異世界オークはうまかった。ブタっぽい俺の異世界丸焼きサバイバル生活

四ノ宮士騎

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第十八話 ブタっぽい俺の夜の森① ブタと噛み付きお化け 

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 俺が森に入ってからすぐに日が落ち、辺りは暗闇に包まれてしまう。

「暗い。暗い。暗い」

 俺が連呼するほどに、思ってた以上に夜の森の中は暗かった。

 森の中が暗い原因は、地球と同じように月が夜空に浮かびながら、淡く優しい月明りを大地に降り注がせているにもかかわらず、森の中の乱立する木々たちが、月明かりをことごとく遮ってしまっていたために、末端である森の木々の下まで月明りがほとんど届いてこなかったからだ。

「ああもう暗いなあ。怖いなぁ」

 俺はそう思いながらも、ただでさえ瞼の脂肪の圧迫を受けて細い目をさらに細めながら、今は唯一の心のよりどころである一本のハルバートに括り付けられた松明の灯りと、いつのまにか昼間別れた女の子の匂いを頼りに、何とかオークと死闘を繰り広げ、女の子と別れたと思わしき場所にたどり着いていた。

「ウーンやっぱいないか?」

 俺はあの女の子がいないかキョロキョロと、辺りを見回しながらも、念のために口元に手を添えて呼び掛ける

「オーイッ誰かいるかあっ」

 返事はない。念のためにもう一度。

「オーイッ誰かいるかあっ!」

 返事はない。

 うまく逃げたか捕まったか?

 それとも、食われたか。

 俺はそう思いながらも、念のためにブヒブヒと鼻をひくつかせる。

「血の匂いはないか」

 俺が思うに多分住処に帰ったんだろ? 見た目相当なへまをやらない限り魔物に捕まりそうにない獣耳をした女の子の姿を思いだした俺は、考え続けてもきりがないしそう思うことにした。

 それに夜の森は危険だ。よく異世界ものでは、モンスターが活性化したり凶悪化したり、昼間とは比べられないほどの凶悪な魔物が出るって言うし、夜の森に不馴れな俺では不利なことは確かなので、とりあえず、夜営をしている場所に帰ることにした。

 そうして、俺が夜の森の暗さに脂肪を震わせビクビク怯えながら帰りの道を歩いていると、がさりと葉っぱが擦り合う音がしたと思うと、いきなり背後から何物かに飛びかかられる。

「うわっなんだ!?」

 俺が慌てながらとっさに松明をくくり付けたハルバートを振り回すと、俺の体に飛びかかってきた奴が「ギィギィ」と奇声を上げる。

 寄声を上げた何物かが、今度は背後から俺の首筋に噛みつこうとしているのか、鋭い犬歯が俺の首筋に触れるような感触を感じた俺は、怒声を張り上げる。

「くそっこのやろ! いいかげんにしやがれ!」

 俺は怒声を張り上げながら、松明をくくり付けたハルバートを投げ捨てて自由になった両手で、俺の体に覆い被さり背後から首筋に噛みつこうとしてくる噛みつきお化けの頭をつかむと、背負い投げの要領で力任せに体から引き剥がして地面に叩きつけると同時に、頭と思わしき部分を力任せに押さえつける。

 しかし地面に叩きつけた奴は、未だ生きているのか俺に頭を掴まれ押さえつけられているにもかかわらず暴れ始めると、不意に頭を押さえつけている俺の手に痛みが走った。

「つっ!?」

 どうやら、俺に頭を押さえつけられながらも、俺の首筋に噛みつこうとしてきた何物かが、力任せに頭を押さえつけようとしている俺の手に噛みついてきたようだった。

 手に噛みつかれたことで頭に血が上った俺は、もう容赦はしないとばかりに必殺技を発動した。

「このぉっ喰らいやがれっ噛みつきお化けっ百八十キロ~っ(実際もっとある)ボディップレス!」

 全体重を乗せた俺の腹によるボディプレスを受けた噛みつきお化けは、しばらくは腹の下で手足をばたつかせていたが、徐々に動かなくなり終いには、「ぎぎぎい
」と小さく鳴くとその動きを停止させた。

 俺は俺の腹の下にいる奴の息の根が止まったことに安堵しつつ立ち上がると、先ほど放り投げた松明を拾い上げてから、背後から俺に襲いかかり、先ほど俺のボディプレスを受けて息の根を止めた奴の正体を探るために松明を近づけた。

「蝙蝠?」

 そう、先ほど俺を背後から襲ってきたのは、地球に生息していた蝙蝠と見た目がそっくりなモンスターだったのだ。

 ただし、体長はゆうに一メートルを超え、体重はよく肥え太った体格からして、二、三十キロオーバーの大物だった。

 そうして多少の手傷は負ったものの。帰りがけに思わぬ獲物を手にした俺は、ホクホク顔で帰路に着いたのだった。
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