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名のない星は暁から出流る
第14話 復讐~不倫の始まり~
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豊の人の好さは、お墨付き。
誰にでも優しく兎角、私には親切な男友達として親公認「兄様」と皆から親しまれる豊の正体は、極漢サイコパスな哂う鬼。
20歳になり、抱かれるようになって間もなく──
豊は結婚した。
独り暮らしを始めた私の家にあれだけ入り浸って、体に穴まで開けて私物化した男が夫婦になる為の縁を結んでいたのは「嘘」じゃない。幼馴染で親友の姉でさえ知らなかった、相手は私の同級生で、妊娠2ヶ月。
私は男だから、結婚もできなければ、妊娠もできない。
でも、彼女はその両方を望み、豊に将来を約束された「特別な存在」である事に格差を感じて心が座礁する。
「ちょっと、待って! お前の嫁に申し訳が立たない」
相変わらず迫って来る豊に罪悪感は無い。
お前、それでも人か?
あのね、私を裏切って結婚したことは許すつもりはないし、危険な愛体験がバレたら、私は泥棒猫の衆道と蔑まれ人生破綻。これより先は「不倫」だと抵抗しても。体を下敷きにされて……
私には避妊をしてくれない、差別化。
そんなの嫌。
あなたが好きだった小さな頃の私はどこにも居ないの。だからお願い、もう私の体を求めたりしないで。どれだけ懇願しても車の助手席が濡れるだけ受ける。
豊には、時間がない。
さっさと終わらせて、愛する妻とお腹にいる我が子の元へ帰りたいだけ。
わかるけどさ……
服も脱がずに盛りのついた男同士は、世を欺き、事を成す。
罪の印を私の首筋に残して、豊は指輪で繋がれた妻の元へ戻る。
まだ私、20歳なのに──
大学の同級生は、これまでの親の監視と受験勉強から解放され異性と付き合い皆、愉しそうなキャンパスライフを日々送ってる。色地獄に、不倫まで覚えてしまった私には、眩しすぎて話が合う奴なんか一人もいなかった。
初恋を教えてくれた人と同じ立場になり、初めて、彼が言っていた意味がわかる。
20歳は、まだ子ども。
でも、私は身に積まされる事が多過ぎて、危険な悦楽に渇望する。
豊はノンケで、私以外の男とは性的な関係に至らない。
なぜ私とセックスができるのか?
同性愛とは別枠のAF専。実は貴之もそちら側の人間で、相手はできれば女がいいけど、私の穴であれば、なお良しと真面目に語る。
人が最も若くて美しい時間は短い。
それが成立するのは一瞬で、今の私は賞味期限切れの「わけあり商品」興奮して貰えるだけ、まだマシ……か。
豊が妻に選んだのは──
天然の黒髪女子。処女で嫁いだ、純妻。
なぜ、ちーちゃんと結婚したの?
それが聞けないまま、結婚式の招待状を受け取った。
「お腹が大きくなる前に」すべては彼女への配慮で進められた慶事。人生の門出を迎える白いタキシードを着た新郎は、木製コブラン柄の長椅子に掛け、優美に微笑む。
純白のウエディングドレスに包まれた聖なる女神のような新婦に、ため息まじり、泣き出す姉を抱きしめる美しい天使の情景に、微笑む家族。
私だけ場違いで壁を背に顔を伏せていると、姉から今までのお世話になったお礼を伝えるよう小突かれた。
端から見れば大好きなお兄ちゃん役が奪われて、拗ねているように見えるのだろう。
恥ずかしくて祝詞が贈れないのではない。役者が揃ったところで、苦悶の表情を浮かべる私は豊に手を繋がれ「結婚、おめでとう」蚊の鳴くような声で言わされた。
公 開 処 刑
それを何よりも望んでいた、豊の野望。
今、私が感じている酷辱はこれまで豊が感じて来た程でもない。数知れず男達に抱かれては泣き暮らす私を黙って見守って来た豊がどれ程、残酷な感情を潜めていたか。ただ、この瞬間を求めて結婚を引き換えに復讐を遂げたと知れば、新婦とお腹の子どもはどうなるか。想像するだけで、もう……居られなかった。
大きな十字架の前で、永久の愛を神に誓うふたりの背中をみつめる厳かな儀式。
何か誓約書にサインしている。
顔を覗かせると「婚姻届」にお互いの名前を記入して、これを役所に提出すれば、今日が結婚記念日になる流行りの手法。なるほど、結婚式に招かれざる客の私は涙を堪えて幸せを願うどころか、一刻も早く逃げ出したくて、隙を伺っていた。拍手に包まれるふたりはバージンロードを一歩、また一歩と踏み出す。
豊は悪戯っぽく私にウインクしながら、神に背を向け、妻子と世間を欺き…己が道を逝く。愛は狂気だね。
結婚を人生の墓場、という人がいるけど。
将来の安泰、保険として結婚を選んだわけではないと豊は云う。
こんな男に愛されたところで幸せを見失うばかり。
かわいそうな、嫁。
かわいそうな、赤ちゃん。
そして、哀しい私は披露宴を中抜けする豊の愛撫に溺れ、銀板に今日の刻印が施された皮の首輪を宛がわれ、愛の言葉を散々に囁かれた。
誰にでも優しく兎角、私には親切な男友達として親公認「兄様」と皆から親しまれる豊の正体は、極漢サイコパスな哂う鬼。
20歳になり、抱かれるようになって間もなく──
豊は結婚した。
独り暮らしを始めた私の家にあれだけ入り浸って、体に穴まで開けて私物化した男が夫婦になる為の縁を結んでいたのは「嘘」じゃない。幼馴染で親友の姉でさえ知らなかった、相手は私の同級生で、妊娠2ヶ月。
私は男だから、結婚もできなければ、妊娠もできない。
でも、彼女はその両方を望み、豊に将来を約束された「特別な存在」である事に格差を感じて心が座礁する。
「ちょっと、待って! お前の嫁に申し訳が立たない」
相変わらず迫って来る豊に罪悪感は無い。
お前、それでも人か?
あのね、私を裏切って結婚したことは許すつもりはないし、危険な愛体験がバレたら、私は泥棒猫の衆道と蔑まれ人生破綻。これより先は「不倫」だと抵抗しても。体を下敷きにされて……
私には避妊をしてくれない、差別化。
そんなの嫌。
あなたが好きだった小さな頃の私はどこにも居ないの。だからお願い、もう私の体を求めたりしないで。どれだけ懇願しても車の助手席が濡れるだけ受ける。
豊には、時間がない。
さっさと終わらせて、愛する妻とお腹にいる我が子の元へ帰りたいだけ。
わかるけどさ……
服も脱がずに盛りのついた男同士は、世を欺き、事を成す。
罪の印を私の首筋に残して、豊は指輪で繋がれた妻の元へ戻る。
まだ私、20歳なのに──
大学の同級生は、これまでの親の監視と受験勉強から解放され異性と付き合い皆、愉しそうなキャンパスライフを日々送ってる。色地獄に、不倫まで覚えてしまった私には、眩しすぎて話が合う奴なんか一人もいなかった。
初恋を教えてくれた人と同じ立場になり、初めて、彼が言っていた意味がわかる。
20歳は、まだ子ども。
でも、私は身に積まされる事が多過ぎて、危険な悦楽に渇望する。
豊はノンケで、私以外の男とは性的な関係に至らない。
なぜ私とセックスができるのか?
同性愛とは別枠のAF専。実は貴之もそちら側の人間で、相手はできれば女がいいけど、私の穴であれば、なお良しと真面目に語る。
人が最も若くて美しい時間は短い。
それが成立するのは一瞬で、今の私は賞味期限切れの「わけあり商品」興奮して貰えるだけ、まだマシ……か。
豊が妻に選んだのは──
天然の黒髪女子。処女で嫁いだ、純妻。
なぜ、ちーちゃんと結婚したの?
それが聞けないまま、結婚式の招待状を受け取った。
「お腹が大きくなる前に」すべては彼女への配慮で進められた慶事。人生の門出を迎える白いタキシードを着た新郎は、木製コブラン柄の長椅子に掛け、優美に微笑む。
純白のウエディングドレスに包まれた聖なる女神のような新婦に、ため息まじり、泣き出す姉を抱きしめる美しい天使の情景に、微笑む家族。
私だけ場違いで壁を背に顔を伏せていると、姉から今までのお世話になったお礼を伝えるよう小突かれた。
端から見れば大好きなお兄ちゃん役が奪われて、拗ねているように見えるのだろう。
恥ずかしくて祝詞が贈れないのではない。役者が揃ったところで、苦悶の表情を浮かべる私は豊に手を繋がれ「結婚、おめでとう」蚊の鳴くような声で言わされた。
公 開 処 刑
それを何よりも望んでいた、豊の野望。
今、私が感じている酷辱はこれまで豊が感じて来た程でもない。数知れず男達に抱かれては泣き暮らす私を黙って見守って来た豊がどれ程、残酷な感情を潜めていたか。ただ、この瞬間を求めて結婚を引き換えに復讐を遂げたと知れば、新婦とお腹の子どもはどうなるか。想像するだけで、もう……居られなかった。
大きな十字架の前で、永久の愛を神に誓うふたりの背中をみつめる厳かな儀式。
何か誓約書にサインしている。
顔を覗かせると「婚姻届」にお互いの名前を記入して、これを役所に提出すれば、今日が結婚記念日になる流行りの手法。なるほど、結婚式に招かれざる客の私は涙を堪えて幸せを願うどころか、一刻も早く逃げ出したくて、隙を伺っていた。拍手に包まれるふたりはバージンロードを一歩、また一歩と踏み出す。
豊は悪戯っぽく私にウインクしながら、神に背を向け、妻子と世間を欺き…己が道を逝く。愛は狂気だね。
結婚を人生の墓場、という人がいるけど。
将来の安泰、保険として結婚を選んだわけではないと豊は云う。
こんな男に愛されたところで幸せを見失うばかり。
かわいそうな、嫁。
かわいそうな、赤ちゃん。
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