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第五十九話 エピローグ
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「ブタ殿。ヒステリア森林の災厄である暴食王ビーフから町を救ってくれたことまことに感謝する」
謁見の間に敷かれた赤い絨毯の終着点にある王様の座る豪奢な椅子に腰を掛けながら、王様の着るような豪華な衣装に身を包んだオールストン領領主であるビクトリーが、俺にお礼の言葉をかけてくる。
「ブヒッ」
謁見の間の赤い絨毯の上に盛られたフルーツの盛り合わせを、口に放り込んだりシャクシャクと丸かじりしながら、俺は生返事を返した。
もちろん俺の生返事は、口の中がフルーツでいっぱいだったので、ブタの様な声になってだ。
「今回ビーフの一件で大変世話になったブタ殿には、褒美の品を取らせたいのだが、ブタ殿はお礼の品に、金貨や領地よりも、食せるもの。つまり食材がよいと思われるがいかがかな?」
「ブヒッ」
俺は見たこともないバレーボール大の果実を丸かじりしながら大仰に頷いた。
「うむ。ならば我が城や街の食料の無期限。無料譲渡権でいかがかな?」
「ブヒィッ!!!」
俺が一も二もなく勢い良く頷き返すのを見た領主のビクトリーや謁見の間に詰めていた城の有力な人物たちや街の実力者たちが、俺の喜ぶ顔を見て、皆同意するかのように満面の笑顔で頷いていた。
そうして俺には、暴食王ビーフから街を救ったために、城と街にある食料を無料で得ることのできる無期限食料譲渡権が褒美として渡されたのだった。
それから無期限食料譲渡権を使って、城の食料庫を三日で空にした俺は、青筋立てた領主に城を追い出されたために、今度は街に対して無期限食料譲渡権を使って街の食べ物を食べ始めた。
街のみんなも最初は、俺が満面の笑みで街の食料をねだるのを喜んで、笑顔で対応してくれたのだが、次第に俺が街の食料を物凄い勢いで食い続けたために、日を追うごとに街のみんなから笑顔が消えて、終いには町の食料をねだる俺を、親の仇であるかのように物凄い形相で睨み付けるようになっていった。
そして、そのことに気が付かず、その後も街の食料を枯渇させる勢いで食い続けた俺が、衛兵に捕らえられて街を追い出されたのは言うまでもない。
それから俺は領主の温情で、小さな木の家とわずかばかりの領地をもらい。
そこに根付く食い物を搾取する権利を得ると、ヒステリア森林でオークを狩って暮らしてた時のような自給自足の生活に戻った。
変わったものと言えば、武装オークから助けてやったあのケモ耳娘のナポリタンが、時たま俺の世話を焼きに来ることと、領主の城から食料を猫ばばしてきた領主の娘であるテリヤキが、お礼がわりに、猫の額ほどの小さな俺の領地の森では手に入りにくい調味料や野菜を置いていってくれるようになったことぐらいだ。
そうして今日もまた、俺は日々のおいしいごはんを求めて「ブヒヒヒヒーンッ」とブタ声を森に響かせながらオークを追いかけるのだった。
完
謁見の間に敷かれた赤い絨毯の終着点にある王様の座る豪奢な椅子に腰を掛けながら、王様の着るような豪華な衣装に身を包んだオールストン領領主であるビクトリーが、俺にお礼の言葉をかけてくる。
「ブヒッ」
謁見の間の赤い絨毯の上に盛られたフルーツの盛り合わせを、口に放り込んだりシャクシャクと丸かじりしながら、俺は生返事を返した。
もちろん俺の生返事は、口の中がフルーツでいっぱいだったので、ブタの様な声になってだ。
「今回ビーフの一件で大変世話になったブタ殿には、褒美の品を取らせたいのだが、ブタ殿はお礼の品に、金貨や領地よりも、食せるもの。つまり食材がよいと思われるがいかがかな?」
「ブヒッ」
俺は見たこともないバレーボール大の果実を丸かじりしながら大仰に頷いた。
「うむ。ならば我が城や街の食料の無期限。無料譲渡権でいかがかな?」
「ブヒィッ!!!」
俺が一も二もなく勢い良く頷き返すのを見た領主のビクトリーや謁見の間に詰めていた城の有力な人物たちや街の実力者たちが、俺の喜ぶ顔を見て、皆同意するかのように満面の笑顔で頷いていた。
そうして俺には、暴食王ビーフから街を救ったために、城と街にある食料を無料で得ることのできる無期限食料譲渡権が褒美として渡されたのだった。
それから無期限食料譲渡権を使って、城の食料庫を三日で空にした俺は、青筋立てた領主に城を追い出されたために、今度は街に対して無期限食料譲渡権を使って街の食べ物を食べ始めた。
街のみんなも最初は、俺が満面の笑みで街の食料をねだるのを喜んで、笑顔で対応してくれたのだが、次第に俺が街の食料を物凄い勢いで食い続けたために、日を追うごとに街のみんなから笑顔が消えて、終いには町の食料をねだる俺を、親の仇であるかのように物凄い形相で睨み付けるようになっていった。
そして、そのことに気が付かず、その後も街の食料を枯渇させる勢いで食い続けた俺が、衛兵に捕らえられて街を追い出されたのは言うまでもない。
それから俺は領主の温情で、小さな木の家とわずかばかりの領地をもらい。
そこに根付く食い物を搾取する権利を得ると、ヒステリア森林でオークを狩って暮らしてた時のような自給自足の生活に戻った。
変わったものと言えば、武装オークから助けてやったあのケモ耳娘のナポリタンが、時たま俺の世話を焼きに来ることと、領主の城から食料を猫ばばしてきた領主の娘であるテリヤキが、お礼がわりに、猫の額ほどの小さな俺の領地の森では手に入りにくい調味料や野菜を置いていってくれるようになったことぐらいだ。
そうして今日もまた、俺は日々のおいしいごはんを求めて「ブヒヒヒヒーンッ」とブタ声を森に響かせながらオークを追いかけるのだった。
完
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