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第一章 誰なんだお前。白髪の男との出会い
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「……夢か」
いつの間にか昼寝をしていたらしい。
ゆっくりと頭を起こすと、頭痛がした。
「変なとこで寝ちまったな」
誰にともなく呟いて、大きくあくびした。
ここは俺が通う大学のカフェテラスだ。
次の講義まで時間があるから、予習でもするかと珍しく本を開いたが、すぐに眠っていたようだ。
スマホで時刻を確認する。
次の講義まであと十分。これじゃあ予習なんてできない。
「……まあいいか」
過ぎちまったことは仕方がない。
それよりも、久しぶりに見た昔の夢のほうが大事だった。
あれは、俺の初恋だ。
小さいころにたった一回、近所で出会った知らない子。
とても可愛くて、思わず助けてやりたいほどほっそりしたその子の名前は……
「なんだっけ」
すっかり忘れてしまった。
俺の名前は明石晄。大学二年生だ。
そこそこの大学でそれなりの一年間をすごして、すっかり生活にも慣れた。
自宅から通ってるから、生活で困ることもない。
つまり、すっかり退屈な日常を過ごしている。
そのせいで、今日もうっかりカフェで昼寝するほどダラダラしてしまっていた。
先輩たちを見ていると、そろそろ就職へ向けて動きださなきゃなって思うんだが、どうも実感が湧かない。だって、ついこの間入学したばっかりだろ。
「ううん。そろそろ移動するか……ん?」
サッと振り向いた。
俺の視界にあるのは、カフェの片隅に置かれたどでかい観葉植物だけだ。何代か前の先輩が育てたというドラセナ・ドラコ。ドラゴン・ツリーとも呼ばれる木はホウキをさかさまにしたような形で、元気に葉っぱを生え散らかしている。
竜血樹とも呼ばれるその観葉植物は大学の片隅なんかにあるにしては大きすぎる。
しかし、いくら大きいと言っても木は木だ。
俺はため息をつくと、肩の力を抜いた。いつの間にか緊張していたらしい。
「……またか」
前言撤回。
まったく退屈だというわけじゃあない。
俺は昔から妙に視線を感じることがある。
今だってそうだ。人に見られているような、鋭い感覚を首の後ろに感じた。
まあ、振り返ってみても、あるのは元気な木だけなんだが。
それでも、母さんなんかは心配して「身の危険に気を付けなさいね」なんて言うけど、女の子ならともかく俺は男だ。
もし本当に変質者が俺を追っていたとしても、返り討ちにする自信はある。
「そんなことより就職だよ。ぜんぜん当てがないよな」
「就職?」
急に声をかけられて、驚いて顔を向けた。
さっきまでたしかに誰もいなかったのに、俺の向かいの席に座っている男がいる。
見た目にこだわるタイプなんだろうか。脱色したのか、透きとおった白い髪が目立つ。長い前髪が片目を隠していた。間違いない、これは自分大好きナルシスト系ビジュアル野郎だ。
見るからに美術系の学生っぽいが、美術系の学部なんて、うちの大学にあったか?
しかし、それすら魅力的に思えるほど美しい顔をしていた。
すっきりと通った鼻筋に、やや薄めの唇。切れ長の瞳は、日本人にも珍しいほど深い黒色だ。
女子に人気がある何とかいう俳優に似ている。だけど、妙に気が抜けないっつーか、野生の狼みたいにゾクゾクするんだよな。
鋭いっつーか、まるで今にも食われちまいそうというか。
そんなことを考えていたせいか、なんだか頭がくらくらしてきた。
いつの間にか昼寝をしていたらしい。
ゆっくりと頭を起こすと、頭痛がした。
「変なとこで寝ちまったな」
誰にともなく呟いて、大きくあくびした。
ここは俺が通う大学のカフェテラスだ。
次の講義まで時間があるから、予習でもするかと珍しく本を開いたが、すぐに眠っていたようだ。
スマホで時刻を確認する。
次の講義まであと十分。これじゃあ予習なんてできない。
「……まあいいか」
過ぎちまったことは仕方がない。
それよりも、久しぶりに見た昔の夢のほうが大事だった。
あれは、俺の初恋だ。
小さいころにたった一回、近所で出会った知らない子。
とても可愛くて、思わず助けてやりたいほどほっそりしたその子の名前は……
「なんだっけ」
すっかり忘れてしまった。
俺の名前は明石晄。大学二年生だ。
そこそこの大学でそれなりの一年間をすごして、すっかり生活にも慣れた。
自宅から通ってるから、生活で困ることもない。
つまり、すっかり退屈な日常を過ごしている。
そのせいで、今日もうっかりカフェで昼寝するほどダラダラしてしまっていた。
先輩たちを見ていると、そろそろ就職へ向けて動きださなきゃなって思うんだが、どうも実感が湧かない。だって、ついこの間入学したばっかりだろ。
「ううん。そろそろ移動するか……ん?」
サッと振り向いた。
俺の視界にあるのは、カフェの片隅に置かれたどでかい観葉植物だけだ。何代か前の先輩が育てたというドラセナ・ドラコ。ドラゴン・ツリーとも呼ばれる木はホウキをさかさまにしたような形で、元気に葉っぱを生え散らかしている。
竜血樹とも呼ばれるその観葉植物は大学の片隅なんかにあるにしては大きすぎる。
しかし、いくら大きいと言っても木は木だ。
俺はため息をつくと、肩の力を抜いた。いつの間にか緊張していたらしい。
「……またか」
前言撤回。
まったく退屈だというわけじゃあない。
俺は昔から妙に視線を感じることがある。
今だってそうだ。人に見られているような、鋭い感覚を首の後ろに感じた。
まあ、振り返ってみても、あるのは元気な木だけなんだが。
それでも、母さんなんかは心配して「身の危険に気を付けなさいね」なんて言うけど、女の子ならともかく俺は男だ。
もし本当に変質者が俺を追っていたとしても、返り討ちにする自信はある。
「そんなことより就職だよ。ぜんぜん当てがないよな」
「就職?」
急に声をかけられて、驚いて顔を向けた。
さっきまでたしかに誰もいなかったのに、俺の向かいの席に座っている男がいる。
見た目にこだわるタイプなんだろうか。脱色したのか、透きとおった白い髪が目立つ。長い前髪が片目を隠していた。間違いない、これは自分大好きナルシスト系ビジュアル野郎だ。
見るからに美術系の学生っぽいが、美術系の学部なんて、うちの大学にあったか?
しかし、それすら魅力的に思えるほど美しい顔をしていた。
すっきりと通った鼻筋に、やや薄めの唇。切れ長の瞳は、日本人にも珍しいほど深い黒色だ。
女子に人気がある何とかいう俳優に似ている。だけど、妙に気が抜けないっつーか、野生の狼みたいにゾクゾクするんだよな。
鋭いっつーか、まるで今にも食われちまいそうというか。
そんなことを考えていたせいか、なんだか頭がくらくらしてきた。
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