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其の三の七
③
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本当にまた来よう
お可奈は、自分の決めた事はきっちり実現する性格だ。
近いうちにまたナナ太郎の長屋へやってくることは間違いないことである。
二人の後姿を見送って、家の中に戻ろうとするナナ太郎に平次郎が聞いた。
「今日の占いは、ちと今までのとは違うように思えたが」
「今日のは『火珠林』と言われる古くからある占いと同じような方法で占いました。自分の気持ちと意志が強く出る占いなんです」
『火珠林』と言うのは、中国より伝わった二千年の歴史ある占いだ。
易と言われる物をより簡素化し占いを受ける者の手を使う事によって、直接、その者の心境・気持ちが現れると言われているものだった。
少しややこしく難解なので、これ以上の説明はしないこととする。
が、ナナ太郎の生きるその時代に、ナナ太郎がそのような占いをどうして知っていたのかはナゾだ。
そのカギはナナ太郎が占いをすることができる球を埋め込んだ主、あの光の中の影の主がかかわっているのかもしれない。
「じゃあ、あの占いの答えは、あのお嬢さん自身のの心の中の声って事かい?」
「そう、人の人生は、自らの意志によって方向が変わっていくものですから」
「ほう。で、物の怪はどうなんだい? 物の怪も意思によって変わるのかい?それとも違うと?」
「妖には過去も未来もないのです。だから見えるものも少ない。いつもの珠の占いは妖には丁度いいのです。妖達の何もかもすべてが見えるわけではなくほんの少しの未来が見えるだけですから。だけど、あの珠を使って人を占うとすると、人の何もかも、すべてが見えてしまう。占いは曖昧なほうがいいのです。だから今回は違う方法で占いました」
「すべてってぇのは」
「すべてです。この珠で占うとすべての時間が一点に集まって見えてくるのです。いや、この珠には時間と言う認識がないと言えばいいのでしょうか。だから、時間とは関係なく人の一生のすべてが一気に見えるのです」
「それじゃあ自分の意思で変わる未来ってのは、あるようでないんじゃ?」
「意思で変えられるものと変えられないものがあるんですよ」
「う~ん、なんだか小難しい事はわからねぇがなぁ。いつもとは違うやり方をしたって言うが、結局、あの子の一生は見えたのか見えないのか……」
「ある程度は見えた、と言えばいいですかね」
「ほう、分かったんだ」
にやりとして平次郎はナナ太郎に近づき、耳元で小声で訪ねた。
「で、あの子の旦那は誰なんだい?」
馬場先濠の河童の平次郎がそう聞くと、感情がないと言われていたナナ太郎がいたずら小僧のような顔をした。
「そりゃー、いつも傍にいるあの方に決まってますよ」
ナナ太郎も平次郎に向って小声で答えた。
ナナ太郎と馬場先濠の平次郎は、再びお可奈と為松の二人が帰る後姿を見て、二人の将来と重ね合わせた。
お可奈のそのかかあ殿下ぶりを想像し、お互いに顔を見合わせてクスリと笑った。
江戸の夕焼けが一段ときれいな日の事だった。
お可奈は、自分の決めた事はきっちり実現する性格だ。
近いうちにまたナナ太郎の長屋へやってくることは間違いないことである。
二人の後姿を見送って、家の中に戻ろうとするナナ太郎に平次郎が聞いた。
「今日の占いは、ちと今までのとは違うように思えたが」
「今日のは『火珠林』と言われる古くからある占いと同じような方法で占いました。自分の気持ちと意志が強く出る占いなんです」
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易と言われる物をより簡素化し占いを受ける者の手を使う事によって、直接、その者の心境・気持ちが現れると言われているものだった。
少しややこしく難解なので、これ以上の説明はしないこととする。
が、ナナ太郎の生きるその時代に、ナナ太郎がそのような占いをどうして知っていたのかはナゾだ。
そのカギはナナ太郎が占いをすることができる球を埋め込んだ主、あの光の中の影の主がかかわっているのかもしれない。
「じゃあ、あの占いの答えは、あのお嬢さん自身のの心の中の声って事かい?」
「そう、人の人生は、自らの意志によって方向が変わっていくものですから」
「ほう。で、物の怪はどうなんだい? 物の怪も意思によって変わるのかい?それとも違うと?」
「妖には過去も未来もないのです。だから見えるものも少ない。いつもの珠の占いは妖には丁度いいのです。妖達の何もかもすべてが見えるわけではなくほんの少しの未来が見えるだけですから。だけど、あの珠を使って人を占うとすると、人の何もかも、すべてが見えてしまう。占いは曖昧なほうがいいのです。だから今回は違う方法で占いました」
「すべてってぇのは」
「すべてです。この珠で占うとすべての時間が一点に集まって見えてくるのです。いや、この珠には時間と言う認識がないと言えばいいのでしょうか。だから、時間とは関係なく人の一生のすべてが一気に見えるのです」
「それじゃあ自分の意思で変わる未来ってのは、あるようでないんじゃ?」
「意思で変えられるものと変えられないものがあるんですよ」
「う~ん、なんだか小難しい事はわからねぇがなぁ。いつもとは違うやり方をしたって言うが、結局、あの子の一生は見えたのか見えないのか……」
「ある程度は見えた、と言えばいいですかね」
「ほう、分かったんだ」
にやりとして平次郎はナナ太郎に近づき、耳元で小声で訪ねた。
「で、あの子の旦那は誰なんだい?」
馬場先濠の河童の平次郎がそう聞くと、感情がないと言われていたナナ太郎がいたずら小僧のような顔をした。
「そりゃー、いつも傍にいるあの方に決まってますよ」
ナナ太郎も平次郎に向って小声で答えた。
ナナ太郎と馬場先濠の平次郎は、再びお可奈と為松の二人が帰る後姿を見て、二人の将来と重ね合わせた。
お可奈のそのかかあ殿下ぶりを想像し、お互いに顔を見合わせてクスリと笑った。
江戸の夕焼けが一段ときれいな日の事だった。
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