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同思考の男
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東と西に同じ日の同じ時刻に生まれた二人の男がいた。
東の男と西の男は同じ思考をする脳を持っていた。
二人は住む場所も違えば家族構成も違う。
東に住む男と西に住む男。
小学校、中学校。高校。それぞれ西の学校、東の学校へ進学していた。大学は同じ思考の為か同じ学部に進んではいたが違う大学に入学し卒業していた。
だがやがて二人は同じ会社に就職をする。
一人の男は東からやってくる。
一人の男は西からやってくる
会社に入って最初のうちは違う部署に配属されていた。しかし、同じ思考の男達の能力もまた同じ方向を向いていた為得意な事も同じような事。たとえば、こんなことをすればきっと会社の為になる。たとえば、こう答えれば自分の出世につながる。入社して翌年には二人とも同じ部署に配属される事となった。
同じ思考の男達はまったく同じ事をする。
良い事も失敗する事もまったく同じ。
「お前たちは本当に似たもの同士だな」と少しあきれた調子で言っているのは彼らの上司。
そんなに息が合うのならと仕事を共同ですることを任される。だけど、二人とも同じ思考の持ち主。一人以上仕事はできなかった。
「二人でお前たちは一人前なのか? 」
二人を鋭く突っ込む上司。
上司の言葉は容赦ない。事ある事に二人を叱咤する。
「お前ら二人はいらないな。どちらかだけでいい」
「給料半分会社に返したらどうだ。二人で一人分の給料でいいだろう」
二人は耐え切れなくなって、そんな上司を殺そうとする。
「やっぱりお前も同じ事を考えたか」
同思考の東の男と西の男は話し合わなくてもお互いの心がわかるのだった。
綿密に考えた筈の殺人計画だった。
会社の屋上から上司を突き落とす。そんなことを考えた。二人はお互いに出し合うアイディアをお互いに感心する。以心伝心とはこの事だと思った。上司を十五階建ての会社のビルの屋上に呼び出す口実も二人同じように思いついた。
まず西の男が上司の前に立って会社を辞めたいとほのめかす。ハッキリと辞めるとは言わない。相談しているような口調で言うのがいいかもしれない。油断させる、上司に考える隙を与えるのがいい。上司のその後の反応を見るのがいいだろう。
上司はどんな顔をするだろうか。ほっとする顔をするのだろうか。何か嫌みのようなことを言ってくるのだろうか。
東の男が上司の後ろに突然立って自分も辞めたいとほのめかす。後ろを振り返ったところを西の男が上司を抱え込む。東の男も足を持ち上げる。後は屋上に靴をそろえておけばいい。
二人ともこれ以上すばらしい計画はないと思った。単純な殺人計画も二人が褒め合いすばらしい考えだと言い合うとどんどんすごい計画なのだと思えるようになってくる。相手のことを褒めるのは自分を褒めているような気がした。
その日がやってきた。
時刻は就業時間が終わった後。ドキドキしながら上司を呼び出す。ところが二人ともこの計画に落とし穴があったことを気がつかなかった。もともと練ったように思えても二人、同じ思考の持ち主だ。穴ぼこだらけな話も気がつかないし気がつけない。誰も突っ込む相手もいないから当然といえば当然な話だが。
上司は屋上へはやってこない。代わりに来たのは彼の1番の部下だった。
彼は学生時代アメフトをしていたという。大きながっしりとした体格の男だった。
二人は屋上に来たのが上司ではなく部下であったのにもかかわらず計画を実行することにした。
二人は気が動転していた。
だが、二人とも計画を実行することに迷いはなかった。
あ・うんの呼吸で計画は行われる。
「部長に話があったんだが」
「部長は今忙しいんだ。お前の話なら俺が聞いとけばいいだろうという部長の判断だ。どうせ会社を辞める話だろ」
「そうだ……」
がたいのいいアメフトの彼の後ろから東の男の声がした。
「おい!俺の話も聞いてくれよ!」
振り返ったアメフトの彼に西の男は飛びかかる。西の男がアメフトの彼の両腕を抱え込んだ様子を見て東の男もアメフトの彼に飛びかかっていった。
さすがにアメフトの男は強かった。
三人がもみ合ううちに、西の男と東の男が二人ともアメフトの彼に振り回され、事もあろうに二人とも十五階建てのビルの屋上から落ちてしまった。
アメフトの男は落ちた場所を屋上から乗り出して見るがあたりは薄暗くよく見えない。慌てて一階まで降り落ちたであろう場所を探すが、二人の姿はどこにもなかった。
西の男と東の男。
屋上から落ちた二人の体。
二人で1人。
二人は気がついた。
傷ついた二人の体は都合の良いことにお互いがお互いを補えばちょうどうまい具合に一人前の体になる事を。
二人は新しい人生を生きることに決めた。
二人とも会社に辞表を送って会社を辞めた。
「俺達は二人で一人だから、お互いの使えるところを使って再生しよう。だけど顔だけは…ね」
そうお互い顔だけは個性があってどうにもならない。
二人は一日おきに頭を付け替える事にした。
ある会社に二人の男が転職してきた。
この二人は顔を合わせたことがない。
なぜなら、二人のシフトは決して重なる事はなかったから。
東の男と西の男は同じ思考をする脳を持っていた。
二人は住む場所も違えば家族構成も違う。
東に住む男と西に住む男。
小学校、中学校。高校。それぞれ西の学校、東の学校へ進学していた。大学は同じ思考の為か同じ学部に進んではいたが違う大学に入学し卒業していた。
だがやがて二人は同じ会社に就職をする。
一人の男は東からやってくる。
一人の男は西からやってくる
会社に入って最初のうちは違う部署に配属されていた。しかし、同じ思考の男達の能力もまた同じ方向を向いていた為得意な事も同じような事。たとえば、こんなことをすればきっと会社の為になる。たとえば、こう答えれば自分の出世につながる。入社して翌年には二人とも同じ部署に配属される事となった。
同じ思考の男達はまったく同じ事をする。
良い事も失敗する事もまったく同じ。
「お前たちは本当に似たもの同士だな」と少しあきれた調子で言っているのは彼らの上司。
そんなに息が合うのならと仕事を共同ですることを任される。だけど、二人とも同じ思考の持ち主。一人以上仕事はできなかった。
「二人でお前たちは一人前なのか? 」
二人を鋭く突っ込む上司。
上司の言葉は容赦ない。事ある事に二人を叱咤する。
「お前ら二人はいらないな。どちらかだけでいい」
「給料半分会社に返したらどうだ。二人で一人分の給料でいいだろう」
二人は耐え切れなくなって、そんな上司を殺そうとする。
「やっぱりお前も同じ事を考えたか」
同思考の東の男と西の男は話し合わなくてもお互いの心がわかるのだった。
綿密に考えた筈の殺人計画だった。
会社の屋上から上司を突き落とす。そんなことを考えた。二人はお互いに出し合うアイディアをお互いに感心する。以心伝心とはこの事だと思った。上司を十五階建ての会社のビルの屋上に呼び出す口実も二人同じように思いついた。
まず西の男が上司の前に立って会社を辞めたいとほのめかす。ハッキリと辞めるとは言わない。相談しているような口調で言うのがいいかもしれない。油断させる、上司に考える隙を与えるのがいい。上司のその後の反応を見るのがいいだろう。
上司はどんな顔をするだろうか。ほっとする顔をするのだろうか。何か嫌みのようなことを言ってくるのだろうか。
東の男が上司の後ろに突然立って自分も辞めたいとほのめかす。後ろを振り返ったところを西の男が上司を抱え込む。東の男も足を持ち上げる。後は屋上に靴をそろえておけばいい。
二人ともこれ以上すばらしい計画はないと思った。単純な殺人計画も二人が褒め合いすばらしい考えだと言い合うとどんどんすごい計画なのだと思えるようになってくる。相手のことを褒めるのは自分を褒めているような気がした。
その日がやってきた。
時刻は就業時間が終わった後。ドキドキしながら上司を呼び出す。ところが二人ともこの計画に落とし穴があったことを気がつかなかった。もともと練ったように思えても二人、同じ思考の持ち主だ。穴ぼこだらけな話も気がつかないし気がつけない。誰も突っ込む相手もいないから当然といえば当然な話だが。
上司は屋上へはやってこない。代わりに来たのは彼の1番の部下だった。
彼は学生時代アメフトをしていたという。大きながっしりとした体格の男だった。
二人は屋上に来たのが上司ではなく部下であったのにもかかわらず計画を実行することにした。
二人は気が動転していた。
だが、二人とも計画を実行することに迷いはなかった。
あ・うんの呼吸で計画は行われる。
「部長に話があったんだが」
「部長は今忙しいんだ。お前の話なら俺が聞いとけばいいだろうという部長の判断だ。どうせ会社を辞める話だろ」
「そうだ……」
がたいのいいアメフトの彼の後ろから東の男の声がした。
「おい!俺の話も聞いてくれよ!」
振り返ったアメフトの彼に西の男は飛びかかる。西の男がアメフトの彼の両腕を抱え込んだ様子を見て東の男もアメフトの彼に飛びかかっていった。
さすがにアメフトの男は強かった。
三人がもみ合ううちに、西の男と東の男が二人ともアメフトの彼に振り回され、事もあろうに二人とも十五階建てのビルの屋上から落ちてしまった。
アメフトの男は落ちた場所を屋上から乗り出して見るがあたりは薄暗くよく見えない。慌てて一階まで降り落ちたであろう場所を探すが、二人の姿はどこにもなかった。
西の男と東の男。
屋上から落ちた二人の体。
二人で1人。
二人は気がついた。
傷ついた二人の体は都合の良いことにお互いがお互いを補えばちょうどうまい具合に一人前の体になる事を。
二人は新しい人生を生きることに決めた。
二人とも会社に辞表を送って会社を辞めた。
「俺達は二人で一人だから、お互いの使えるところを使って再生しよう。だけど顔だけは…ね」
そうお互い顔だけは個性があってどうにもならない。
二人は一日おきに頭を付け替える事にした。
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なぜなら、二人のシフトは決して重なる事はなかったから。
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