全てを無くした転生者は、スキルの力で成り上がる

蒼田 遼

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2話 メイド長兼王家の影〜ベルside〜

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 本作品をお読みいただきありがとうございます。

 一部表現に修正を加えましたが、内容は変わっておりません。
 初めて各作品のため、表現が幼稚であったり間違いがある部分があるかと思いますが、随時修正して参ります。

 何かご意見、お気づきの点があれば、感想欄に記入していただけると嬉しいです。

 今後とも宜しくお願い致します。

                アオイ
************

 ~ベルside~

 私の名前は、ベル。

 アレクシス公爵家のメイド長として働く傍ら、王家の影として諜報活動もこなしている。

 ノブル上流国の王"アーデル・クラット37世"の勅命を受け、王家の親族であるアレクシス公爵家の汚点であるロディ坊ちゃんを監視し、その汚点を世間に広めぬように、もし露見しそうな場合は、ロディ坊ちゃんを暗殺するまでが私の使命となる。

 しかし、そんな私にも今年13歳になる大切な娘がいる。
 だからこそ、出来損ないだからといって暗殺までしてしまうこの国の王には、心底嫌気が刺すのも正直なところだ。

 どうか娘だけは、影の道に進まぬ事を願うばかりだ。
 話を戻す。

 ロディ坊ちゃんだが、私が就任した1歳の頃から徐々に生気が失われていき、弟の鑑定結果が出たくらい時から瞳の光が完全に消えた。最近では、このまま死んでしまうのではないかというほど、存在感が薄くなり、お人形のように部屋の片隅で座っている日も多くなっていた。

 そんなまだ小さな子供を見て、私の親心はかなり深く傷つき、この子を連れて遠くへ逃げたいとすら思った。
 しかし私も愛する子供を養い守らなくてはならない身。もし私が失敗すれば娘に危害が加わるかもしれない。
 
 それを考えると、心に鞭を打ってでもロディ坊ちゃんを監視し任務を遂行しなければという使命感に駆られる。

 たまに、居た堪れなくなり話しかけたりしてしまうが……

 返答は、「はい」か「いいえ」の一辺倒。
 幸いご飯は食べてくれているようで、それだけが心の救いだった。

 そんなロディ坊ちゃんだが、今日。
 朝食を届けに行った時、ロディ坊ちゃんの瞳には光が宿っていた。

 何かあったに違いない。
 でも何が?

 誰も部屋に近づいた形跡はないし、誰とも接触を取れないはずなのに。

 私は、とりあえずロディ坊ちゃんの希望通りに行動し、泳がせる事にする。
 ロディ坊ちゃんが元気を取り戻した事に、喜びを感じ、なんでもしてあげたくなったわけでは決してない。うん、決してない。

 私は感情を捨てた暗殺者。そして王家の影だ。

 そうと決まれば、私は行動を開始する。
 ロディ坊ちゃんがもっと元気に……いや、ロディ坊ちゃんを泳がせる為に。
 
 その為には、まず魔法の本と剣術の本、あとスキルの本を借りてこなければならない。
 相手は、あのでっぷり太ったアレクシス公爵家の当主、グロース・アレクシス。

 ロディ坊ちゃんのため…いや、違う。
 ロディ坊ちゃんを元気付けたものがなんなのかを探るため、なんとしてでも、あのグロース様デブを言いくるめてやる。

 そう覚悟を決めて、私は当主のいる部屋をノックした。

◇◆

-コンコンッ

 「誰だっ!入れっ!」

 いつ聞いても、感に触る声が廊下まで響き渡る。
 この声を聞くだけでも、鳥肌が立ってしまう。

 「失礼いたします。メイド長のベルと申します。グロース様、お忙しいところ……」

 「あー、君か。長い前置きはいいっ!早く入れっ!あと、君ならいつでも来ていいと何度も言っているだろう。例えば、夜のベットの中でもなっ!ファッファッガーッ」

 あーキモイキモイ。
 私が子持ちという事を知っているにも関わらず、このデブはいつも夜のお誘いをしてくるのだ。

 しかも太りすぎているからなのか、笑うと鼻が鳴ってしまうという醜態。

 よくもこんな人が公爵家としてやっているなといつも思ってしまう。

 もう王家とか任務とか放棄して、ヤッて殺してしまおうか。

 いや、いかんいかん私。ここは冷静に。
 娘を守るために私は、感情を捨てなければ。
 私は感情を捨てた暗殺者、落ち着け。ひーひーふー。

 私は、衝動を押さえつけ、グロース様デブに作り笑顔をしながら話しかける。

 「お誘い嬉しく思います!しかしながらメイド長の私が奥様に嫌われては立場がなくなってしまいますので……遠慮させていただきますっ!」

 最後は、テヘッの笑顔で丁寧にお断りする。
 完璧。いつも通りだ。

 「むー。妻を出されると、私も強くは出れんな。して、用はなんだ。私はこう見えても忙しい。手短に頼む。」

 「はい、では。ロディ坊ちゃんの件です。」

 「あいつがなんかやったのか!?やはり殺してしまおうか?」


 嬉々として聞いてくるこのデブには、愛情もクソもないのか。
 私は先程押さえつけたはずの衝動が飛び出そうになるのを、必死で堪えながら話を続ける。


 「いえ、そうではないのです。ここ最近、ご飯も食べず、何もやる気を見せず、もう死んでしまいそうなのです。」

 「いいじゃないかっ!死んでしまえばあんなやつ。どうせ使い物にならんっ!」


 こんのデブは本当に何も分かっていない。
 こいつこそが無能だ。


 「いえ、聡い当主様なら分かった上で覚悟を決められているかと存じますが、今彼が死んでしまったらその責任は、公爵家当主である、グロース様が被る事になります。責任は権力で何とか逃れられるとしても民の中では、グロース様の噂が立つかもしれません。私はそれが心配で……。万が一、息子を監禁して殺したらしいと……噂が立てば……損をするのはグロース様になります。そんな事あっていいはずがありませんっ!」

 「そんなのは百も承知だっ!聡い私ならな……ったく、あいつは死んでも迷惑をかけるんだな。本当なら今すぐにでも殺してやりたいくらいだ。それで、どうすればロディのクソ息子は息を吹き返すんだ?私も考えが無いわけではないが、まずはベル、お前の意見を言ってみろっ!」


 いえ、私が貴方を今すぐにでも殺したいくらいです。


 「解決するかは分かりません……ただ私が見た限りでは、ロディ坊ちゃんは知識に飢えているように感じます。試しに魔法の本、剣術の本、スキルの本を渡してみるのはいかがでしょうか?」

 「そんなもんでいいなら、いくらでも渡せっ!お前の図書への入場は許可するから必ずクソ息子の監視をしておけよ。死なないように管理は任せたぞ。私は忙しいんだ。」

 「はい。かしこまりました。では、失礼いたします。」


 私は、心の中でガッツポーズをしながら深くお辞儀をしてグロース様デブの部屋から退出した。

 私が退出しようと後ろを向くと、お尻のあたりに強い視線を感じたが見逃しておくとしよう。

 早く、ロディ坊ちゃんの部屋に本を届けなければ。

 私は、走らないように、でも最速で図書へと向かった。

◆◇

 その時私は、そんな私を影から見つめる存在がいることなど気づいていなかった。
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