今日ノソライロ〜死の都 ゾンビを倒して世界を救え!!!

春の七草

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滅びのメロディー

因果応報

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(みんなで花見か…。楽しみだな。)
わたしはその時を待ちきれずにいた。
そしたら美春ちゃんがやって来て
「明日美ちゃんに怪我を負わせたあのおばさん達避難所、追い出されるって。」
突然の知らせにわたしはびっくりした。
「えっそれ、本当!?」
わたしが驚きのあまり大声を出してしまう。
「うん、本当だよ。一連の騒ぎを見て、何人かが苦情をいれたらしいの。
明日美ちゃん以外にも被害者が大勢居たことが分かって…。」
わたしは嬉しいような、腹立たしいような複雑な気持ちになってしまった。
なんでわたしがいじめられているのを見ている人は大勢居たのになんでもっと早く助けてくれなかったの?
って密かに思ってしまった。
まあ、いじめを一回でも注意出来る人なんてなかなか居るもんじゃない。いじめられている子を庇ったら次は自分がいじめられる。わたしはその事を痛い程に知っている身だ。
他人に期待しすぎちゃダメ…。
そうとは分かってても周りの人が今まで見て見ぬふりをしていた事は許せそうになかった。
このような状況で避難所を追い出されたら私達みたいに武器を持ってない人はきっと生き残ってなど行けないだろう。
「明日美ちゃん、今まで気づいてあげられなくてごめんね。」
「いいよ、美春ちゃん。親も幼なじみも気付かなかったくらいだから。
そもそも場所が離れすぎてて気付こうにも気づけないだろうしさ。」
少し痛む額の傷を押さえながら、わたしは美春ちゃんの優しさをありがたく感じた。
「明日美…。」
「明日美ちゃん…。」
「「明日美殿…。」」
聞き馴れた声に振り向くと、悲しげな表情をした四人が立っていた。
「どうしたの?そんな顔して。」
わたしが聞くと
「「「「気付いてやれなくてすまなかった。」」」」
え…。
「謝らなくていいよ、大体、何も言わなかったわたしが悪いんだから。
そもそもわたしなんていじめられても仕方ないような人間だよ…。」
わたしは…。本当に最低だ…。
鈍感で愚かで…。
「そんなことねぇよ!!」
裕太が突然声を上げる。い…いきなりどうしたの!?
「そうだよ、君は何も悪くない。
  責任は気付いてやれなかった僕らにある
  から!!」
普段はクールな一翔が珍しく大きな声を出す。
「明日美殿は確かに鈍くて鈍感だ。でも、あれは明日美殿が悪いわけではない。」
義経の不器用ながらも温かい言葉に胸が熱くなる。

「気付いてやれなかった某にも責任はある。」
季長がわたしに対して頭を下げた。そんな彼の姿が目に焼き付いて離れない。
「そうだよ!!明日美ちゃんは悪くないよ!!いじめなんてどんな理由があってもしちゃいけないことなんだよ!?」
美晴ちゃんがわたしを全力で励ます。
「ありがと…。もういいよ、終わったことだし、あの二人も居なくなるから安心してすごせるし…。」
その時だった。
「お願い、助けて!!」
後ろから中年女性の声が聞こえた。
…この嫌な感じ…
この上から目線の忌々しいしゃべり方…。
間違いない、木下達だ。
「今更、何のようですか?」
祐太が冷たくいい放つ。
「あたし達ね、ここを追い出されることになったのよ、あなたは強いから助けてくれると思ってね…。」
誰も相手にしようとはしないので、二人ともわたしに迫ってきた。
「ねぇ、あんたから頼めない?あの子達と友達だよね?」
そんな事を言われても…。とわたしが黙っていると
「さっさとしなさいよ!!また氷水ぶっかけられたいの!?」
木下が凄んだ。というより叫んだ。
「明日美殿にそのような事をしたのは貴様か…。」
「あなた、最低ですね…。」
「絶対に助けてやらねぇよ。」
四人ともいつもより声が数トーン低くなっている。
怒っている…。
「ちょっとあんた、またあたしらに逆らうつもり!?」
木下がヒステリックに叫んでわたしに向かって手を挙げる。
殴られるっ!!
そう思って、わたしは反射的に構えて、目をぎゅっと瞑った。

だが、数秒経ってもわたしは殴られなかった。
おそるおそる目を開けてみると、一翔が木下の腕を思いっきり掴んでいた。
「こらっ痛い、痛い、離せっ!このクソガキっ!!」
木下は暴れまくるが、やはり男女は力では敵わないようだ。
木下はだんだん大人しくなってきた。
「こらっ!!さっさと何とかしなさいよっ!!」
藤宮がわたしに掴み掛かろうとしたところ、義経に思いっきり腕を掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。
「痛いじゃないの!!この若造っ!!」
藤宮は暴れまくるがあいにく力では敵わないらしく振りほどくことは出来なかった。
それどころか暴れる度に段々強く掴まれるのか藤宮は痛そうだった。
観念したのか藤宮も大人しくなっていた。
暫く経ってやっと離してもらえた藤宮と木下。
かなりの力を加えられたらしく二人とも腕が真っ赤になっていた。

爪を立てなかっただけ優しいなと思いながらも、やっぱり男子の力には敵わないやとわたしは実感した。

藤宮と木下は避難所を後にしながらわたし達に向かって
「ガキと若造の分際で、偉そうにしやがって…。絶対に痛い目みるわよ!!」
藤宮がそう叫ぶと木下も続いて
「そうよ、そうよ!!絶対に痛い目みるわよ!!」
と捨て台詞を残して去っていた。
美春ちゃんは怖かったのか、チワワのようなつぶらな瞳に涙を溜めていた。
「この手の人間は最期の最期にならぬ限り反省せぬからな…。」
季長がポツリと言った。
最期の最期ねぇ…。



木下と藤宮は避難所の出口に向かっていた。
避難所にいる人全てが二人をまるでゴミでも見るのような軽蔑しきった目で見ている。
「何よ!!そんな目で見ないでちょうだい!!不愉快よ!!」
「そうよ、そうよ、不愉快よ!!」
藤宮も木下も周りに対してそう叫ぶが周りの人達は一層二人を軽蔑しきった目で見るのだった。
ふと近くにいた主婦の女性が何やら話している。
「あの二人、避難所を追い出されるんですって。」
「本当!?あの二人がいなくなってくれるなんて本当に嬉しいわ…。
それにしても本山の娘さんってかわいそうよね…。」
「知ってる。あの二人にひどい嫌がらせを受けていたのよね…。」
「本当酷いわよね…。居なくなって清々するわ。」
バコンッと角材で頭を殴られたような衝撃だった。
自分たちはそんな風に周りから思われていたのか…。
「ちょっと、酷い事を言わないでちょうだい!!
あたしらが何をしたって言うのよ!?」
「そうよ、そうよ何をしたって言うのよ!?」
藤宮はいつものようにヒステリックに叫んだ。
「あら、今まで本山夫妻やその娘さん、娘さんのお友達に対してやってきた事に比べたら可愛らしいものじゃないの。」
「そうよねぇ~自分よりずっと年下の人にあんなことしたりして何が楽しいのかしら?」
わざと聞こえるように喋る悪口の嵐に心がいたんだ。
あの子もこんな気持ちだったのかな?
初めて罪悪感が芽生えた。僅かながらも。

そして二人は避難所の外に出た。
そこには、腐敗した死体が歩き回っていた。
「いやぁぁ!!」
藤宮が怖さのあまり叫んだ。
もちろんゾンビはそれに気が付いて藤宮に襲い掛かった。
「いやぁ、もう、人をいじめたりしない、しないからぁぁぁ…。」
藤宮は悲痛な叫びをあげ、あっという間にゾンビに囲まれた。
「木下の奥さん助けて!!」
藤宮にそう言われたけれど、そんな勇気はない。
何かを咀嚼する音が響き、鮮血があたりに飛び散ると同時に藤宮が叫ぶこともなくなった。
すると、何かがコロリと転がってきた。


それは、藤宮の眼球だった。

「い、いやああああああ!!」
思わず木下は大声で叫んだ。
そして、その叫びをヤツらは聞き逃さない。
木下は走って逃げた。
「いやぁ、もう誰の悪口も言わない、嫌がらせもしないから、お願い、神様、仏様、許して、これからはちゃんと生きるから…お願い助けて…。」
今までの後悔が波のように押し寄せてきた。
涙が溢れた。これからはマトモに生きるって誓った。
その矢先だった…。
木下は運悪く転んでしまったのだ。残酷にもヤツらはそれを見逃さない。
必死に起き上がろうとしたが、何者かに足を掴まれてしまう。
振り返ると、それは、艶を失った髪を振り乱した若い女性のゾンビだった。
また他にも血肉を求めてさ迷うゾンビ達が自分に幾つも襲い掛かる。
ガジッ、ヤツらに齧られ、全身に激しい痛みが走る。
ガジッガジガジガジガジッ
齧られていくうちに、段々と意識が遠のいていき、痛みも感じなくなる。
雨に濡れた地面がボヤけて見えなくなっていく。
もう、アスファルトの感触すら分からなくなっていた。
「お…願い…許…して…。」
それが最期の言葉になり、木下は完全に意識を手放した。


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