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第4話 新入生歓迎会 クスコフの挨拶とフィフスの説明
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ルミナとカナタが言われるがままに放送された中央広場に向かうと、そこには見た目からではわかりにくいが、聖なる力や魔力を持った様々な種族の多種多様な子供たちが、ざっと見渡す限りでも数百名以上が集まっていた。
ちなみに中央広場の広さは、数百名以上の人々が同時に運動や訓練などを行っても余裕がある程である。
そこにカナタたちより少し遅れてジークも中央広場へと入ってくる。
全員がそろったと見たのか、先ほどの校内放送と同じように声帯拡声器を使って、中央広場全体に声が響いた。
「全員、集まりましたね?」
声のしたほうを向くと、さきほどカナタとルミナを助けてくれた女性の教師が声帯拡声器を使っていた。
声の拡大は魔法での拡大も可能なのだが、無駄な魔力を使わないために、現在はこうして声帯拡声器なる魔法の力を宿した道具。つまりマジックアイテムを使って行うのが一般的である。こうすれば個人の魔力を消費しないばかりか、誰が声を拡大しようが個人差がなく、ある一定の範囲に声を届けることができるからである。 ちなみにこの形は現在の拡声器に酷似している。
「では、これより当聖魔道学園に入学する生徒達の歓迎の意味合いもこめて、学園長に簡単な訓辞を述べていただきます。みなさん。心して聞くように」
拡声器を使った教師に紹介された学園長と思しき白髪を長く伸ばして豊かなひげを蓄えた老人が、木製の杖を突きながら出てきて壇上へと上る。
「え~諸君この聖魔道学園への入学おめでとう。こほん。今紹介にあずかった学園長のクスコフ・イズ・グレコウラスじゃ」
クスコフってあの大聖魔道士の? などと中央広場に集まった新入生と思しき生徒たちがざわめきだす。
「まぁわしのことは大多数の生徒諸君も知っていると思うが、ちまたでは大聖魔道士などと呼ばれちょる。だがまぁこの学園に入った以上、諸君らはわしの子も同然じゃ。学内であったなら気さくに話しかけてくれたまえ。そして一度しかないこの学園生活を思う存分楽しんでくれたまえ。と長々と話し続けるのも疲れるし、諸君らもそれを望んではおらんじゃろうからの。この辺で挨拶を終えるぞい」
言って壇上からあっさりと引き下がるかと思いきや、学園長は何か言い忘れたのか壇上へとって返すと一言付け足してくる。
「それから一つ言い忘れておったのだがの。くれぐれも、入学初日に死なんようにな」
まるで朝の挨拶をするかのように気軽に言ってから、外は暑いの。暑いの。と言いながら壇上をあとにして、学園長のクスコフはさっさと学舎へと引っ込んでしまった。
「へ? 死なんようにって? ここって学園でしょ?」
「そんな戦時下ならともかく、ねぇ?」
「そうそう、早々死ぬようなことになりゃしないって。戦場じゃあるまいし」
などと新入生同士が軽口を叩きあっていると、先ほど学園長を紹介した教師が再び口を開いた。
「私の名前はフィフス・アラームド・コーデリカ。あなた達新入生の何名かが所属することになる魔王科の担当教師です」
今紹介があったように彼女の名はフィフス・アラームド・コーデリカ。後にカナタの通う魔王科を受け持つことになる女教師である。
「ではこれから、私達現行教師と在学生。つまりあなた達の先輩に当たる上級生達で、あなた達がこの聖魔道学園に入学するにあたり、歓迎会を催したいと思います」
「歓迎会だってさ」
「うむ。楽しみだな」
なんださっきの学園長の言葉は脅しか、などと胸をなでおろす生徒たち。
「いきなり学園長が死ぬなとか言うから、なぁ?」
「ああ、俺もやばいことになるのかと思ったぜ」
「あたしも、あたしも」
などと新入生たちが言い合っていると、教師のフィフスが口を開く。
「で、歓迎会の種目ですが」
「種目?」
フィフスの妙な言い回しに生徒たちは一様に顔に疑問符を浮かべた。
「互いの実力を知り、なおかつ親睦を深める意味合いも込めて、あなた達新入生には在校生達と模擬戦を行ってもらいたいと思います。とはいえ、さすがにいきなりチーム戦をしろといっても無理があるでしょうから、つまり決闘。あなた達には一対一で在校生とデュエルを行ってもらいたいと思います」
「デュエルだって!?」
「いきなりかよ」
「でも、みんなにわたしたちの実力を示すいい機会ね」
口々に声を掛け合う新入生たち。その中の一人、長い金髪をした男子生徒が一歩前にでて、フィフスに声をかけた。
「ティーチャーフィフス。決闘。デュエルにおけるルールは?」
「特にありません」
「ということは」
「ええ、この学園に弱者は必要ありませんから、たとえ対戦相手を殺してしまってもかまいません」
フィフスの言葉を耳にした新入生たちの大多数は意気揚々としていたが、そんな中カナタや少数の者たちだけが顔に驚きの表情を浮かべて困惑気味に呟いていた。
「……マジかよ?」
「ま、元々魔王や勇者を打倒するために作られた二つの学園が統合してできたんだから、まぁ妥当なところね。入学早々死なないでよ、カナタ」
「ルミナも優しいとこあるじゃんか」
「まぁあんたが死んだら、私の素性がばれちゃうだろうし」
「って、結局そっちかよ」
「組み合わせは事前にこちらで決めさせてもらいました。なお組み合わせに対する異議や抗議は一切受け付けませんのであしからず」
一部の者を除く自分の力に絶対の自信がある者たちはやる気満々だった。
ちなみに中央広場の広さは、数百名以上の人々が同時に運動や訓練などを行っても余裕がある程である。
そこにカナタたちより少し遅れてジークも中央広場へと入ってくる。
全員がそろったと見たのか、先ほどの校内放送と同じように声帯拡声器を使って、中央広場全体に声が響いた。
「全員、集まりましたね?」
声のしたほうを向くと、さきほどカナタとルミナを助けてくれた女性の教師が声帯拡声器を使っていた。
声の拡大は魔法での拡大も可能なのだが、無駄な魔力を使わないために、現在はこうして声帯拡声器なる魔法の力を宿した道具。つまりマジックアイテムを使って行うのが一般的である。こうすれば個人の魔力を消費しないばかりか、誰が声を拡大しようが個人差がなく、ある一定の範囲に声を届けることができるからである。 ちなみにこの形は現在の拡声器に酷似している。
「では、これより当聖魔道学園に入学する生徒達の歓迎の意味合いもこめて、学園長に簡単な訓辞を述べていただきます。みなさん。心して聞くように」
拡声器を使った教師に紹介された学園長と思しき白髪を長く伸ばして豊かなひげを蓄えた老人が、木製の杖を突きながら出てきて壇上へと上る。
「え~諸君この聖魔道学園への入学おめでとう。こほん。今紹介にあずかった学園長のクスコフ・イズ・グレコウラスじゃ」
クスコフってあの大聖魔道士の? などと中央広場に集まった新入生と思しき生徒たちがざわめきだす。
「まぁわしのことは大多数の生徒諸君も知っていると思うが、ちまたでは大聖魔道士などと呼ばれちょる。だがまぁこの学園に入った以上、諸君らはわしの子も同然じゃ。学内であったなら気さくに話しかけてくれたまえ。そして一度しかないこの学園生活を思う存分楽しんでくれたまえ。と長々と話し続けるのも疲れるし、諸君らもそれを望んではおらんじゃろうからの。この辺で挨拶を終えるぞい」
言って壇上からあっさりと引き下がるかと思いきや、学園長は何か言い忘れたのか壇上へとって返すと一言付け足してくる。
「それから一つ言い忘れておったのだがの。くれぐれも、入学初日に死なんようにな」
まるで朝の挨拶をするかのように気軽に言ってから、外は暑いの。暑いの。と言いながら壇上をあとにして、学園長のクスコフはさっさと学舎へと引っ込んでしまった。
「へ? 死なんようにって? ここって学園でしょ?」
「そんな戦時下ならともかく、ねぇ?」
「そうそう、早々死ぬようなことになりゃしないって。戦場じゃあるまいし」
などと新入生同士が軽口を叩きあっていると、先ほど学園長を紹介した教師が再び口を開いた。
「私の名前はフィフス・アラームド・コーデリカ。あなた達新入生の何名かが所属することになる魔王科の担当教師です」
今紹介があったように彼女の名はフィフス・アラームド・コーデリカ。後にカナタの通う魔王科を受け持つことになる女教師である。
「ではこれから、私達現行教師と在学生。つまりあなた達の先輩に当たる上級生達で、あなた達がこの聖魔道学園に入学するにあたり、歓迎会を催したいと思います」
「歓迎会だってさ」
「うむ。楽しみだな」
なんださっきの学園長の言葉は脅しか、などと胸をなでおろす生徒たち。
「いきなり学園長が死ぬなとか言うから、なぁ?」
「ああ、俺もやばいことになるのかと思ったぜ」
「あたしも、あたしも」
などと新入生たちが言い合っていると、教師のフィフスが口を開く。
「で、歓迎会の種目ですが」
「種目?」
フィフスの妙な言い回しに生徒たちは一様に顔に疑問符を浮かべた。
「互いの実力を知り、なおかつ親睦を深める意味合いも込めて、あなた達新入生には在校生達と模擬戦を行ってもらいたいと思います。とはいえ、さすがにいきなりチーム戦をしろといっても無理があるでしょうから、つまり決闘。あなた達には一対一で在校生とデュエルを行ってもらいたいと思います」
「デュエルだって!?」
「いきなりかよ」
「でも、みんなにわたしたちの実力を示すいい機会ね」
口々に声を掛け合う新入生たち。その中の一人、長い金髪をした男子生徒が一歩前にでて、フィフスに声をかけた。
「ティーチャーフィフス。決闘。デュエルにおけるルールは?」
「特にありません」
「ということは」
「ええ、この学園に弱者は必要ありませんから、たとえ対戦相手を殺してしまってもかまいません」
フィフスの言葉を耳にした新入生たちの大多数は意気揚々としていたが、そんな中カナタや少数の者たちだけが顔に驚きの表情を浮かべて困惑気味に呟いていた。
「……マジかよ?」
「ま、元々魔王や勇者を打倒するために作られた二つの学園が統合してできたんだから、まぁ妥当なところね。入学早々死なないでよ、カナタ」
「ルミナも優しいとこあるじゃんか」
「まぁあんたが死んだら、私の素性がばれちゃうだろうし」
「って、結局そっちかよ」
「組み合わせは事前にこちらで決めさせてもらいました。なお組み合わせに対する異議や抗議は一切受け付けませんのであしからず」
一部の者を除く自分の力に絶対の自信がある者たちはやる気満々だった。
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