暗闇坂お伽草紙

夏実朋可

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終わりの終わり

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 暗闇坂で、妖しの者ども相手に占いをしている少年のお話は、ひとまずこれにて終わりにございます。
 しかしながら、もうほんの少しだけお話をしておきたい事がございます。
 それと言うのはナナ太郎の行く末の事。
 実は、今のナナ太郎は人とも物の怪とも定まってはおりません。
 どちらの道に進むかはナナ太郎しだいなのでございます。
 ナナ太郎が人としての感情を持つことが無かったら、ナナ太郎は物の怪として生きていくことになり、感情を持つことができたなら、人としての道が開ける事となるのです。
 ナナ太郎にあの珠を埋め込んだのはナナ太郎の事を見守っているあの光の中の主様、ナナ太郎が父親と思っているお方です。
 その光の主にとって今の気がかりはやはりこのような状態のナナ太郎にございました。
 光の主様としては、ナナ太郎のその亡骸を人として大地に帰る事を望んでいます。
 それには、ナナ太郎が感情と言うものを持つようになり、真の人間として自ら目覚めていくしかないのです。
 ナナ太郎の持つ勾玉は、光の主様からの贈り物。
 その勾玉の正体・・と言えばいいのでしょうか。あの珠、勾玉は神々たちの世界の物でございます。
 神々の世界の物なのでナナ太郎が申したように時間と言うしがらみがございません。
 そしてナナ太郎があの珠を持っている限り、ナナ太郎にも時間と言うものがございません。
 つまり、ナナ太郎が大きく成長するのに時間の制限もないという事なのでございます。
 あの珠をナナ太郎に授けた光の主様は、どれだけ時間がかかってもよいという思いでナナ太郎のの進むべき道を見守っておいでなのでございます。

 どうやら、生きていくのに必要な仲間も出来たようだ。
 あの子もこれでこの世にしっかりと身を置き、己がどうあるべきか、何が正しいか、何を選べば己にとって一番なのかと、進むべき道に気がつけば、一生涯を静かに終え大地に帰る事ができるのだが。
 はてさて、あの子は様々な事に気がついてくれるだろうか。
 まあ、とにかくあの子を信じて待つ事としよう。

 そんな光の主様の独り言も聞こえてきたところで、このお話は終いとする事に致したく存じます。
 そうそう、言い残した事が後もう一つ。
 本日も、ナナ太郎は逢魔ヶ刻に暗闇坂にやってまいります。
 そして、いつもと変わらぬ様子で妖しの者ども相手に占いをしているのでございます。

                                          (完)
                             
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