全てを無くした転生者は、スキルの力で成り上がる

蒼田 遼

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6話 女神の仮の姿

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 そういえば、1歳の時の鑑定から素質っていう項目は、あったような気がするが、当時は、先生と爺やの話を聞いてショックを受けたりと……色んなことがあって、細かなところまで気にしてる余裕なんてなかった。

 ということで、ベルさん、いやベル先生に聞いてみることにする。

 幸いにも既に日が落ちているので、そろそろベルさんが夕飯を届けにくる頃だろう。

 そんな事を思っていると、ほら来たようだ。
 ベルさんが廊下を歩いてきて、扉を開ける。

 気配を読むのも、もう慣れたものだ。


 「ベル先生、ベル先生、こんばんは。」

 「あら、今日は挨拶なんかしてどうしたのですか。ロディ坊ちゃん」

 「ベル先生に教えて欲しい事があるんだ。」

 「はい、先生が何でも答えてあげましょう。なんでしょうか?」


 ベルさんは先生と言われ、なんかノリノリだ。
 胸を張っているが、豊満なお胸が揺れているので、正直目のやり場に困る。


 「ステータスの素質についてなんだけど……」

 「また性懲りも無く誰かの鑑定をしたんですか!?」

 「いや、今度は違って……自分自身の鑑定をやってみたんだ。努力が実って成長してたから嬉しかったんだけど、能力欄の中にある、素質ってのが伸びなくて……なんだろうと思って、教えて欲しかったんだ。」

 「成長してたってどのくらいですか!?……あ、いや、素質ですね。素質っていうのは、レベルが上がった時に能力が上がるんですが、その時に能力がどのくらい伸びるのかを表す数値と言われております。例えば、体力が100の人のレベルが1上がった時に、素質が+10の人は110になりますが、素質が+20の人は、120になるんです。ちなみに、素質は、自分自身の生まれ持ったものなので、生まれてから死ぬまで変化はしないって言われていたのですが、最近の学説では、素質も人との関わりや職業などで変化していくんじゃないかと、見直されました……だから、まだ分からないことが多い数値なんです。」

 「あ、そうなんだ……じゃあ、俺の素質は今は低いけど伸びる可能性もあるのか……うん、希望を持って頑張るよ。ありがとう。」

 「うん、それで良いと思います。何事も焦らず一歩ずつです。頑張ってくださいっ!それで、つかぬことをお伺いしますが、成長ってどれほどしたんですか?」

 俺の問いに丁寧に答えてくれたベルさんだったが、何故俺の成長をそこまで気にしてるのが、気になってしまう。

 正直、ベルさんにだったら教えてもいいけど、最近なんか怒られてばっかりだから、仕返しをしたくなってしまってる自分がいる。


 だめだ、この気持ちは止まらん。仕返ししちゃお。


 「あれ?さっき誰かさんに人の鑑定を知ろうとするのは失礼に当たるって聞いたんだけどなー?誰だったっけな?」


 ニッコリと微笑みベルさんを見返すと、ベルさんは悔しそうな顔で俺を睨む。

 けど、しばらくすると俺に微笑んで


 「偉いですっ!しっかりと学んでおられますねっ!」


 と頭を撫でてから、何やら満足そうな笑みをしながら部屋を出ていった。

 その表情の変化には、すごく違和感を感じたが、それを忘れてしまうくらい、頭を撫でられた一瞬が、母とのやりとりのように感じて、尊くもどこか嬉しく感じた。


 それから、しばらく頭を撫でられたという嬉しい余韻に浸る。

 気がつくと、既に外は真っ暗になっていた。
 部屋の明かりを消す。

 しかし今日は、ベットには行かず、暗い部屋の中央で仁王立ちをする。

 そしてぽつりと一言、誰もいない部屋に向かって呟く。


 「さぁ、これから夜目と隠密の習得の時間だ。」

◆◇
 
 抜き足差し足、忍足。
 影から影へと身体強化を使いながら高速移動。

 俺は今、気配感知と魔力感知を駆使しながら、絶賛家の中探索に勤しんでいる。

 久しぶりに部屋の外に出たこともあり、俺の心は踊り、足のステップも軽やかだ。

 使えば使うほど、夜目は効きやすくなって、真っ暗闇でも見通すことができる。

 隠密の方も慣れてきたのか、自分でも自分の足音が聞こえないくらいになっていった。

 そう、気持ちは忍者にでもなった気分だ。
 忍者が何かわからないけど。まぁいいか。

 俺は家の中を探索しながら、頭の中の地図を埋めていき、この家の構造は理解した。
 3階に4室、2階に5室、1階に2室だ。

 ちなみに俺の部屋は1階にあった。

 不思議だったのは、俺以外の人の気配が全くしないこと。
 使用人の一人でもいるかと思ったが、誰もいなかった。ベルさんもだ。

 なんだか怖くなり、今日の冒険はここまでとした。

 ちなみに、部屋の中への侵入は、まだ勇気が出なかったので今度にしようと判断し部屋に戻る事にした。

 部屋に戻るとすぐにタオルで身体を拭き、そそくさとベットに入った。
 決して誰もいなかったから、怖くなっちゃったとかそういう訳ではない。

 ベットに入ると、静寂に包まれているからか、ドキドキしている俺の心臓の鼓動が聞こえる気がするが、きっと気のせいだろう。

 目を瞑り、楽しい事を考えていたら、思いの外すぐに睡魔に襲われて深い眠りについた。

◆◇


 「この夢、久しぶりに感じるなー。」


 俺は、数日ぶりに例の自称女神と出会った夢の中にいた。
 でも、今となっては少しあの女神を信用してきている。

 なぜなら、適性の効果なのか、どんどんスキルを覚える事ができたから。
 お礼を言いたいなーと、思いつつ、俺はいつものように呆然と曇天の雲から雷が落ち爆音が鳴る光景を見ていた。

 
 しばらく待っていると、例の如くいつの間にか轟音が止み、声を掛けられる。


 「やっとまた会えたわね。でも今日も時間がないからすぐに要件だけ伝えるわ。最後に質問ひとつだけする時間を与えるから、それで今はどうか我慢してね。」

 「こんにちは、お久しぶりです。この前はありが……」

 「お礼なんてまた今度でいいわ。それより時間がもったいない。出来れば早く魔獣100体を達成してちょうだい。私の力がもうすでに無くなりそうなの。無くなればこの世界は終わる。だから急いで。お願いね。じゃあ質問をどうぞ。」


 なんだ、この女神は。
 自分勝手な女神に少しだけイラッとしながら、少しだけこの自称女神に感謝した事を後悔した。

 ただ、時間がないとのことなので早速俺は質問をする事にした。


 「すみません、魔獣100体は頑張りますので、教えてください。あなたの姿を見ることはできないですか?なんだか姿を知らない人を心の底から信用することが出来なくて……姿を見れば、少しだけやる気が出ると言うか、信用できるというか……」

 「それが質問でいいのね。私の真の姿は今は見せられない。さっきも言ったけど力がないの。だから今は仮の姿。それでもいいなら見せるけど。覚悟はいい?」

 「分かりました、仮の姿でも良いので見せてください。」

 「はぁ、分かったわ。本当は仮の姿なんて見られるのも恥ずかしいけど、これで信用してくれるなら。あなたの足元を見て。」


 俺は言われるがまま足元を見る。
 なんら変わった様子なんて見られない。

 荒れた大地が広がっているだけだ。


 「ん?ちょっとよく分からないんですが…この大地があなたの仮の姿ということですか?」

 「そんなわけないでしょ、違うわよ。あなたの足元、よく見なさいよ。大地の割れ目のところに緑の芽が出てるでしょ?」

 「はぁ……」


 俺は、もう一度目を凝らしてよく見てみる。
 すると、本当に小さな芽がちょこんと生えているのが分かった。


 「これが今の私。力がなくなって、こんなになっちゃってるのよ。だから力を貸して。仮の姿を見せたんだから、信用して魔獣100体よろしくね。あ、時間切れだわ。本当に早くお願いね。じゃあね。」


 そんな言葉を残し、自称女神の声は聞こえなくなった。
 そして、俺の意識も夢から覚めていった。

◆◇

 ベットから起き上がり、夢を思い出す。

 大きなひび割れた大地から、出る小さな芽。

 それを見せられて、どう信用しろと?

 俺の疑心はさらに大きくなる一方だった。

 
 
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