょ、うるさい、叫ばないで、近所迷惑だから。」
ちょっとやり過ぎたかなぁ…。
いくらクール男子でも突拍子も無いことを言うと取り乱すらしい。
なんか可笑しいような面白いような気がして、ちょっぴり笑えてきた。
「い、今のうそ!!冗談だから!!」
わたしがそう言った途端、彼らは少し口を尖らせてそっぽを向いてしまった。

…かわいいかも…
「わたしは、みんなと一緒に花見がしたい!!」
わたしの行きたい場所…それは桜の名所でみんなで花見をする事だ。
「良いけどよ、俺らが生きてたらな。」
祐太がしれっとそんな事を言う。
「大丈夫だよ。かずにぃもゆーたんもすえ君もよっちゃんもわたしよりずっと強いから。
寧ろ、わたしが先に死にそうなのに…。」
するといきなり四人ともわたしに向き直り、
「俺はっ!!」
「僕はっ!!」
「我はっ!!」
「某は…!!」
「えっ?どうしたの?いきなり。」
わたしが戸惑っていると
「「「「絶対に明日美、お前を死なせたりはしない!!」」」」
え…。本当にどうしちゃったの?
「「「「だからっ…」」」」
まだ続きあるの!?
「「「「守らせてくれ。」」」」
え…。本気なの?
「変なの……。でも忘れないで、わたしもあんたを、みんなを守るから。」








しおりを挟む

処理中です...