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昂る縹の熱情
第23話 ホモと呼ばれて
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それからが大変でした。
半端に体を繋げてしまった後、よくある心の温度差と、男の葛藤がぶつかり合う。
「小田桐、それ何?」
頭ひとつ分、背の高い仲間が背後からトレイの中を覗き込む。
「A定……今日は生姜焼き、もう無かったの?」
「いーなぁ」
何も言わずチケットを取り換える。私の横で、不機嫌な結斗がため息をついた。
わかりやすい態度。
周囲に気を遣わせる気分屋。それは男ならよくあること。放って置かれると気に入らなくて仲間と居られない結斗の様子を見に行く私とのやり取りに周囲は「アイツ等、付き合ってるの?」ホモ説浮上。
ふざけて言われてるにしても、こっちにしてみれば事実。ただ結斗は同性愛者ではなく体目的なのが明確で、女の子ともしている事が部屋の痕跡でわかった。
こうなると私の出番は無くなる。
人間もイルカも一緒、繁殖相手が居なければ同性でもいい。結斗はタチ、女の身体の方がいいに決まってる。そろそろ潮時かな。
綻んだストッキングと抜け殻をビニール袋に入れて結ぶと、帰宅した結斗がいつものようにソファーに座って足を投げ出す。私は何も言わず、ごみを捨てると、透けた袋の中身に結斗が気付く。
男と浮気するのはいいの。
でも、女の子とされたら……自分の不甲斐なさに押し潰されて、哀しくなる。
結斗の身体に、私は何も残せない。
できないんだもん。
誰かと比べることじゃないけど、でも──
「お前、浮気してない?」
結斗の言葉に、胸の中の何かがボキッ! と折れる。
落ち着け。
浮気してんのはテメェだろ、それだけは言うな。
だめ、だめ……ああ……我慢できない。
「喧嘩したくないんだ」
顔に出たけど交わした、私よくやった!
でも、結斗の言い分は先日のアラブ系とベッドに入ってた件について。
「あれ絶対やってんだろ。いい加減にしろよ」
「タイミング悪い時に来るからだよ」
「俺ん家にも、男連れ込んでるんじゃないだろうな」
「まさか、結斗じゃあるまいし」
「……は?」
眉を吊り上げる結斗の顔を空箱で、ぽんと叩く。
「うっかり中に出して、妊娠させんなよ?」
「誤解すんな」
「じゃあ、僕以外の男と寝たの?」
「お前だって……」
認めた。意地で突っぱねて欲しかったのに、嫌気が差して本性が剥き出しになりそう。結斗には見せたくない、我慢……我慢だよ。ここで怒ったら、負け。
私の甘いマスクで冗談混じり飄々としているけど、水面下では激情が沸騰して間欠泉の如く吹き上がる勢いだ。この激しさが真性Mの特徴。煽り倒して薄ら嗤う、私の奇行を暴力で制圧できる強い男にしか惹かれない。
だから、喧嘩をして自分に負けるような男には、何も譲れないし、情けを掛けてやる優しさも持ち合わせてないことが辛かった。
「お前だって浮気してんだろ」
「大きな声出さないで」
「お前が怒らせてんだろ!」
「僕は女の子としない。結斗は女の子がいいんでしょう」
「なんで俺のこと信じてくれないんだよ」
拳で壁を叩いたまま、苦しい声を漏らす。
俺だけじゃ足りないの?
まゆに恥かかせたくないから学校でもすげぇ我慢してるのに……。
他の男と喋ってるだけで、イライラして、気が狂いそうだ。
なんで俺の気持ち、わかんねぇーんだよ。
心を砕いて、叫ぶ。
結斗の恋心に気が付く私はその酷い出来に驚きを隠せない。
だって、常識的に考えてよ。
無差別的な淫乱に ―――― 恋 ―――― する?
自分が恋愛対象になっていた事に衝撃を受けて、結斗に「好きだ」と言われ、押し倒される頃には、身体が反応して断れなかった。
好きな人と、エッチするとこんな感じなのかな。
激しい。それよりもっと恥ずかしくて、気持ちいい所を一緒に探しながら、そこを目掛けて突き上げられたら「好き」しか言葉が出てこない。
流れる汗を拭いもせず、私の体感に心を寄せる、結斗が可愛い。
でも、私はセックスが好きなだけ。
結斗は数あるセフレのひとりでしかない。
ただ若い純正たる好青年というだけで、経済力も、経験もないこの男の情熱に絆されている私にいつか罰が当たる。
その前にもう一度、優しいをキスして。
半端に体を繋げてしまった後、よくある心の温度差と、男の葛藤がぶつかり合う。
「小田桐、それ何?」
頭ひとつ分、背の高い仲間が背後からトレイの中を覗き込む。
「A定……今日は生姜焼き、もう無かったの?」
「いーなぁ」
何も言わずチケットを取り換える。私の横で、不機嫌な結斗がため息をついた。
わかりやすい態度。
周囲に気を遣わせる気分屋。それは男ならよくあること。放って置かれると気に入らなくて仲間と居られない結斗の様子を見に行く私とのやり取りに周囲は「アイツ等、付き合ってるの?」ホモ説浮上。
ふざけて言われてるにしても、こっちにしてみれば事実。ただ結斗は同性愛者ではなく体目的なのが明確で、女の子ともしている事が部屋の痕跡でわかった。
こうなると私の出番は無くなる。
人間もイルカも一緒、繁殖相手が居なければ同性でもいい。結斗はタチ、女の身体の方がいいに決まってる。そろそろ潮時かな。
綻んだストッキングと抜け殻をビニール袋に入れて結ぶと、帰宅した結斗がいつものようにソファーに座って足を投げ出す。私は何も言わず、ごみを捨てると、透けた袋の中身に結斗が気付く。
男と浮気するのはいいの。
でも、女の子とされたら……自分の不甲斐なさに押し潰されて、哀しくなる。
結斗の身体に、私は何も残せない。
できないんだもん。
誰かと比べることじゃないけど、でも──
「お前、浮気してない?」
結斗の言葉に、胸の中の何かがボキッ! と折れる。
落ち着け。
浮気してんのはテメェだろ、それだけは言うな。
だめ、だめ……ああ……我慢できない。
「喧嘩したくないんだ」
顔に出たけど交わした、私よくやった!
でも、結斗の言い分は先日のアラブ系とベッドに入ってた件について。
「あれ絶対やってんだろ。いい加減にしろよ」
「タイミング悪い時に来るからだよ」
「俺ん家にも、男連れ込んでるんじゃないだろうな」
「まさか、結斗じゃあるまいし」
「……は?」
眉を吊り上げる結斗の顔を空箱で、ぽんと叩く。
「うっかり中に出して、妊娠させんなよ?」
「誤解すんな」
「じゃあ、僕以外の男と寝たの?」
「お前だって……」
認めた。意地で突っぱねて欲しかったのに、嫌気が差して本性が剥き出しになりそう。結斗には見せたくない、我慢……我慢だよ。ここで怒ったら、負け。
私の甘いマスクで冗談混じり飄々としているけど、水面下では激情が沸騰して間欠泉の如く吹き上がる勢いだ。この激しさが真性Mの特徴。煽り倒して薄ら嗤う、私の奇行を暴力で制圧できる強い男にしか惹かれない。
だから、喧嘩をして自分に負けるような男には、何も譲れないし、情けを掛けてやる優しさも持ち合わせてないことが辛かった。
「お前だって浮気してんだろ」
「大きな声出さないで」
「お前が怒らせてんだろ!」
「僕は女の子としない。結斗は女の子がいいんでしょう」
「なんで俺のこと信じてくれないんだよ」
拳で壁を叩いたまま、苦しい声を漏らす。
俺だけじゃ足りないの?
まゆに恥かかせたくないから学校でもすげぇ我慢してるのに……。
他の男と喋ってるだけで、イライラして、気が狂いそうだ。
なんで俺の気持ち、わかんねぇーんだよ。
心を砕いて、叫ぶ。
結斗の恋心に気が付く私はその酷い出来に驚きを隠せない。
だって、常識的に考えてよ。
無差別的な淫乱に ―――― 恋 ―――― する?
自分が恋愛対象になっていた事に衝撃を受けて、結斗に「好きだ」と言われ、押し倒される頃には、身体が反応して断れなかった。
好きな人と、エッチするとこんな感じなのかな。
激しい。それよりもっと恥ずかしくて、気持ちいい所を一緒に探しながら、そこを目掛けて突き上げられたら「好き」しか言葉が出てこない。
流れる汗を拭いもせず、私の体感に心を寄せる、結斗が可愛い。
でも、私はセックスが好きなだけ。
結斗は数あるセフレのひとりでしかない。
ただ若い純正たる好青年というだけで、経済力も、経験もないこの男の情熱に絆されている私にいつか罰が当たる。
その前にもう一度、優しいをキスして。
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