お前が全ての元凶だ

藤崎 柚葉

文字の大きさ
上 下
1 / 1

先生、頼むからどうにかしてくれ

しおりを挟む
「お前、学校に何しに来たの?」
 俺は前の席から配られたプリントを丸めて筒を作り、後ろで自分の机に突っ伏すクラスメイトの頭を叩いた。
 三十分前、午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。だが、俺の後ろの席にいるコイツは半日も寝ている。つまり、この光景は午前の授業からだ。そのくせちゃっかり昼休みには起きるからたちが悪い。
 同学年の中でも問題児筆頭のクラスメイトは、鬱陶うっとうしそうに自分の頭の上に乗ったプリントを払い除けた。やっと顔を上げる気になったらしい。寝ぼけ眼の問題児は数秒の間を空けると、満を持して俺の質問に答えた。
「……早弁?」
「そんな訳あるか! お前はずっと寝ていただろ! 学生なら勉強しろ!」
「うるさいなあ。今は授業中だよ?」
「お前にだけは言われたくねーよ!」
 つい大声を上げてしまった。
 慌てて周りを見渡せば、他のクラスメイトたちから生温い笑顔を向けられていた。毎度のことながら、俺だけ問題児の世話を押し付けられて腹が立つ。
 先生には同情されたのか、あわれむような眼差しをいただいた。いや、そんなのいらないって。頼むからこの問題児を注意してくれよ。職務放棄か。
 あ、そういやコイツには教師泣かせの異名があった。……駄目だ。厄介事は全て俺に回される運命らしい。
「ちくしょう。前の席になったのが運の尽きか……」
「神様って残酷だよね」
「不本意だが、初めてお前と同意見だよ」
 神様、俺は早急な席替えを所望します。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...