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第四十六話 ブタっぽい俺のドナドナ
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「うんめぇぇえ~~~っっ!!! さすがいい具材をしこたま喰らってる高級鳥肉だぜぇーーーっっ!!! このジューシーさっていったらオーク肉や蝙蝠肉の非じゃねぇっなんつーか、オークのジューシーさと蝙蝠肉の甘さを混ぜ合わせた得も言われぬこのうまさ! まさに森の支配者にふさわしい極上のうまさだぜぇっっ!!!」
俺が狂喜乱舞しながら仕留めて丸焼きにした巨大ヒドラ肉(胴体)を堪能し、おつまみがてら串刺しにしてほどよく焼けたヒドラの頭を丸かじりしていると、俺の意識が食事に向いて警戒が薄まっていると察したのか、遠巻きながらいつの間にか兵士たちによって俺は囲まれてしまっていた。
そう兵士たちは、一部の逃亡者を除いて、隊長であるガルバンの命令で森の中に身を潜めて反撃の機会を虎視眈々とうかがっていたのだ。
もちろん食事に夢中の俺がそれに気づくことはない。
そればかりか、俺の思考は先ほどヒドラに横取りされたオークキング肉に思いを馳せていた。
「はぁ俺のオークキング肉……食ってみたかったなぁ……」
ヒドラに丸焼き機ごと噛み砕かれて、肉片ひとつ残さず丸焼き機ごと消化されたオークキング肉に届かぬ思いを馳せて意気消沈した俺は小さな声で呟いた。
俺が意気消沈する様子を見て、俺の気勢がそがれたと感じたのか、兵士たちの包囲網が先ほどよりも、狭まって来ているようだったが、当然そんなことはおかまいなしに、俺は森中に轟ろかんばかりの声で叫び声を上げた。
「オークキング肉カンバーック!!」
俺が突然上げた声に驚いたのか、遠巻きに俺を取り囲んでいる兵士たちが、ビクッと体を震わせると共に小声で話し始める。
「オークがしゃべった」
「新種のオークだ」
「いや、たまにモンスターは、人の言葉を口にすることがある」
兵士たちの呟きにオーク討伐部隊の隊長であるガルバンが、説明する。
「そうなのですか?」
「ああ、で、大抵人語を理解するモンスターを放っておいた国は、数年後には滅びているという」
「なら隊長」
「ああ、オークキングにヒドラもいない今、何としてでも奴を仕留めるぞっ」
「しかし奴はあのオークキングだけでなく、六つ首ヒドラもやってるんだぞ!? そんな奴に俺らが束になったって敵うはずないだろうが!?」
「そうだ。奴は、たて続けにオークキングと戦いその後、ヒドラとも死闘を繰り広げ倒している。ということはだ。奴はこの上なく疲弊している。少なくとも、体力を回復されてから戦うよりも勝率は上だ。殺るなら今をおいて他にない!」
ガルバンの言葉を聞いた兵士たちは、コクリと頷きあって覚悟を決めると、自分たちの故郷を護るために、弓矢や槍や剣を握る手に力を込めて、少しづつ少しづつブタ包囲網を狭めていった。
兵士たちがオーク(ブタ(俺)包囲網を狭めていると、突然草むらが揺れて木々の間から、様々な種類の獣の耳や尻尾を生やし、斧や短剣や弓矢を手にした武装した獣人(けものびと)たちが現れる。
突然木々の間から現れた背中や腰に矢筒を背負い。腰のベルトに斧や短剣を刺した獣人たちの姿を見たガルバンが、いぶかし気に声を上げる。
「オルガか? なぜここに?」
「ああ、しばらく村を留守にしていたんだが、つい先日村に帰還することができた。そのときに領主様であるオールストン卿から村に知らされたオーク討伐の名令書を目にしてな。遅ればせながら駆けつけたというわけだ」
「そうか、助かる」
「で、標的のオークはこれか?」
「ああ、こいつで最後だ」
「ふん。ガルバン。お主にしては、中々頑張ったではないか」
「まあな」
「ならばさっさと最後の一匹を仕留めて、領主様やこの地に住まう民草を安心させてやろうではないか」
「おうよ」
オーク討伐隊の隊長のガルバンと、獣人のリーダーであるオルガは、互いに頷き合うと、ガルバンは槍をオルガは斧を携えて、互いに配下の兵士や猟師仲間たちに目配せをする。
ガルバン配下の兵士たちと、オルガの猟師仲間は一斉に弓の弦に矢をたがえて引き絞ると、丁度ヒドラ肉を食い終わり満足げに腹を撫で回すオーク(俺)に狙いを定める。
配下の兵士や仲間たちに弓矢でオークに狙いをつけさせた二人は、獲物を持っていない手を上げると、一気に俺に向かって降り下ろした。
「オークに向かって一斉に矢を放て!」
「今だてぇー!」
それが合図となって、俺に向かって二十本近い矢が四方八方から解き放たれたのだった。
ほぼ同時に草陰に隠れていた小さな影が、俺の前に飛び出して来て声を大にして叫んだ。
「ブタさん!」
いきなり草陰から飛び出して来た小さな影は、とっさに俺を矢から守ろうと体を大の字に広げて盾にした。
草陰から飛び出し、矢の雨の中に身を投げ出した者の正体を知っている者から悲壮な声が上がる。
「ナナリー!」
矢の雨から俺をかばおうと草陰からいきなり飛び出してきたケモ耳娘を見た俺は、全力で俺をかばおうと、とっさに大の字に両手両足を広げて、まるで盾の様に俺の前に身を投げ出したケモ耳娘の上へと肉壁になるためにのし掛かった。
それを見たオルガは自分の娘がオークにのし掛かられたと思い込み、血相を変えると、声を荒らげ手にした斧を振りかざしながら、俺を目指して全速力で駆け出して来た。
「ナナリー!」
ケモ耳娘の名を呼ぶオルガの声を聞いた俺はこう聞き返した。
「ナポリタン?」
ナしかあってないし、耳がどうかしてると思われても仕方ないが、俺にはそう聞こえたのだから仕方ない。
「ナポリタンだとどこにある!?」
聞き覚えのある食べ物の名前を聞いた俺は、条件反射でその場に立ち上がると、数十本の矢の雨に無防備に身をさらした。
もちろん俺に、弓矢なんて高速で飛来する矢をかわすなんて芸当ができるはずがなく、次の瞬間。
俺に向かって放たれた矢は、狙いたがわず俺の腹と言わず背中と言わず全身に突き刺さったのだった。
だが、弾力性に富んだ脂肪の鎧に身を護られている俺の体に、オーク用の矢じり程度が突き刺さるはずもなく、
ボンヨヨヨーンッと体に四方八方から飛んできて、突き刺さっていた矢を弾き飛ばしていた。
「なっ!?」
「はっ!?」
俺の体に当たった矢の思わぬ動きを見たガルバンにオルガ。果ては俺を取り囲む兵士たちの動きが、一瞬フリーズする。
そしてこれも至極当然のことだが、俺が弾き飛ばした矢は、俺を包囲する兵士たちへとばら蒔かれた。
自分達が放った必殺の一撃とも思っていた弓矢から放った矢が、自分たちに跳ね返ってきたために、兵士や猟師の多くが茫然とした表情を浮かべて、その場で尻餅をついてしまう。
しかしそんな中でも、俺にのし掛かられたケモ耳娘を救おうと勇気あるものたちが剣や槍や斧を手に握りしめ果敢に俺に戦いを挑んで来た。
のだが、次に上がる悲鳴を聞いて皆体を強ばらせるのだった。
「みんなブタさんをいじめないで!」
ケモ耳娘が体を震わせながらその場に立ち上がり、俺をガルバンやオルガたちから護るように両手を広げて立ちはだかったからだ。
「なにをしているナナリーッ!?」
先ほどのし掛かられたオークを庇う娘を見て、信じられないようなものを見る目をしながらもオルガが、何とか喉奥から絞り出したような声を上げた。
「お父さんもみんなもブタさんをいじめないでっ!」
「だからナナリーなにを言って……」
「このブタさんは、悪いブタさんじゃない!」
「おいおいおじょうちゃん」
「悪いブタさんじゃないっていったいどういうことだ?」
オークを庇う愛娘を見て冷静さを欠いているオルガに代わって、ガルバンが困惑気味に問いただしてくる。
「ブタさんはっ一人で森に入ってオークに襲われたわたしを命がけで助けてくれたっいいブタさんなのっ!」
「オークが獣人とはいえ、人を? しかも性欲の対称としか見ていない女を助けただって? ナナリーちゃん。いくらそのオークを助けたいからって嘘を言っちゃいけないよ」
「ほんとなのっホントに助けてもらったの!」
「そんなことあるがわけない」
オルガがナナリーの言葉を完全否定する声を上げる。
「オルガの言う通りだ。ナナリーちゃん。オークが、人を。しかも性欲のはけ口としてしか見ていない女を助けるはずがない」
ガルバンもオルガの意見に賛同する。
オルガとガルバンの二人が同時に声を上げ、一笑にたす。
が、兵士中から声が上がる
「そういえば、領主様の愛娘であるヒステリア様も、つい先日オークに襲われたところを、なんかブタみたいなよく肥え太ったオークに助けてもらったって言ってたなぁ」
「それは本当か!?」
兵士の呟きを耳にしたオルガが声を荒らげる。
「た、たぶん」
「うーむ。どうするオルガ、俺はいまいち信じられないんだが、」
「ああ俺もだ。だが」
「だがなんだ?」
「こいつがオークでなくブタの獣人(けものびと)だったとしたら?」
オルガが口にした獣人という言葉で、俺を取り囲む兵士や猟師たちが口々に呟き始めた。
「ブタの獣人か」
「それならありうるか」
「あ~うん。確かにあいつらの外見はオークによく似てるしな」
「ああ、俺は奴らが服を着てなかったらオークと見分けがつかないしな」
チラリチラリチラリと、皆が皆ブタの獣人という単語と共に俺をチラ見する。
なぜみんなして俺をチラ見する? と俺がいぶかしげな視線を向けていると、オルガとガルバンが俺を見つめながら意を決したように口を開いた。
「調べてみる必要があるか」
「うむ。とりあえずおとなしくついてくるならば、まずは我らが領主様オールストン卿に会わせことの真意を確かめる。それに、もし万が一もあり得ないが、こいつがオークでなかった場合。長い間この森に君臨し、領主様や周辺住民たちを悩ませていたオークキングに、果てはヒドラまで退治した英雄に、我らが刃を向けたことになる。とりあえずこの場は刃を納めるが、貴様がオークかいなかその真意を確かめるまでは、警戒させてもらおう。領主様の元へ連行する間拘束させてもらうが構わないな?」
う~ん。俺としては別に力付くで逃げ出してもいいんだが、そうすると、人間の作るお菓子にたどりつけないし、何より命がけで俺を護ろうとしてくれたこのケモ耳娘に迷惑がかかるかもしれない。
ふぅ。仕方ないか。とりあえずケモ耳娘や人間たちとの関係も悪化させたくないし、従ってやるか。それにこの世界の人間はオークより弱いみたいだし、いざとなれば逃げられんだろ。俺が自分の中で決断を下してから固唾を飲んで俺の動向を見守っている人間たちに答えた。
「俺は腹が減るのが耐えられない。だから。道中飯を腹一杯食わせてくれるなら」
「その程度の条件ならば飲もう」
オルガが頷きガルバンも頷いて同意する。
こうして俺は、ガルバン率いるオーク討伐隊と、グルガ率いる森の狩人たちに領主のいる街までドナドナされていくことになったのだった。
もちろん道中俺が安請け合いした彼らの携帯食料を、信じられないほど食い荒らしたせいで、彼らが飢え死にしかけたのはいうまでもない。
俺が狂喜乱舞しながら仕留めて丸焼きにした巨大ヒドラ肉(胴体)を堪能し、おつまみがてら串刺しにしてほどよく焼けたヒドラの頭を丸かじりしていると、俺の意識が食事に向いて警戒が薄まっていると察したのか、遠巻きながらいつの間にか兵士たちによって俺は囲まれてしまっていた。
そう兵士たちは、一部の逃亡者を除いて、隊長であるガルバンの命令で森の中に身を潜めて反撃の機会を虎視眈々とうかがっていたのだ。
もちろん食事に夢中の俺がそれに気づくことはない。
そればかりか、俺の思考は先ほどヒドラに横取りされたオークキング肉に思いを馳せていた。
「はぁ俺のオークキング肉……食ってみたかったなぁ……」
ヒドラに丸焼き機ごと噛み砕かれて、肉片ひとつ残さず丸焼き機ごと消化されたオークキング肉に届かぬ思いを馳せて意気消沈した俺は小さな声で呟いた。
俺が意気消沈する様子を見て、俺の気勢がそがれたと感じたのか、兵士たちの包囲網が先ほどよりも、狭まって来ているようだったが、当然そんなことはおかまいなしに、俺は森中に轟ろかんばかりの声で叫び声を上げた。
「オークキング肉カンバーック!!」
俺が突然上げた声に驚いたのか、遠巻きに俺を取り囲んでいる兵士たちが、ビクッと体を震わせると共に小声で話し始める。
「オークがしゃべった」
「新種のオークだ」
「いや、たまにモンスターは、人の言葉を口にすることがある」
兵士たちの呟きにオーク討伐部隊の隊長であるガルバンが、説明する。
「そうなのですか?」
「ああ、で、大抵人語を理解するモンスターを放っておいた国は、数年後には滅びているという」
「なら隊長」
「ああ、オークキングにヒドラもいない今、何としてでも奴を仕留めるぞっ」
「しかし奴はあのオークキングだけでなく、六つ首ヒドラもやってるんだぞ!? そんな奴に俺らが束になったって敵うはずないだろうが!?」
「そうだ。奴は、たて続けにオークキングと戦いその後、ヒドラとも死闘を繰り広げ倒している。ということはだ。奴はこの上なく疲弊している。少なくとも、体力を回復されてから戦うよりも勝率は上だ。殺るなら今をおいて他にない!」
ガルバンの言葉を聞いた兵士たちは、コクリと頷きあって覚悟を決めると、自分たちの故郷を護るために、弓矢や槍や剣を握る手に力を込めて、少しづつ少しづつブタ包囲網を狭めていった。
兵士たちがオーク(ブタ(俺)包囲網を狭めていると、突然草むらが揺れて木々の間から、様々な種類の獣の耳や尻尾を生やし、斧や短剣や弓矢を手にした武装した獣人(けものびと)たちが現れる。
突然木々の間から現れた背中や腰に矢筒を背負い。腰のベルトに斧や短剣を刺した獣人たちの姿を見たガルバンが、いぶかし気に声を上げる。
「オルガか? なぜここに?」
「ああ、しばらく村を留守にしていたんだが、つい先日村に帰還することができた。そのときに領主様であるオールストン卿から村に知らされたオーク討伐の名令書を目にしてな。遅ればせながら駆けつけたというわけだ」
「そうか、助かる」
「で、標的のオークはこれか?」
「ああ、こいつで最後だ」
「ふん。ガルバン。お主にしては、中々頑張ったではないか」
「まあな」
「ならばさっさと最後の一匹を仕留めて、領主様やこの地に住まう民草を安心させてやろうではないか」
「おうよ」
オーク討伐隊の隊長のガルバンと、獣人のリーダーであるオルガは、互いに頷き合うと、ガルバンは槍をオルガは斧を携えて、互いに配下の兵士や猟師仲間たちに目配せをする。
ガルバン配下の兵士たちと、オルガの猟師仲間は一斉に弓の弦に矢をたがえて引き絞ると、丁度ヒドラ肉を食い終わり満足げに腹を撫で回すオーク(俺)に狙いを定める。
配下の兵士や仲間たちに弓矢でオークに狙いをつけさせた二人は、獲物を持っていない手を上げると、一気に俺に向かって降り下ろした。
「オークに向かって一斉に矢を放て!」
「今だてぇー!」
それが合図となって、俺に向かって二十本近い矢が四方八方から解き放たれたのだった。
ほぼ同時に草陰に隠れていた小さな影が、俺の前に飛び出して来て声を大にして叫んだ。
「ブタさん!」
いきなり草陰から飛び出して来た小さな影は、とっさに俺を矢から守ろうと体を大の字に広げて盾にした。
草陰から飛び出し、矢の雨の中に身を投げ出した者の正体を知っている者から悲壮な声が上がる。
「ナナリー!」
矢の雨から俺をかばおうと草陰からいきなり飛び出してきたケモ耳娘を見た俺は、全力で俺をかばおうと、とっさに大の字に両手両足を広げて、まるで盾の様に俺の前に身を投げ出したケモ耳娘の上へと肉壁になるためにのし掛かった。
それを見たオルガは自分の娘がオークにのし掛かられたと思い込み、血相を変えると、声を荒らげ手にした斧を振りかざしながら、俺を目指して全速力で駆け出して来た。
「ナナリー!」
ケモ耳娘の名を呼ぶオルガの声を聞いた俺はこう聞き返した。
「ナポリタン?」
ナしかあってないし、耳がどうかしてると思われても仕方ないが、俺にはそう聞こえたのだから仕方ない。
「ナポリタンだとどこにある!?」
聞き覚えのある食べ物の名前を聞いた俺は、条件反射でその場に立ち上がると、数十本の矢の雨に無防備に身をさらした。
もちろん俺に、弓矢なんて高速で飛来する矢をかわすなんて芸当ができるはずがなく、次の瞬間。
俺に向かって放たれた矢は、狙いたがわず俺の腹と言わず背中と言わず全身に突き刺さったのだった。
だが、弾力性に富んだ脂肪の鎧に身を護られている俺の体に、オーク用の矢じり程度が突き刺さるはずもなく、
ボンヨヨヨーンッと体に四方八方から飛んできて、突き刺さっていた矢を弾き飛ばしていた。
「なっ!?」
「はっ!?」
俺の体に当たった矢の思わぬ動きを見たガルバンにオルガ。果ては俺を取り囲む兵士たちの動きが、一瞬フリーズする。
そしてこれも至極当然のことだが、俺が弾き飛ばした矢は、俺を包囲する兵士たちへとばら蒔かれた。
自分達が放った必殺の一撃とも思っていた弓矢から放った矢が、自分たちに跳ね返ってきたために、兵士や猟師の多くが茫然とした表情を浮かべて、その場で尻餅をついてしまう。
しかしそんな中でも、俺にのし掛かられたケモ耳娘を救おうと勇気あるものたちが剣や槍や斧を手に握りしめ果敢に俺に戦いを挑んで来た。
のだが、次に上がる悲鳴を聞いて皆体を強ばらせるのだった。
「みんなブタさんをいじめないで!」
ケモ耳娘が体を震わせながらその場に立ち上がり、俺をガルバンやオルガたちから護るように両手を広げて立ちはだかったからだ。
「なにをしているナナリーッ!?」
先ほどのし掛かられたオークを庇う娘を見て、信じられないようなものを見る目をしながらもオルガが、何とか喉奥から絞り出したような声を上げた。
「お父さんもみんなもブタさんをいじめないでっ!」
「だからナナリーなにを言って……」
「このブタさんは、悪いブタさんじゃない!」
「おいおいおじょうちゃん」
「悪いブタさんじゃないっていったいどういうことだ?」
オークを庇う愛娘を見て冷静さを欠いているオルガに代わって、ガルバンが困惑気味に問いただしてくる。
「ブタさんはっ一人で森に入ってオークに襲われたわたしを命がけで助けてくれたっいいブタさんなのっ!」
「オークが獣人とはいえ、人を? しかも性欲の対称としか見ていない女を助けただって? ナナリーちゃん。いくらそのオークを助けたいからって嘘を言っちゃいけないよ」
「ほんとなのっホントに助けてもらったの!」
「そんなことあるがわけない」
オルガがナナリーの言葉を完全否定する声を上げる。
「オルガの言う通りだ。ナナリーちゃん。オークが、人を。しかも性欲のはけ口としてしか見ていない女を助けるはずがない」
ガルバンもオルガの意見に賛同する。
オルガとガルバンの二人が同時に声を上げ、一笑にたす。
が、兵士中から声が上がる
「そういえば、領主様の愛娘であるヒステリア様も、つい先日オークに襲われたところを、なんかブタみたいなよく肥え太ったオークに助けてもらったって言ってたなぁ」
「それは本当か!?」
兵士の呟きを耳にしたオルガが声を荒らげる。
「た、たぶん」
「うーむ。どうするオルガ、俺はいまいち信じられないんだが、」
「ああ俺もだ。だが」
「だがなんだ?」
「こいつがオークでなくブタの獣人(けものびと)だったとしたら?」
オルガが口にした獣人という言葉で、俺を取り囲む兵士や猟師たちが口々に呟き始めた。
「ブタの獣人か」
「それならありうるか」
「あ~うん。確かにあいつらの外見はオークによく似てるしな」
「ああ、俺は奴らが服を着てなかったらオークと見分けがつかないしな」
チラリチラリチラリと、皆が皆ブタの獣人という単語と共に俺をチラ見する。
なぜみんなして俺をチラ見する? と俺がいぶかしげな視線を向けていると、オルガとガルバンが俺を見つめながら意を決したように口を開いた。
「調べてみる必要があるか」
「うむ。とりあえずおとなしくついてくるならば、まずは我らが領主様オールストン卿に会わせことの真意を確かめる。それに、もし万が一もあり得ないが、こいつがオークでなかった場合。長い間この森に君臨し、領主様や周辺住民たちを悩ませていたオークキングに、果てはヒドラまで退治した英雄に、我らが刃を向けたことになる。とりあえずこの場は刃を納めるが、貴様がオークかいなかその真意を確かめるまでは、警戒させてもらおう。領主様の元へ連行する間拘束させてもらうが構わないな?」
う~ん。俺としては別に力付くで逃げ出してもいいんだが、そうすると、人間の作るお菓子にたどりつけないし、何より命がけで俺を護ろうとしてくれたこのケモ耳娘に迷惑がかかるかもしれない。
ふぅ。仕方ないか。とりあえずケモ耳娘や人間たちとの関係も悪化させたくないし、従ってやるか。それにこの世界の人間はオークより弱いみたいだし、いざとなれば逃げられんだろ。俺が自分の中で決断を下してから固唾を飲んで俺の動向を見守っている人間たちに答えた。
「俺は腹が減るのが耐えられない。だから。道中飯を腹一杯食わせてくれるなら」
「その程度の条件ならば飲もう」
オルガが頷きガルバンも頷いて同意する。
こうして俺は、ガルバン率いるオーク討伐隊と、グルガ率いる森の狩人たちに領主のいる街までドナドナされていくことになったのだった。
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