異世界オークはうまかった。ブタっぽい俺の異世界丸焼きサバイバル生活

四ノ宮士騎

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第三十三話 ブタっぽい俺のクッキング レシピ5 大蝙蝠の丸焼きと羽巻串

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 それからどのくらいの時間が経過しただろうか?

 いつの間にか寝入ってしまっていた俺は、朝日が上るのを合図にしたかのように、腹の音とともに目を覚ました。

「そうだ蝙蝠肉!」

 あまりに消耗していたために、マジックリュックにもしまわずに放置していた大蝙蝠の肉へと視線を向ける。

 そこには、俺が倒したときのままの首を落とされた状態の蝙蝠肉が転がっていた。

 どうやらこの近辺には、蝙蝠たちの巣や湖にモンスターフィッシュなどがいるせいで、人の食い物をかっさらっていくようなモンスターや灰色狼たちは近づかないようだった。 
「ふう危なかったぜ。いくら疲れてたとはいえ、命がけで手に入れた蝙蝠肉を奪われたら洒落にならないからな」

 俺は誰にともなく呟くと、大蝙蝠の肉を焼くための丸焼き機二号を作るために、素材(丸焼き機の土台になる。先端が枝分かれした頑丈そうな太い木の枝二本と、大蝙蝠を串刺しにして焼いても折れないような太く頑丈な木の枝)を探し始めた。

 しばらくして、先端が枝分かれした丸焼き機二号の土台になる太い木の枝を見つけたのだが、肝心の大蝙蝠を串刺しにして焼いても折れないような太く頑丈な木の枝が見つからなかったために、俺は我慢できずに、大蝙蝠によって放り投げられて、枝探しの最中に探し当てたハルバードを、大蝙蝠を焼く串として使用することにした。

 こうして丸焼き機二号の素材集めを完了した俺は、箱庭の地面に穴を掘って、二本の丸焼き機の土台を大蝙蝠を焼くのに最適な幅で固定すると、早速大蝙蝠の口の中にハルバードの尖った柄の部分を飲み込ませて、串刺しにしていった。

 丸焼き機二号に乗せる大蝙蝠の串打ちを済ませた俺は、早速大蝙蝠を丸焼き機二号に乗せようとするが、ふとあることに気が付いたために、大蝙蝠を丸焼き機二号に乗せるのをやめた。

「ふ~危ない危ない。俺としたことが、蝙蝠に羽があるのを忘れてたぜ。小さい蝙蝠なら羽根つきでも問題ないが、これだけ大きなものになると、丸焼き機にセットして肉を回転させるときに羽が邪魔になるからな」

 俺はそう呟きながら、包丁をなくしたために、ベルト越しに腰に差している鉈を手にして、広げると二メートル近くある大蝙蝠の巨大な羽を、体の根元から鉈を使って引き剥がしていった。

「こんなもんか?」

 大蝙蝠から左右の羽を剥がした俺は、少し小柄になった大蝙蝠の体を串刺しにしている串ハルバードを、「ふんぬらばぁ」と気合の声を上げながら持ち上げて、何とかかんとか丸焼き機にセットしていく。

「うしっあとは丸焼き機二号に火を入れるための薪だなっと。その前に、こいつも何とかしないとな」

 俺は大蝙蝠から鉈を使って引きはがした巨大な羽を見つめながら思案する。

「う~ん。このまま串刺しにして火にかざして焼いてもいいんだけど、焼きにくそうだしなぁ。どうすっか?」

 しばらくの間大蝙蝠の引きはがした巨大な羽とにらめっこして俺が考え始めていると、俺の視線の先を、拳大のダンゴムシが転がっていくのを発見する。

「ダンゴムシ。ダンゴムシっと。あっそうだ! 焼きにくいならまとめて丸めちまえばいい!」

 ダンゴムシを見て閃いた俺は、大蝙蝠の羽をロールパンのように、串にグルグルと巻き始める。

「できたっこれなら焼きやすいし、ほっぽっといても焼けるだろっ」

 俺は串にグルグル巻きにした蝙蝠の羽を、アスパラのベーコン巻きのように小さな木の枝で貫いて固定した羽巻き串ぐしを掲げてみせる。

 それから俺は大蝙蝠のもう片方の羽も同じように羽巻串にして、丸焼き機二号の邪魔にならないよう少し離した地面に突き刺して、丸焼き機の余熱で焼くことにした。

 こうして大蝙蝠を丸焼き機二号にセットして、少し離れた地面に羽巻串を二本突き刺して、丸焼きパーティの準備を整えた俺は、リュックの中から丸焼き機二号にくべる薪を取り出して、大蝙蝠の肉と羽巻串を焼く準備を完成させると、丸焼き機二号の薪にポケットから出した百円ライターを使って火をつける。

「にしてもでかいな。ちゃんと焼けるかな?」

 丸焼き機二号に薪をくべて火をつけながらも、体重が軽く三百キロを超えていそうな大蝙蝠のあまりの大きさに少し不安な声を上げる。

「う~ん。ま、とりあえず焼いてみて。駄目ならそれから考えよう」

 俺は自分の不安を払しょくするためにポジティブ思考に切り替える。

「それに、よく焼いた方が甘みが出てうまくなるとは思うけど、生焼けなら生焼けで食えるだろうし、問題ないない」

 俺は洞窟で味わった生の蝙蝠肉の味を思い出して、舌なめずりをしながらじっくりと丸焼き機二号を回転させて、時折丸焼き機二号に新たな薪をくべながら、大蝙蝠をじっくりと焼き始めたのだった。

 それから半時ほどの時間が経過した頃、大蝙蝠の肉から香ばしい匂いが香り始めた。

「おっそろそろか?」

 俺は待ってましたとばかりに腰を上げて、香ばしい匂いを漂わせる大蝙蝠の丸焼きへと顔を近づけブヒブヒとブタ鼻をひくつかせる。

「おお~~っなんだこの得も言われぬ甘い匂いは! 普通の蝙蝠肉の非じゃねぇっ! くうぅっもう我慢できねぇっ!」

 夜の王である大蝙蝠の肉の上げる香ばしい匂いに我慢できなくなった俺は、丸焼きにしていた大蝙蝠の肉を刺している串を持ち上げようとするが、あまりの重さと大きさにうまく持ち上げられなかった。

「ああもうっ早く食いてぇのにっ!」

 食べたいのに食べれないジレンマに、俺は地団太を踏んだ。

 地団太を踏んだのがよかったのか、ある考えが俺の脳裏をよぎった。

「そうだっ持ち上げられなければ、持ち上げなければいいんだ!」

 俺は丸焼き機の下の炭化している木々を、一メートルほどのほかの木の枝で、払いのける。

 そうして、丸焼き機の下の炭化した木や未だに燃えている木をよけると共に、俺は丸焼き機の正面に座り込み合唱した。

「至高の肉を育んでくれた樹液と虫たちに感謝して、いただきます!」

 箱庭が育んでくれた恵に感謝の言葉を述べると、俺はガブリッ!! と、大口を開けて巨大な大蝙蝠肉のど真ん中にガブリついた。

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!! うんんんんんんんめぇぇええええぇえええええええええええええっっっ!!!!!!」

 俺はガブリついた大蝙蝠から溢れ出す肉汁を口の中いっぱいに頬張りながら、森全体に響き渡るほどの大音量で、歓喜の大歓声を上げていた。

「しかもなんだこの肉ぅうっっ!!! 普通の蝙蝠肉なんか比較にならないほどっあんめぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええっっっ!!!!!!」

 そこからはもう、虫たちや夜の王である大蝙蝠との死闘で腹が減っていたのを除いても、止まらなかった。

 それほどに大蝙蝠の肉はうまく。そして、甘かったのだ!!!

 俺は無我夢中で食べ進み、三百キロを優に超える丸焼きした大蝙蝠肉の塊を、口の中で咀嚼し、腹の中に流し込んでいった。

 それから半時にも満たない時間で、俺は大蝙蝠の肉をあっさりと平らげたのだった。

「ああっもうねぇのかよっ!? ぜっんっぜん喰い足りねえよ!! これならあと十匹はいける!!!ってのに!!!」

 そうして文句を言っていると、俺はふとあることを思い出していた。

「そうだっまだあるじゃねぇか! 蝙蝠肉!」

 俺が声を上げて思い出したのは、丸焼き機で焼くには邪魔になるからと、鉈を使って大蝙蝠の胴体から引き剥がして、丸焼き機の余熱で焼いていた大蝙蝠の巨大な羽を使った羽巻串だった。

 俺は丸焼き機二号の余熱で、程よく焼き上がった羽巻串を手に取って、目の前でジッと見つめていた。

「う~ん。大蝙蝠の肉はうまかった。というか甘かった。だから大蝙蝠の羽もうまい。というか甘い。と思うんだが……見た目がな……」

 そう、なんというか大蝙蝠の羽を丸めて作った羽巻串なのだが、焼く前はただ羽を巻いたといった感じでよかったのだが、ただ焼いた後が見た目的に、こうなんていうか。丸焼き機二号の余熱で温められて、溶けて固まっちまった姿が、真っ黒い芋虫その物って感じになってしまっていたのだ。

 さすがの俺も元いた世界を含めても、虫食はしてこなかったので、どうも見た目的に食欲がわかなかったのだ。

 ただ軽く嗅いだだけだが、匂いは少し弱いが大蝙蝠肉とさほど変わらない。だから味も変わらないと思うのだが、とにかく見た目が俺の食欲を減退させるほどに、ものすんごくグロイかったのだ。

 そのためしばらくの間俺は、ウーンどうしたもんか? と思って考えていたのだが、食べ物を残すというのは俺の流儀に反する! と重い腰を上げると俺は、羽巻串を自分のブタ鼻に近づけて、ブヒブヒとよ~く匂いを嗅ぎ始めた。

「匂いは……うん。悪くない。胴体よりは甘い匂いが控えめだが、見た目さえ我慢すればいけそうだ」

 羽巻串の匂いを嗅いだ俺は感想を漏らした後、「え~いままよ!」と声を上げながら目をつぶると、意を決して、丸焼き機二号の余熱で温められて、見た目がものすごくグロイ真っ黒い芋虫と化している羽巻串にかぶりついて咀嚼する。

「ん? おおっこれは……羽の薄い皮膜のような部分が、コラーゲンだ!! しかも被膜周りの骨が、なんというか軟骨で、コリコリとしてて、うまい!!」

 俺は二枚あった羽を軽々と食い尽くした。

 そして羽巻串が、余熱で温められて固まった原因を知る。

「ああ、なるほどコラーゲンが解けて固まったのか」

 そうして大蝙蝠の肉を堪能した俺は、メインディッシュへと近づいていった。 
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